【傍聴人の読書記録】わたしは盗らないクレプトマニア
「わたしは盗らないクレプトマニア」
高橋 悠/著 (摂食障害・クレプトマニア当事者)
竹村道夫/監修 (赤城高原ホスピタル 院長)
金剛出版
著者の高橋悠さんはホームページも運営されています
傍聴席で再会すること
私が傍聴している裁判所は小規模な地裁なので、多くの刑事裁判が開かれているわけではありません。
だから、傍聴する裁判を選ぶというほどの数もなく、行ったときにやっている裁判を見るという感じ。罪名に関係なくいろんな事件を傍聴します。
傍聴して2~3年経った頃から、「あ、この方(被告人)前にもみてる」ということが増えてきました。
窃盗などでは、初犯は執行猶予が普通だし(それが、いい・悪いは別の話として)実刑になっても、そこまで長い刑にはなりません。だから、短期間で再犯すると…こんな狭い地域だから、法廷を選ばずとも再会してしまうのです。
そんな中にクレプトマニア(窃盗症)らしき方もいます。
傍聴しながら、
「クレプトマニアだよね…弁護人はわかってるのかな?」
「医療の話は? 出ないんだ?」
などと、ひとりモヤモヤすることもあります。
犯罪と直結する病
クレプトマニアは精神疾患のひとつです。
本人にモノを盗むことは悪いことだという認識はあるので、犯罪となるのは間違いありません。
裁判で弁護人が心神耗弱を主張することもありますが、実際に認められることはなかったと思います。
例えば、被告人質問で「万引きGメンに気づいて、その店では盗るのをやめた」という話があれば、自分でコントロール出来ると判断され、心神耗弱とは認められません。
つまり、初犯は執行猶予、2回目からは実刑というケースが一般的です。
かといって、病気ですからね。
刑罰を与えれば治る、というものでないのは事実です。
裁判になるまでには、何度かの逮捕を経験しているはずで、法廷で出会うのは、それでも治らずに繰り返してしまった人です。
だからせめて、裁判になったことを機会に、人に頼ってみようと思う人がいたらいいなと。そして、それに応えられるよう、支援や医療に繋いで生き直しを支える制度や、バトンを渡す先を持つ弁護士さんたちが増えることを願っています。
本の内容と共感できるエピソード
本の著者、高橋悠さんも「刑罰」と「支援」の両方が必要と書かれています。
本の中では、悠さんの発症の背景となる特性や家族関係、仕事によって孤立を深めていった経緯がよくわかりました。
そして、窃盗を正当化してしまう心理、医療に繋がっても変われなかったことも、包み隠さず書かれています。
得しなかっただけなのに「損した」と思ってしまうエピソードなど、「わかる~!」と共感する部分もありました。
悠さんの例はクレプトマニア当事者の一例でしかありません。
でも、どんな依存症でも共通点はありそう。
『底付き』から、盗らない日々を積み重ねる中での試練や工夫も詰まっていて、回復の考え方のヒントになるのではないかと思います。
そして、「クレプトマニア」って聞いたことはあるけど、よくわからないという方にも、手に取りやすい内容になっています。
依存を背景とする犯罪をどう防ぐのか、当事者の経験を元に再犯防止を考えるという視点からも、多くの人に読まれてほしい本です。
以前、法廷で出会った当事者の方が、願わくば社会の中で『自分を大切に』暮らしていてほしい。そんなことを考える1冊でした。
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