美味しいお刺身 2
《マダイ》 評価が分かれる魚の王様
さて青魚の話を終えて、刺身談義は新しい世界に突入していく。前述の『日本刺身振興会』の会長であるマダイは、人によって評価が分かれる魚。知ったかぶりの人が、よくわかってもないのに『マダイは有名なだけで味はイマイチ」なんて言ったりするけど、なんの、釣ってきた40センチ級のマダイの味わいは、養殖モノの30センチのそれとは別モノである。
寒い季節に、こたつで純米酒なんぞ飲りながら(あまり飲めないが)、天然モノのタイの刺身をつつくなどという状況は、この世のヨロコビである。
また、タイと名が付く魚は、前作のアジ以上に種類がある。
《◯◯ダイ》 ホントはタイではないヤツら
『マダイ系』だけでも、マダイ、チダイ、レンコダイ(この3種の区別がつく人は少ないかもしれない)、磯モノでイシダイやイシガキダイ(都会ではなかなか口には入らない。大型ならば冬場の刺身が美味い!)なんてのもある。
他にも キンメダイ、タカノハダイ、ヘダイ、アオダイ、フエフキダイ、コショウダイ・・・。言い出すとキリがないのが『タイ』である。
一通り全部生で食ったけど、たとえば無名なヤツなのに、時々びっくりするくらい美味いものがあったりする。他にも大きくなると味わいが爆上がりするヤツもいたりして、そんな発見も魚の面白さだ。
《各種の白身魚たち》 主張しない淡白なヤツら
白身の魚は刺身になると ごく一部の例外を除き、タイやカワハギ(後述)以外は私個人としては評価が低い。ヒラメやカレイなんかのエンガワは美味いと評判だが、正直なところこれについても『?』だ。ところでヒラメとカレイ、この2種の違いは目が付いている向きだけではない。ヒラメは口が大きく、食べるモノも泳いでいる小魚だが、カレイは砂の中のゴカイなんかをあさる。
出世魚であるスズキ(シーバス)は、売られているのを生で食べるのは、勝算が薄い賭けとなる。臭みを感じないものを手に入れられるのは稀だからだ。汽水域の魚は得てしてその傾向があり、ボラやクロダイ(チヌ)も同様である。
この項のラストにはフグのことを語ろうか。青物好きの私としては、何もかも対極にあるこの魚が、どうしてこれほど有り難がられるのかがよくわからない。あっさりしていて上品というけど・・・。私の口が下品ゆえ、芸術品のように並べられたフグの良さがわからないだけなのかもしれないが、味に全く奥行きを感じない。だから世間で有り難がられがちな『てっさ』なんて、ポン酢の味しかしないじゃないかといえば、料亭や専門店の人たちには間違いなく怒られるだろうな。
《カワハギ》 肝の一点豪華主義
磯釣りにおいてはエサとりで有名なこの魚、世間では鍋に向いてると言われている。でもコイツは少々ニオイがするから、鍋にするにもポン酢で食すタイプに限るかもしれない。そんなカワハギ(ウマヅラも同様)だから、新鮮なものは刺身でいただこう。ただし身だけを食べてもそんなに感動的なものではない。誰が始めたのか知らないが、やはり肝と一緒に食べるに限る。
コイツの肝を醤油につぶし溶かして食べるカワハギの刺身は、『これは・・・』と言ってその場の全員が顔を見合わせるほどの力がある。しかしこの肝にもやはり少々生臭さが付きまとい、上手くやらないともったいないことになる。
臭いの解消方法は人や家によって違う。以下これまでに見聞きした実例を紹介してみる。
表面の汚れや薄膜(臭みの主原因)を取り除いた上で、
・水で洗う
・塩水で洗う
・牛乳で洗う
・酒(冷 or ぬる燗)に浸す
・熱い湯をかける
・沸騰している湯で1分 etc.
これは順に行う工程ではなく、それぞれが 五島の漁港周辺に住まう人たちによる臭み除去の方法だ。その味を知ってる者は、色々試して自分なりの方法、またそれぞれの家のしきたりとして成立したということだろう。
私のメソッド(笑)は、『熱い湯にくぐらせた後、(氷)水に取る』である。
しかしこの魚の肝は人心を惑わす。まさか神のイタズラなのではあるまいか。
《ハタ類》 口の大きなモンスター
クエなどのハタ類の魚も、見た目と違い身がきれいで刺身で美味い。少々水分が少ない身で、パサついた感じがするから、個人的には好みではないものの、味そのものは間違いない。
ハタ類は巨大になるヤツがいる。私が子供の頃、130センチを超えるアラ(五島では大きなハタ類は全てアラと呼んだ)があがったのを見たことがある。
魚は通例大きくなると魚体の模様が薄くなる、または無くなる。当然ハタ類も同様で、70センチ~80センチ以上に巨大化したモノは、模様で魚種の判別ができないことも少なくない。
《イサキ》 雨の季節のヒーロー
初夏から夏にかけて美味くなるがのがイサキだ。秋から冬には薄っぺらい魚体が、その時期には丸々と太る。身はあくまで白く、濃厚な味のイサキは、体表の色だけを見たら とても美味しそうではない。薄い黄緑というか、全体的に寒々しい感じ。でも旬の時期の刺身は唸る程である。鋭い骨を持つコイツ、フェイクの効いた実力者だ。
《マグロ》 5億円!? 大間産というブランド
マグロという魚は、美味いですか? あえて問うこの質問に、誰か説得力のある答えをもらえませんか? 少しも美味いと思えないんだけどなぁ。美味いマグロを食べてないからだと言われれば 黙るしかないのだが、大トロが美味いといっても あれは油身だからなぁ・・・。
今年の初セリで5億!! 寿司にすると 平均1貫あたり 2万~3万になる計算というではないか! 魚の流通業界はこれで大丈夫なんだろうか?
《カツオ(のタタキ)》 赤い身のご当地アイドル
カツオに関しては、シーズン盛りの藁焼きのタタキはそれなりに季節感もあっていいんだけど・・・。決して不味いわけではないが、初夏、蚊取り線香をはじめて点けたにおいに『あぁ夏だなぁ』と感じ、灯油のにおいを嗅げば『今年も終わりが近づいたなぁ』と感じるが如く、藁のにおいに『あぁタタキの季節だなぁ』と感じるにとどまる。高知人から恨まれそうな話だが・・・。
カツオは、個人的には高知で対面した、生ニンニクスライス乗せの刺身の方が、タタキより断然美味いと思っている。
長々と偉そうにわがまま勝手を申して参りましたが、そういった訳で結局魚が大好きな私です。
