病気や障害を抱えながら社会福祉に強いWebライターとして活躍する翼祈さんへインタビュー
ライターのまる きょうこです。
今回は、Webライターの翼祈(たすき)さんにインタビューをさせていただきました。
書くことが好きで、Webライターの仕事に真摯に取り組まれている翼祈さんのお話からは、学ぶことがたくさんありました。
また、多くの病気や障害のある翼祈さんが実践する、健康と働くこととのバランスの取り方は、どのような人にも参考になるのではないでしょうか。
Webライターの方も、そのほかのお仕事をされている方もぜひお読みください。
翼祈さんについて

翼祈さんは、福岡県久留米市にある就労継続支援A型事業所【TANOSHIKA CREATIVE 諏訪野】でWebライターをされている方です。
就労継続支援A型事業所は、障害や病気、難病を持つ人が通う福祉事業所。翼祈さんも全部で11個の障害や病気を抱えながら、今年でWebライターになって4年目を迎えるそうです。
【TANOSHIKA CREATIVE 諏訪野】でのお仕事
翼祈さんが【TANOSHIKA CREATIVE 諏訪野(以下、TANOSHIKA)】で働き始めたのは2021年のこと。
Webライティングのほかに、Webデザインやコーディングの仕事もあったそうですが、もともと書くことが好きでブログも長く続けていた翼祈さんは、「自分が今までやってきたことが一番生きる仕事」としてWebライターを選択しました。
通勤によって得られた職場の人間関係

当時はコロナ禍で、持病があると重症化のリスクが高いと言われていたため、テレワークの選択肢もありましたが、翼祈さんは「ここで学びたいことが多いから」と、通勤を選びました。
「もともとあまり人の中に飛び込んでいけるタイプじゃない」という翼祈さん。あえて事業所に通うことで、アドバイスを受けたり社内の情報を共有しやすかったりするだけでなく、上司とも深い話ができる関係を築けたとのこと。
「同僚の気持ちもわかるけど、上司が悩んでいる気持ちもわかるんですよね。どちらの意見も聞いて、いろいろな状況を見て。こういう考えもあるけれど確かにこういう意見もあるよねという中立な視点に立てています」
一利用者という立場でありながらも、翼祈さんが広い視野を持って仕事に当たっていることを感じました。
自社メディア【AKARI】での執筆
翼祈さんの仕事内容は、自社メディア【AKARI】とnoteでの執筆をメインに、XやインスタなどSNSの更新や見学者の案内、社外の方へのインタビューなど多岐にわたります。
【AKARI】は、障害や病気、難病当事者による当事者のためのWebメディア。
現在TANOSHIKAに所属するWebライターのなかでも、翼祈さんは長く安定的に記事を書き続けており、すでに1,000本以上が公開されているそうです。
「最初は自分の障害や病気の体験談から始まって、ニュース系などを絡めて書いていく方が多いんです。私もそこからのスタートで、体験談を絡めつつニュース系の記事も書くようになりました」
記事のテーマは全体的に“障害や病気、難病当事者の視点”が求められるそうです。翼祈さんは多くの記事を書き続けたことで、テーマを選ぶ際にも【AKARI】にマッチしているかどうかがすぐにわかるようになったとのこと。
現在、翼祈さんが選択して書いた記事がボツになることはまずないそうで、ライターとしての信頼を得ていることが伺えます。
noteも1,000記事以上に
【AKARI】で記事を執筆しながら、noteも1,000記事以上になったという翼祈さん。
2つの媒体でどのように記事を書き分けているのかをお聞きしました。
「AKARIが障害当事者のためのメディアなので、いろんなカテゴリーはあるんですけど、あくまで障害者に絡めた記事なんですよね。暮らしや健康のようなテーマに関しても、自社メディアだったら障害に結びつけて書くことになるので。地域の美味しい食べ物や飲み物、そのエリアのホットな話題なんかはnoteに書いています。
以前だったら医療系とかもAKARIで書けたんですけど、昨年の夏頃から書かないことになったので、新しい治療法や治療薬、研究などの記事もnoteに移していますね」
どちらのメディアでも翼祈さんが大切にしているのが、「あまり知られていないけど大事なことや珍しいもの」とのこと。これをテーマ選びの軸にしつつ、noteと自社メディアで記事を書き分けているのだそうです。
書くことを仕事にして自己肯定感が上がった

「ずっと書いていますね。上司からも、放っておいても書く人って言われるくらい(笑)」
そう話す翼祈さんは、4時間という勤務時間のなか、1日平均3~4記事は書くとのこと。その間にSNSの更新なども行っているため、かなりのスピードで執筆していることが伺えます。
もともと書くことが好きだったという翼祈さんは、ブログでの執筆歴を含めると20年ほど書き続けているのだそうです。ブログの内容はエンタメ系で、現在の執筆内容との関連はないものの、記事を書くにあたっての情報収集などは仕事に生きているとのこと。
また、いわゆるガラケーでブログを書き始めた翼祈さんは、今でもスマホでの執筆が苦ではないそうです。
2,000文字程度であれば、1時間から1時間半ほどで完成するとのこと。どのような環境でも執筆できてしまうのも、翼祈さんの強みの一つだと感じました。
「もともと好きで、長くやってきた“書くこと”を仕事にしたことで、自己肯定感が上がって自信がつき、前向きにもなれました。だからWebライターの仕事を選んで良かったと思っています」
翼祈さんはそう教えてくれました。
翼祈さんが力を注いでいるインタビューの仕事
翼祈さんが今一番大きく関わっているのが、社外の方へのインタビューだそうです。
インタビューの対象となるのは障害のある方や、障害児を育てている方、また自社メディアが扱うカテゴリーに合う方だと教えてくれました。
複数名で行うインタビュー

TANOSHIKAでのインタビューは、基本的に複数名で行うとのこと。質問を考えるのも一人ではないため、ほかのメンバーとの調整が難しいのだとか。ときには質問が多くなりすぎて、質問数を絞るのに試行錯誤することもあるのだそうです。
インタビューの質問作りについて、翼祈さんなりの工夫を教えてもらいました。
「自分で締切日を設けるようにしています。会社全体の締切日の1週間前とかに考えるようにしていて、質問がかぶらないよう、ほかの人からどのくらい質問が集まっているかというのも様子を見ながら判断しています」
またインタビュー記事を3~4本経験した頃、上司から「翼祈さんは誰でも考えられる一般的な質問ではなく、先方が本当に聞いてほしいコアな質問を考えてください」と言われたのだそうです。
翼祈さん流コアな質問の作り方

翼祈さんがどのように“コアな質問”をひねり出しているのかについてお聞きしました。
「ほかの媒体で発言していないようなことを質問しようといつも考えていまして。先方のSNSやサイトなどをじっくり読み込んでいます。それらの膨大な情報のなかから、必要な質問が浮いて見えるというか、聞くべきことが読み込んでいくうちに自然とわかるんです。
資料を読み込んで質問を書き出す作業に、最近は平均3時間くらいかかっていますね。最低でも20問は考えます」
とことんリサーチして質問を考える翼祈さんの姿勢は、先方にも喜ばれているそうです。
「自分たちの資料をすごく読んでくださったんですねとか、本当に質問が深いですねと言われます」
同時に、
「よくここまで読み込んでいますねって毎回上司に言われるので、ありがたいのと同時に、自分自身に対して何かハードルを上げているなっていう感じ」
と、プレッシャーもあるそうです。
しかし翼祈さんは、「先方にとっても読者にとっても、有益な情報をインタビューで届けなければいけない」と考えて仕事に当たっているとのこと。
そのような姿勢が伝わるからこそ、翼祈さんの“コアな質問”が喜ばれ、また期待されているのだと感じました。
自身の経験がインタビューに役立つ

こうしたリサーチ力は、ずっと書いてきたからこそ身についたものだとも、翼祈さんは教えてくれました。
また、自身の経験そのものがインタビューで役に立つこともあるそうです。たとえば翼祈さんが長く続けてきたブログに関して、こんなことがあったのだとか。
「先日インタビューした方がブログをされていて。その方とお話しするときに、ブログあるあるみたいなのを共有できたんですよ。ブログをやったことがある人じゃないと話せないような内容で。
自分とその方が同じ経験をしていたときに、経験したものしかわからないような会話ができるんですよね」
こんなときはとくに質問を考えるのも楽しく、考えた質問に対して喜んでもらえることにも、とてもやりがいを感じるという翼祈さん。
お話を伺いながら、翼祈さんがインタビューの時間のなかで、インタビュイーさんとの関係をとても大切にされていることも感じました。
今後のインタビューでやっていきたいこと

現在メインとしている、障害のある当事者や福祉関係の方々へのインタビューは、今後も自社メディアのテーマとして変わらないとのこと。また翼祈さん自身も、そういう方々へインタビューをしていきたいそうです。
インタビュイーさんからどのようなお話を引き出していきたいかについて伺うと、
「深い話や、すぐには見えてこない相手の真実みたいなこと」
と教えてくれました。
たとえば、最初は自身の活動におけるメリットだけを語っていたインタビュイーさんが、過去に書いた記事の知識を踏まえた翼祈さんの質問のなかで、「実はこういうデメリットもあるんです。きれいごとだけじゃないんです」という話をしてくれることもあるのだそうです。
相手の深い話を引き出すためには、やはりリサーチと、翼祈さん自身が過去に書いてきたものの積み重ねが役に立つのだと教えてくれました。
今後翼祈さんが関わるインタビュー記事にも、ぜひ注目していきたいですね。
病気や障害と向き合いながら
感音性難聴・発達障害(ADHD、ASD、LD)・糖尿病・甲状腺機能低下症・不眠症・高眼圧症・脂漏性皮膚炎・汗疱・両膝軟骨すり減り・すべり症・坐骨神経痛罹患。翼祈さんはこれらの病気や障害を抱えています。
「病気や障害を11個持っていると言うと、そんなに持っているんですかって驚かれる」
という翼祈さんに、健康管理と仕事とのバランスについても伺いました。
忙しさから体調不良に

複数の病気や障害がありながらの仕事はやはり難しい面があり、今年の夏の終わり頃、忙しさから体調を崩してしまったそうです。
以前は記事作成にSNS更新、見学者の案内やインタビューのほか、事業所の広報関連の仕事と、自社の広報誌でのインタビューの仕事もこなしていたという翼祈さん。
「ほかの人に仕事を振ったらその人が潰れてしまうかもしれないから、自分がやるしかない」
という思いで、多くの仕事を背負ってしまっていたとのこと。
気づけばだんだん仕事が楽しくないと思うようになり、精神科医からは精神状態が良くないことを、また内科でも糖尿病の検査数値が悪化し、ストレスが原因であることを指摘されたのだそうです。
仕事を減らすしか方法がないとわかった翼祈さんは、医師の勧めもあり、上司に相談してようやくほかの人に仕事を振ってもらうことができたとのことです。
内部障害や複数の疾患を抱えて働くことの難しさ

また、見た目ではわからない内部障害があることの難しさも教えてくれました。
「私の左耳は感音性難聴というもので、片耳難聴なんです。7歳頃から失聴していて、左側が全く聞こえないので右から話してもらう必要があって。ただ難しいのが、普通に会話ができることもあるので、ほとんどの方が、私は左耳が聞こえていないっていうのを忘れているんですよね」
たとえば座っている席の関係で左側から話しかけられると、やはり聞こえづらいのだそうです。片耳難聴を忘れて接してもらえるのはありがたいことではあるものの、仕事上では少々不利を感じるとのことでした。
そのほかにも甲状腺機能低下症で眠気がひどいときがあったり、糖尿病ともあいまって身体が疲れやすかったり。
「本当は身体がつらくて大変なのに、人から頑張っていますねと言われるのが、時々きついこともあって。自分としては、その仕事に穴を開けてはいけないっていう思いもあって、無理して仕事に来ていたりするので。無理をしすぎた結果、糖尿病の検査数値が悪くなったりもして…。
11個ある病気と障害がそれぞれ影響しあって悪化しやすいので、バランスの取り方もすごく難しいなと思いますね」
それでも、自分の身体のことを一番わかっているのは自分だから、自分でバランスを取っていくしかない、と話してくれました。
好きなことだからこそ続けられる

慢性的な病気や障害を抱えながらも、短時間で複数の仕事や大量の執筆をこなす翼祈さん。
「それだけの病気や障害がありながら仕事をされているなんてすごいですね」と言われることも多いそうです。
ずっと文章を書いていたいと思えるほど書くことが好きだからこそ、病気や障害があっても仕事を続けられているとのこと。
「すべてが慢性疾患なのもあって、管理も含めて大変ではありますけど、ブログも含めてずっと好きなことをやってきたから。いろいろ体調が悪くても、好きだからこの仕事を続けられるんだろうなと思っています」
好きであることが、翼祈さんの大きな原動力になっていることを感じました。
同じように病気や障害と向き合う方へのメッセージ

翼祈さんから、同じように病気や障害がありながら仕事をされている方へのメッセージもいただきました。
「自分の病気や障害は自分自身にしかわからないので。とくに見た目でわからないものに関しては、どれだけ人に大変なんですと言ったとしても、なかなか理解してもらえず難しいですけど。
でもやっぱり無理をしすぎると症状が悪化してしまうこともありますし。場合によっては休職とか、ひどいと退職しなきゃいけないくらい悪くなることもあるので。
今の身体の状態をしっかり自分自身で意識していただきたいのと、自分のなかで限界を知っておくこと。ここまで来たらもう駄目だなとか、これをこうしたら駄目だなというラインを持っておくことが大事だと思います」
「あと、支援や配慮はもちろん必要ですよね。病気や障害があっても、人から助けてもらうことで、仕事がしやすくなることも大いにあるので。 たとえば悩みも上司などにお話ししてほしいなと思いますし、一人で抱え込まずに、いろんな人の手を 借りていただきたいなと思っています。
今は障害や病気に対していろいろ研究が進んだり、支援する団体や企業が増えたりもしていて。こういうツールを使うと仕事がしやすくなるっていうものも増えたので、そういうものはどんどん活用してもらいたいですし。
やっぱり大事なのはつらい気持ちで仕事をするのではなくて、楽しい気持ち。好きでこの仕事ができているとか、前向きな気持ちで仕事をしていただきたいなって思っています。心の問題でも体の状態においても、それがとても大事なので」
「自分が好きだと思う仕事であれば、これからもその気持ちを持ち続けながら仕事を頑張ってほしいです。私自身もそういう気持ちで、いろいろと体調が悪くても頑張っているので。
大変ではありますけど、好きだからこの仕事を続けているっていう気持ちは、ぜひ持ち続けていただきたいです」
病気や障害があるからこそ大切にしたい、「好きな仕事をし続けたい」という気持ち。それはどのような人にとっても、本当はとても大切なことなのかもしれません。
翼祈さんの仕事に対する純粋なお気持ちを聞きながら、“好きであること”を大切にして、仕事を続けていきたいと改めて思いました。
翼祈さんがWebライターとして今後叶えていきたいこと
TANOSHIKAでは、“チャレンジャー”という一般の就職を目指すプログラムがあるとのこと。このプログラムにより、A型事業所から母体である株式会社SANCYOの契約社員になる人もいるのだそうです。
翼祈さんがインタビューを受けてくださった少し前にも、チャレンジャーとして契約社員になった人が数人いたのだとか。
翼祈さん自身は、今後どのようなことを目指しているのかについて伺いました。
プロの取材ライターを目指したい

翼祈さんの目標は、一般企業でライターを続けていくことだそうです。ライターのなかでも“プロの取材ライター”になりたいという想いがあり、今後取材についてさらに学んでいきたいとのことでした。
実績からすれば、翼祈さんはすでにプロのライターだと思われます。
しかし現在はあくまで就労継続支援A型事業所の利用者であり、障害者雇用も含めて一般企業に就職することをゴールとしているため、まだプロではないと翼祈さん自身は認識しているのだそうです。
「インタビューに企画から関わったときには裏側までいろいろ知ることができて、多くの人の力によってインタビュー記事1本が掲載されるんだなと思ったんです。具体的にこうすればいいっていうものも身につきました。
今の私はいろんな人の力を借りて仕事ができていますけど、退職したときには録音にしろ文字起こしにしろ、自分1人でやらなきゃいけないので。まだまだやっていない作業も多いので、そういうのにチャレンジしていかなきゃいけないと思っています」
難聴により社内で文字起こしの作業をするのが難しいなど、さまざまなハードルはあるものの、取材ライターを目指すうえで必要なことを、上司と相談しながら今後やっていこうと考えているそうです。
翼祈さんのエッセイを読みたいという声も
また、「翼祈さんのエッセイを読むのが好き」とか、「エッセイは書かないのですか」と言われることもあるのだそうです。
「翼祈さんの食べ物のnoteを見るのも好きなんですよと言われたりもしましたし。写真撮影うまいねと言われたこともあって」
たしかに、翼祈さんの食べ物に関する記事は、こちらも読んでいて楽しい気持ちになります。
また、翼祈さんの想いや体験を綴った記事は、まっすぐで素直な表現が心に刺さると感じました。
意外なことに、翼祈さん自身はあまり自分のことを書くのが得意ではなく、あくまでnoteに募集お題があるときなど限定的な投稿で、進んでエッセイは書かないのだとか。
しかし最近になって自社メディアの方針も変わりつつあり、より翼祈さんの体験談を中心とした記事を書く可能性も、今後あるかもしれないとのこと。
翼祈さんの文章の魅力を、エッセイでも拝見できることが楽しみです。
Webライター翼祈さんへのインタビューまとめ
今回は、就労継続支援A型事業所【TANOSHIKA CREATIVE 諏訪野】でWebライターをされている、翼祈さんにインタビューをさせていただきました。
病気や障害を抱えながらも、自分の好きな仕事に心を込めて取り組んでいる翼祈さん。その純粋でまっすぐな在り方に、インタビューをしながら感動しました。
翼祈さんの文章に触れたい方は、ぜひ【AKARI】や翼祈さんのnoteを覗いてみてください。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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