「ITニュース」|同じ日に発表された二つのAnthropicデータセンター契約——確度がまるで違う理由
はじめに
2026年8月10日、AI開発企業Anthropicをめぐって、データセンター確保に関する二つの大型契約が同時に報じられました。一つはビットコインマイナーのRiot Platformsとの最大91億ドル規模のリース契約(相手先はBloombergの関係者情報のみで両社とも未確認)、もう一つはMacquarie Asset Management・GICとの合弁会社「Theseus Infrastructure」設立(Anthropic自身が公式に認めた契約)です。
この記事の読みどころは二つあります。一つは、同じ「データセンター確保」という目的でも、確度も仕組みもまったく異なる二つの調達手段が同日に動いた点。もう一つは、AI企業が巨額の設備投資を自社のバランスシートに乗せずに計算能力を確保しようとする、業界共通の資金調達の工夫が透けて見える点です。
※ 本記事は執筆時点で公開されている一次発表・報道をもとに構成しており、投資助言を目的とするものではありません。
この記事での用語

1. 何が起きたのか(結論)
2026年8月10日、Riot Platformsが2026年第2四半期決算発表で、テキサス州RockdaleキャンパスにあるデータセンターDER(191MW)を「世界最大級のフロンティアAI研究所」に20年間・最大91億ドル(延長込みで161億ドル)でリースする契約を締結したと開示しました。契約相手の名前は公表されていません。
同じ2026年8月10日、Anthropic・Macquarie Asset Management(MAM)・GICの3社が、データセンターの開発・運営・リースを担う新会社「Theseus Infrastructure」の設立を共同発表しました。こちらはAnthropicが当事者であることを公式に認めています。
同日夜、Bloombergが関係者情報としてRiot契約の相手先はAnthropicだと報じ、Riot株が時間外取引で約25%急伸しました。2026年8月11日時点でも、Anthropic・Riot Platformsの両社はこの報道内容を公式に確認していません。
Anthropicは2026年5月28日にSeries H(650億ドル、企業価値9,650億ドル)をクローズしており、IPOをにらんだ計算基盤の確保を急いでいる局面での出来事です。
忙しい方向けに一言でいうと、
「同じ日に発表された二つのデータセンター契約は、片方は公式確認済み、もう片方は匿名報道のみ」——確度がまるで違う二つの調達策が並走しています。
2. 背景——なぜ二つの契約が同じ日に動いたのか
2026年5月28日: AnthropicがSeries H(650億ドル)をクローズ。企業価値は9,650億ドルと報じられました。
2026年8月10日: Riot Platformsが決算発表でRockdaleキャンパスの191MWデータセンターのリース契約を開示。相手先は非公開。
2026年8月10日: Anthropic・Macquarie Asset Management・GICが「Theseus Infrastructure」設立を共同発表。
2026年8月10日夜(時間外取引): Bloombergが関係者情報としてRiot契約の相手をAnthropicと報道。Riot株が急伸。
2026年8月11日: Cointelegraph、CoinDesk、The Blockなど複数メディアがBloomberg報道を引用して追随報道。
公開情報から読み取れる動機としては、AnthropicがIPOを前に計算基盤の確保を急いでいる点が挙げられます。Theseus Infrastructureの仕組みでは、Anthropicはデータセンターを自ら保有せず「主要テナント」としてリースする形をとり、Macquarie・GIC側が施設を保有してエクイティの大半を拠出します。これにより、Anthropicは巨額の設備投資を自社のバランスシートから切り離しつつ、長期の計算能力を確保できると考えられます。
一方のRiot Platforms側は、ビットコインマイニング事業からAIデータセンター(Neocloud)事業への転換を進めており、既存の送電網接続枠(Rockdaleキャンパス)を新規顧客に又貸しする動きの一環と見られます。
報道ベースでは、このRiotリースは「Anthropicにとって3か月間で3件目の大型コンピュート調達」であり、一連の調達額は合計600億ドル超との分析記事もありますが、一次資料での裏付けは確認できていません。同日に性質の異なる2件(純粋リースと出資型合弁)が重なった理由について、Anthropic自身の公式説明は見当たらず、複数の調達チャネルを並行して積み増す戦略の一環と推測されます。
3. 二つの調達手段の違いと、それぞれが望む読み手の反応
同じ「データセンター確保」でも、Riot案件とTheseus案件では資金調達の性質が異なります。

この発表が向けられている先ごとに、期待されている反応も異なります。
Anthropicの投資家・IPO関係者に対しては、計算能力確保の実行力を示し、IPO前の企業価値評価を後押しする狙いがあると考えられます。
Riot Platforms株主や仮想通貨マイニング業界に対しては、Neocloud転換の実例として自社評価の向上を狙う動きと見られます(これはRiot側の意図です)。
電力・インフラ関係者や地域住民に対しては、送電網増強費用の負担や電気料金補填の誓約により、地域の懸念を和らげる狙いがあると考えられます。ただしAnthropicの「電気料金補填」コミットメントが、自社保有施設に限られるのか、リース容量にも及ぶのかは、公式資料からは確定できていません。
読者としては、「Anthropicが関わっている」という一文だけを見て両案件を同列に扱うのではなく、確認の度合いが違う点を押さえておくとよいでしょう。
4. 短期・中期・長期の整理
時間軸定義:
短期: 0〜3か月
中期: 3か月〜1年
長期: 1年以上
4-1. 短期(0〜3か月)
予想される動き: Riot株価の乱高下が続く可能性があります。Anthropic・Riot双方が契約相手を正式に確認するかどうかが焦点になります。Theseus Infrastructureの出資比率・投資額の詳細開示があるかも注目点です。
不確実性: Riot案件はAnthropicが公式に認めておらず、契約内容の全貌(Anthropic以外の可能性を含む)が確定していません。
効果が出ない条件: 両社が契約相手の確認を継続して拒否した場合、市場の憶測が続くだけで実質的な情報更新が乏しい状態が長引く可能性があります。
4-2. 中期(3か月〜1年)
予想される動き: Rockdaleキャンパスの初期96MW稼働(2027年12月予定)に向けた建設進捗、Theseus Infrastructureによる米国内新規サイト選定の具体化が予想されます。Anthropicの他の計算能力調達(3か月で3件目との報道)との合算規模が明らかになる可能性もあります。
不確実性: 大型HPC(高性能計算)プロジェクトの調達・資金調達・納期遵守は、ビットコインマイニング事業とは異なる実行リスクを伴うとの指摘があり、遅延の可能性は排除できません。
効果が出ない条件: 電力供給や建設資材の制約により着工・稼働が計画より遅れた場合、中期時点でも「発表止まり」の状態が続く可能性があります。
4-3. 長期(1年以上)
予想される動き: 全191MW稼働(2028年6月予定)、Theseus案件による複数データセンターの本格稼働が見込まれます。ビットコインマイナーのAI転換(Neocloud)トレンドが業界内でどこまで定着するかも試されます。
不確実性: PIMCOやMoody'sが指摘する、ハイパースケーラー全体のAI設備投資過熱・オフバランスリスク(未着工の署名済みリース総額が約6,620億ドルとの分析)が顕在化した場合、個別契約の実行可能性にも波及しうると考えられます。
効果が出ない条件: AI需要の伸びが鈍化し稼働率が計画を下回った場合、長期契約であるほど貸し手・借り手双方の負担が重くなり、契約見直しの動きが出る可能性があります。
5. 混同しやすい点

まとめ
2026年8月10日、Anthropicをめぐるデータセンター確保策が二つ同時に報じられましたが、確度はまったく異なります。
Theseus Infrastructure(Macquarie・GICとの合弁)はAnthropicが公式に認めた契約、Riot Platformsとのリースは匿名の関係者情報にとどまります。
実務上は、報道の確度(一次発表か、関係者情報による二次報道か)を区別したうえで数字を引用することが重要です。
AIインフラ投資の規模感を追う際は、リース型と出資型合弁という資金調達手法の違いにも注目すると理解が深まります。
主な参照
Riot Platforms Q2 2026決算発表(2026年8月10日)
Macquarie Group プレスリリース(2026年8月10日)
Bloomberg: Anthropic Strikes $9 Billion Deal With Cloud Computing Firm Riot(2026年8月11日)
Bloomberg: Anthropic, Macquarie and GIC Form Venture for AI Data Centers(2026年8月10日)
TechCrunch: Anthropic raises $65 billion, nears $1T valuation ahead of IPO(2026年5月28日)
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免責
本記事は執筆時点で公開されている一次発表(Riot Platforms、Macquarie Group)および報道(Bloomberg等)に基づいて構成しています。特にRiot Platformsの契約相手がAnthropicであるという点は、本稿執筆時点で両社の公式確認が得られていない未確認情報です。契約金額・条件は今後の公式発表により変更・修正される可能性があります。投資判断の材料として用いる場合は、必ず一次情報を確認したうえで自己責任にて行ってください。本記事は投資助言を目的とするものではありません。
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