「ITニュース」|「オープンソースを支持する」と言いながら規制を働きかけていた——NYTが報じたOpenAI・Anthropicの二枚舌
はじめに
2026年7月25日、New York Times(NYT)は、OpenAIとAnthropicが表向きオープンソースを支持する姿勢を示しつつ、水面下でオープンウェイトAIモデル(特に中国製)への規制強化を働きかけていると報じました。前日の7月24日にNVIDIA・Meta・Microsoft主導で公表された、規制反対を訴える共同書簡「Open Weights and American AI Leadership」に、OpenAIとAnthropicは当初名を連ねていませんでした。
読みどころは2点あります。ひとつは、「オープンvsクローズド」という対立軸が、思想的な対立というより「誰が書簡に署名したか」で立場が可視化される、という事実ベースの構図であること。もうひとつは、批判の矛先は同じ企業に向かっていても、批判する側の根拠(技術的な合理性か、政治的な規制批判か)が論者によって全く異なる点です。
※ 本稿の元になったNYT記事本文は有料壁のため、本稿は複数の一次資料・報道の突き合わせに基づく整理です。政策・法解釈に関する記述は要約であり、法的助言ではありません。
この記事での用語

1. 何が起きたのか(結論)
NYTは2026年7月25日、OpenAIとAnthropicが表向きオープンソースを支持しつつ、水面下でオープンウェイトAIモデル(特に中国製)への規制強化を働きかけていると報じました。
前日の7月24日、NVIDIA・Meta・Microsoft主導で「Open Weights and American AI Leadership」という共同書簡が公表され、オープンウェイトモデルへの時期尚早な規制に反対する立場を示しましたが、OpenAI・Anthropicは当初この書簡に参加していませんでした。
2026年7月21日には、両社の2026年第2四半期のロビイング支出が過去最高を更新したと報じられています(Anthropic約197万ドルで前期比+26%、OpenAI約120万ドルで+18%)。
Anthropicは自社でオープンウェイトモデルを提供しておらず、OpenAIもクローズドモデル中心の事業構造であるため、オープンウェイト規制の強化は競合(Meta Llama、中国勢)の輸出・普及を制限する効果を持ちうると、批判派は指摘しています。
書簡の最終署名企業数は報道によって25社〜50社超と不一致があり、OpenAIが後日署名したとの情報もあるなど、事実関係は執筆時点で確定していません。
忙しい方向けに一言でいうと、
「オープンソースを支持すると言いながら、規制反対の書簡には署名しなかった」——OpenAIとAnthropicの言動のギャップが、NYTの報道を通じて可視化された形です。
2. 書簡不参加までの経緯
2023年:Anthropicのダリオ・アモデイ氏が、上院公聴会でオープンソースAIの拡大を「非常に危険な道」と警告したと報じられています(要一次確認)。
2025年5月:「生物学的研究の安全性・セキュリティ向上」に関する大統領令が署名され、AI×バイオリスクの政策的な土台が整いました。
2025年10月:トランプ政権でAI政策を担うデイビッド・サックス氏が、Anthropicのジャック・クラーク氏のエッセイを「fear-mongering(恐怖を煽る言説)」「規制の虜化戦略」と公然と批判し、アモデイ氏が反論する応酬がありました。
2025年12月:Metaが、Llamaのオープン戦略から一部クローズド路線へ転換したと報じられています。
2026年3月:米国防総省がAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定し、アモデイ氏が提訴の意向を示しました。
2026年6月2日:大統領令14409が署名され、フロンティアモデルの分類基準と、開発者による政府への最大30日間の任意の早期アクセス枠組みが定められました。ライセンス制・事前承認制は明示的に否定されています。
2026年7月17日:サックス氏が、中国製オープンウェイトモデル(Kimi等)の優位性に言及しました。
2026年7月20日:TechCrunchが「OpenAI is scared of open-weight models(OpenAIはオープンウェイトモデルを恐れている)」と題する記事を掲載しました。
2026年7月21日:OpenAI・Anthropicの2026年第2四半期ロビイング支出が過去最高だったと報じられました。
2026年7月24日:「Open Weights and American AI Leadership」共同書簡が公表されました。OpenAI・Anthropicは当初不参加と報じられましたが、一部報道ではOpenAIが後日署名したとの情報もあり、確定情報ではありません。
2026年7月25日:NYTの調査報道が公開されました。
3. なぜ「二枚舌」に見えるのか——事業構造から読む動機
Anthropicは自社でオープンウェイトモデルを提供しておらず、中国製オープンモデルの台頭は自社クローズドモデルの競争優位を脅かす構図にあります。OpenAIも同様にクローズドモデル中心の事業構造です。批判派(サックス氏、Metaを離れたヤン・ルカン氏ら)は、両社が規制強化を主張する背景に、競合の輸出・普及を制限したいという競争上の動機があると指摘しています。
ただし、批判する側の根拠は一様ではありません。サックス氏の批判は政治的な規制批判(政権のAI政策担当としての立場)に基づく一方、ルカン氏の批判は技術思想(オープンモデルの技術的合理性)に基づくもので、同じ批判対象でも根拠が異なる点には注意が必要です。
なお、「水面下でロビイング」の具体的な面会記録や個別の政策提言の中身は、今回の報道では特定されていません。ロビイング支出総額自体は開示されていますが、対象法案や面会内容との具体的な結びつきは推測の域を出ない部分があります。
4. 短期・中期・長期の整理
時間軸定義:
短期: 0〜3か月
中期: 3か月〜1年
長期: 1年以上
4-1. 短期(0〜3か月)
予想される動き: 大統領令14409に基づく分類基準・早期アクセス枠組みの運用が2026年8月1日を目処に具体化する見込みです。書簡・NYT報道を受けた業界内の公開論争(サックス氏対アモデイ氏のような応酬)が再燃する可能性があります。
不確実性: 大統領令自体が任意参加の枠組みであり法的強制力が弱いため、実際の行動変容は限定的な可能性があります。書簡の最終署名者数も未確定で、今後の報道で内容が変わりうる状況です。
効果が出ない条件: 各社が公開論争を静観し、具体的な政策提言や追加署名の動きを見せない場合、短期的な変化は表面化しにくくなります。
4-2. 中期(3か月〜1年)
予想される動き: オープンウェイトモデル(特に中国製)を対象にした輸出管理・報告義務の法制化議論が進む可能性があります。企業のロビイング支出はさらに増加傾向が続く可能性があります(Anthropicは2025年通期約310万ドルから、2026年上半期で既に350万ドル超)。
不確実性: 議会での関連法案の可決見通しは執筆時点で不透明です。
効果が出ない条件: 議会での法案審議が停滞し、現状の任意枠組みが維持される場合、中期的な規制強化は進みにくくなります。
4-3. 長期(1年以上)
予想される動き: 「安全性を口実にした規制の虜化」批判が定着すれば、AI政策形成における大手クローズドモデル企業の影響力に対する監視強化(ロビイング開示制度の厳格化等)につながる可能性があります。逆に規制が強化されれば、オープンウェイトモデルの供給が国内外で偏る産業構造変化もありえます。
不確実性: 米中AI覇権競争の展開次第で、規制の方向性が大きく変わりえます。現時点では事実関係が錯綜しており、予測の確度は低い状況です。
効果が出ない条件: 米中関係や技術競争の構図が現状のまま膠着し、どちらの陣営も決定的な優位を握れない場合、規制・産業構造の変化は緩やかにとどまる可能性があります。
5. 混同しやすい点

6. まとめ
NYTの報道により、OpenAIとAnthropicが表向きオープンソースを支持しつつ、水面下でオープンウェイト規制の強化を働きかけていた可能性が明らかになりました。
両社は、NVIDIA・Meta・Microsoft主導の規制反対書簡には当初参加せず、同時期にロビイング支出が過去最高を更新していたことが報じられています。
背景には、クローズドモデル中心の事業構造ゆえに、中国製を含むオープンウェイトモデルの台頭が競争上の脅威になっているという構図があります。
書簡の署名企業数やOpenAIの参加有無など、事実関係は執筆時点で錯綜しており、今後の続報で内容が変わる可能性があります。
主な参照
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免責
本稿は執筆時点で公開されている一次・準一次情報に基づく整理です。NYT記事本文は有料壁のため直接検証できておらず、複数の一次資料・報道の突き合わせに依拠しています。書簡の最終署名企業数やOpenAIの署名有無は報道間で矛盾があり、断定を避けています。ロビイング支出と特定の政策提言との結びつきは推測の域を出ない部分があります。政策・法解釈に関する記述は要約であり、法的助言ではありません。投資助言でもありません。
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