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米国就職できても、生活できるとは限らない:LAで必要な年収のリアル

私は現在米国のロサンゼルスにあるUniversity of Southern California (南カリフォルニア大学)の1年制MBAに留学している。

日本での例で言うと、「日本の早慶」や「日本の慶應」と例に上がることがあるらしい大学なのだが、今回はお金の話をしたいと思う。


USC IBEARに来る前、私はどこかでこう思っていた。

「MBA留学をして、アメリカで就職できたら、それはかなり大きな成功だ」と。

もちろん、それ自体は今でも間違っていない。
アメリカで就職するのは簡単ではない。ビザ、英語、職歴、ネットワーク、面接、すべてが壁になる。

ただ、LAで実際に生活してみて、もう一つの現実に気づいた。

それは、米国就職は「内定を取れるか」だけの問題ではないということ。

仮にアメリカで仕事が見つかったとしても、その給与で本当に生活できるのか。
家賃を払い、車を持ち、保険に入り、家族を養い、子どもの教育費を考え、将来の貯蓄までできるのか。

ここまで考えると、米国就職の見え方はかなり変わる。



LAで暮らすには、いくら必要なのか

まず結論から言うと、LAで生活するなら、私の感覚では以下が一つの目安になる。

シングルなら年収110k〜120k。
家族帯同なら最低でも160k〜180k、できれば200k以上。
4人家族で“余裕を持って暮らす”水準まで見ると、270k近い数字も出てくる。

最初にこの数字を見たとき、「さすがに高すぎるのでは」と思う人もいるかもしれない。

日本円に換算すると、年収110kでもかなり高く見える。
180kや200kとなると、もはや相当な高収入に見える。

でも、LAで暮らしていると、この感覚はかなり変わる。

ドル円換算で見る年収と、現地で実際に使えるお金はまったく違う。

家賃が高い。
車が必要になる。
保険が高い。
外食も高い。
子どもがいれば教育費やチャイルドケアも重い。
そして税金もある。

つまり、年収だけを日本円に換算して「高い」と判断すると、かなり危ない。


LAの世帯年収中央値は約90k。それでも安心とは限らない

USAFactsによると、Los Angeles Countyの世帯年収中央値は2020〜2024年で $90,100 とされている。
つまり、LA Countyでは世帯年収90k前後が一つの「真ん中」になる。

2026年4月3日"What is the income of a household in Los Angeles County, CA?"
https://usafacts.org/answers/what-is-the-income-of-a-us-household/county/los-angeles-county-ca/

ただし、ここで大事なのは、中央値が90kだからといって、90kあれば余裕を持って暮らせるわけではないということ。

特に、MBA卒業後に家族でLAに住むことを考えると、90kではかなり厳しい。

今の私は留学生なので、ある意味では特殊な生活をしている。
ルームシェアをして、支出を抑えて、できるだけ節約して暮らしている。

この生活をずっと続けるだけなら、年収110kも180kも必要ないかもしれない。

でも、卒業後もこの生活を続けるわけにはいかない。

家族を養う。
子どもの教育を考える。
住むエリアを考える。
車を持つ。
医療保険に入る。
将来のために貯蓄する。

そう考えると、学生としての節約生活と、卒業後の生活はまったく別物だと痛感する。


シングルでも110k〜120kは現実的なライン

LAで一人暮らしをする場合、「年収100kあれば十分では」と思う人もいるかもしれない。

私も渡米前ならそう思っていたかもしれない。

でも、実際のデータを見ると、そう単純ではない。

Yahooに掲載されたGOBankingRatesの記事では、SmartAssetがMIT Living Wage Calculatorの2025年データを使い、LAで“comfortably”に暮らすための最低年収を試算している。

そこで示されている数字は、単身者で $115,690
両親と子ども2人の家庭では $271,981

2025年6月30日 "Here’s the Minimum Salary To Live In Los Angeles Without Stress in 2025"
https://www.yahoo.com/lifestyle/articles/minimum-salary-live-los-angeles-200133832.html

この数字を見ると、シングルでも110k〜120kという目安は、決して大げさではない。

もちろん、ルームシェアをしたり、外食を抑えたり、車を持たなかったりすれば、もっと低い年収でも暮らすことはできる。

でも、それは「生活できる」という話であって、「余裕を持って暮らせる」とはまた別の話だ。

MBA卒業後にフルタイムで働きながら、健康的に暮らし、将来のために貯蓄もする。
そう考えると、LAでシングルでも年収110k〜120kは一つの現実的なラインになる。


家族帯同なら180kでも安心とは言い切れない

では、家族がいる場合はどうか。

ここがさらに難しい。

家族帯同でLAに住むなら、私の感覚では最低でも160k〜180k、できれば200k以上は見ておきたい。

ただし、ここで誤解してはいけないのは、180kは“高収入で安心”というより、“ようやく現実的な土俵に乗る”くらいの数字だということ。

家族で住むなら、ワンルームやルームシェアというわけにはいかない。
住むエリアもある程度考える必要がある。
子どもがいれば学校や治安も気になる。
車も一台では足りないかもしれない。
チャイルドケアや教育費も重くなる。
さらにアメリカでは医療費や保険の不安もある。

そう考えると、180kという数字は、日本から見るほど「余裕のある高収入」ではない。

むしろ、LAで家族を養うなら、現実的な生活防衛ラインに近い。

そして先ほどの試算では、両親と子ども2人の家庭がLAでcomfortablyに暮らすために必要な年収は $271,981 とされている。

もちろん、この数字はかなり高めに見える。
全員がこの金額を稼がないと生活できない、という意味ではない。

ただ、少なくとも言えるのは、LAで家族を持って暮らす場合、100k台前半ではかなり厳しいということだ。(残念な真実だが、日系企業の米国支店はこの「かなり厳しい」ラインの求人がたくさんあり、日系企業の給与での生活は文字通り「かなり厳しい」と言わざるを得ない。もちろんポジションにも依るのだが・・・ここでは割愛する。)

180kでも、住む場所、家族構成、教育費、保険、車、貯蓄次第では、決して安心とは言い切れない。


では実際の求人年収はどうなのか

ここでさらに現実的な話になる。

「LAで生活するにはそれなりの年収が必要」という話をすると、次に気になるのは、実際の求人がどれくらいの給与を出しているのか、ということだ。

たとえば、Amazonの会計系ポジションを見ても、給与レンジにはかなり幅がある。(記事作成にあたり誰でも知っている企業の求人を探そうとAmazonにアクセスした一番上に掲載されていた会計ポジションを参考にしたまでの話であるが、金額帯は他のポジションでも同じようなものである)

Accounting Manager, Ring | Blink Subscription Accounting
Hawthorne, CA
$95,400〜$163,200

Senior Accountant, Stores Accounting
Culver City, CAを含む複数勤務地
$72,600〜$117,100

一方で、エージェント経由のAccounts Payable Clerkの求人では、Beverly Hills勤務のPermanentポジション(Amazonではない会社)で、
$55,000〜$64,000

という求人もある。

ここで言いたいのは、「この会社/仕事/ポジションが良い、悪い」という話ではない。

大事なのは、米国就職と一口に言っても、すべての仕事がLAでの生活を十分に支えられる給与を出してくれるわけではないということだ。

Amazonのような大企業であっても、ポジションによってはレンジの下限が70k台、90k台から始まる。
Accounting Managerクラスでようやく上限が160kを超えてくる。
一方、AP Clerkのようなポジションでは55k〜64kというレンジも普通にある。

つまり、会社名だけでは判断できない。
「アメリカで就職できた」という事実だけでも判断できない。

どの職種なのか。
どのレベルなのか。
どの地域なのか。
給与レンジのどこでオファーが出るのか。
その給与で、実際に家族を養えるのか。

ここまで見ないと、米国就職の本当の現実は見えてこない。

(参考)Amazonでの他ポジション(Manager Level)

・Finance Manager, Corp FP&A
USA, CA, Culver City - 95,400.00 - 163,200.00 USD annually

・Trust and Privacy Technical Program Manager
USA, CA, Hawthorne - 127,100.00 - 172,000.00 USD annually

(注)今回の参考値としてManager Levelを参照した理由は、職務経験10~15年前後のinternational studentが米国企業に応募し採用される最上位レベルがManager Levelと一般的に考えられているからだ(最も一般的な職位はManagerの1つ下の非管理職)。例えばManager以上のPrincipal Levelの場合250k以上の求人もあるが、international studentがこのレベルのポジションにpost-MBAで就職した例を聞いたことはない。


MBA後の米国就職は「どの年収帯を狙うか」まで考える必要がある

MBA留学をしていると、どうしても「アメリカで仕事を取れるか」に意識が向く。

もちろん、それは大事だ。

でも、LAで生活する現実を考えると、もう一歩踏み込む必要がある。

どの給与レンジの仕事を狙うのか。
その給与レンジに届く職種は何か。
自分の職歴でそのポジションに届くのか。
届かないなら、何を補う必要があるのか。

ここを考えずに就活を始めると、応募数だけが増えていく。

とにかく求人を探す。
とにかく応募する。
返事が来ない。
焦る。
さらに応募する。

でも、本当に必要なのは、やみくもな応募ではない。

自分が生活を成立させるために必要な給与レンジを理解し、そのレンジに届くポジションを見極め、そこに向けて職歴・英語・LinkedIn・ネットワーキングを組み立てることだ。

特にIBEARは1年制なので、時間が本当に短い。

「入学してから考えよう」と思っていると、あっという間に秋が終わる。
年が明ける。
卒業が見えてくる。

その頃に初めて、「どの会社に応募しよう」「LinkedInを整えよう」「ネットワーキングを始めよう」と思っても、かなり遅い。


留学生としての節約生活と、卒業後の現実

今の私は、留学生としてLAにいる。

正直、生活はかなり節約モードだ。
ルームシェアをして、支出を抑えて、学生としてなんとか暮らしている。

この生活だけを切り取れば、「意外となんとかなる」とも言える。

でも、それはあくまで留学生としての一時的な生活だ。

卒業後にフルタイムで働き、家族を養い、子どもの将来を考え、アメリカで生活基盤を作っていくとなると、必要な収入水準はまったく変わる。

MBA留学は外から見ると華やかに見えるかもしれない。

でも実際には、毎月の家賃や生活費を見ながら、かなり現実的なことを考えさせられる。

この国で家族を養うには、どれくらい稼がないといけないのか。
その年収に届く仕事は、どれくらいあるのか。
自分はその仕事に届くのか。
届くためには、今から何をしないといけないのか。

この問いは、かなり重い。

でも、米国就職を本気で考えるなら、避けて通れない問いでもある。

それでも、米国就職を目指す意味はある

ここまで読むと、「では米国就職は割に合わないのか」と感じる人もいるかもしれない。

でも、私はそうは思っていない。

アメリカで働くことには、やはり大きな価値がある。
英語で仕事をする経験。
多国籍な環境でキャリアを作る経験。
日本とは違うスピード感や責任範囲の中で働く経験。
そして、将来的なキャリアの選択肢を広げる可能性。

それらは、簡単に金額だけでは測れない。

ただし、だからこそ「憧れ」だけで判断してはいけないとも思う。

米国就職は、夢がある。
でも同時に、生活がある。
家賃があり、保険があり、車があり、税金があり、教育費がある。

この現実を見ないまま、「アメリカで働けたら勝ち」と考えてしまうと、就職後にかなり苦しくなる可能性がある。

大事なのは、米国就職を諦めることではない。

米国就職を、生活設計込みで考えること。

どれくらいの年収が必要なのか。
どの地域に住むのか。
家族構成はどうなるのか。
何を優先し、何を諦めるのか。
そのうえで、どの給与レンジの仕事を狙うのか。

ここまで考えて初めて、米国就職は現実的なキャリア戦略になる。

私自身、LAで留学生として暮らす中で、この現実を何度も感じた。
学生として節約しながら暮らすことはできる。
でも、卒業後に家族を支えながら生活基盤を作るとなると、必要な収入水準はまったく変わる。

年収の数字だけを見ると、アメリカの給与は高く見える。
でも、その数字を現地の生活費で割り引いて考える必要がある。

シングルなら110k〜120k。
家族帯同なら最低でも160k〜180k、できれば200k以上。
4人家族で余裕を持って暮らすなら、上述の通り270k近い試算もある。

この数字は、誰かを不安にさせるためのものではない。
むしろ、現実を知ったうえで準備するための数字だ。

この点は強調しておきたい。


米国就職は、甘くない。
でも、現実を直視したうえで挑戦するなら、見える景色は変わる。

「アメリカで働きたい」という気持ちを、単なる憧れで終わらせないために。
そして、就職後の生活まで含めて納得できる選択にするために。

米国就職を考えるなら、まずは年収のリアルから目をそらさないこと。

これが、LAで1年近く暮らしてきた私が、今いちばん強く感じていることです。

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