見出し画像

-489-【自作の作詞 × AI附曲 × AI小説】Alone in my room


【AI附曲】

Listen to the music generated by Suno
自作の作詞を基にSunoでAI生成した楽曲です。



【オリジナル作詞】


Alone in my room


作詞:かがみ かえで

幼なじみの彼はいつも いまも昔も同じ優しさ
そんなとこに惹かれたみたい
最近やっと気づいたの

今の関係がもしも
壊れることが怖くて告白できずにいたら
今日 彼に相談されたの 好きな人がいること…

Alone in my room 誰もいない
誰も知らない 私のheartbreak
誰にも涙 見られたくないのに
誰かに寄り添いたいの

このラインより上のエリアが無料で表示されます。

彼が彼女とデートならば 独りぼっち部屋にこもって
何もせずに二人のことを
考えながら落ちこむの

彼女 友達じゃなけりゃ
いますぐ彼にすべてを告白してるね…多分
なぜ彼にあの時彼女を 合わせたの?と後悔…

Alone in my room 彼の写真
月の明かりで 見るほどheartbreak
私は待つわ 巡りくるチャンスを
彼女と別れる彼を

Alone in my room 誰もいない
誰も知らない 私のheartbreak
誰にも涙 見られたくないのに
誰かに寄り添いたいの


[L0489-009]19950507

【AI短編小説】

<Generated picture> supported by Nano Banana Pro + Nano Banana / Google

Alone in my room(前編)―優しい残酷―


〔主な登場人物〕

私(主人公): 美咲(みさき・24歳)。

      少し奥手で、現状維持を好む性格。
      幼なじみへの恋心を「友情」という箱に隠して過ごしてきた。

彼(幼なじみ): 陽介(ようすけ・24歳)。

      昔から変わらない優しさを持つが、
      それゆえに美咲の恋心には鈍感。
      美咲を「一番信頼できる異性の親友」と思っている。

彼女(親友): 菜々子(ななこ・24歳)。

        美咲の大学時代からの友人。
        明るくて素直。美咲が半年前に陽介に紹介した。

序章:ぬるま湯の聖域

 グラスについた水滴が、コースターの縁をゆっくりと濡らしていく。  
居酒屋の喧騒の中で、目の前に座る彼――陽介(ようすけ)は、
いつものようにメニュー表を私のほうへ向けてくれた。

「美咲、またいつものレモンサワーでいい? 
 サラダ、ドレッシング別添えにするのも忘れてないよな」

 店員を呼ぶその手際の良さと、
私の些細な好みを完全に把握している記憶力。  
幼なじみという関係は、時として残酷なほど心地よい。
二十四歳になった今も、彼は昔と変わらない。
私が寒そうにしていれば黙って空調を弱めてくれるし、
歩くペースはいつだって私に合わせてくれる。

 そんなとこに惹かれたみたい。  
最近やっと、その事実に名前をつけることができた。

 けれど、この「幼なじみ」という肩書きは、
強固な防波堤でありながら、私を縛り付ける檻でもあった。  
もし今の関係が壊れるくらいなら、このぬるま湯に浸かったまま、
一生「一番の女友達」でいたほうが幸せなんじゃないか。
告白なんて賭けに出ず、ただ隣で笑っていられればそれでいい。

 そう自分に言い聞かせて、私はメニュー表から顔を上げた。
「さすが陽介。完璧な采配だね」  
軽口を叩いて笑ってみせる。
まだ、この時は笑えていた。

「……でさ、今日呼び出したのは、ちょっと話があって」

 届いたばかりの枝豆に手をつけず、陽介が姿勢を正す。  
その表情が、いつものリラックスしたものではなく、
妙に強張っていることに気づいた瞬間、私の心臓が不格好な音を立てた。

〝改まって、何? ・・・まさか・・・!″ 
期待と恐怖が同時に喉元までせり上がる。
就職してから二年、お互いに落ち着いてきたこのタイミング。
幼なじみから恋人へ。
そんなドラマみたいな展開を、心のどこかで待っていた私がいた。

「美咲には、一番最初に聞いてほしくて」
「うん、なに?」

 グラスを握る手に力が入る。  
陽介は一度深く息を吸い込み、少し照れくさそうに、
けれどはっきりと言った。

「俺、好きな人ができたんだ」

 時が止まるとは、こういうことを言うのだろう。  
ああ、なんだ。私じゃなかったのか。  
その瞬間に沸き上がったのは、失望よりも先に、奇妙なほど冷静な「安堵」だった。
告白しなくてよかった、という敗北者の安堵。

 でも、次の言葉が、私の安堵ごと心臓を握りつぶした。

「菜々子ちゃんなんだ。美咲の友達の」

第一章:私が引いた引き金

 菜々子。  
その名前が出た瞬間、頭の中が真っ白に発光したようだった。

 菜々子は、大学時代からの私の親友だ。
明るくて、裏表がなくて、誰にでも好かれる太陽のような子。  
そして、半年前に私が陽介に紹介した相手でもあった。

「……え、菜々子?」

 乾いた声が出た。精一杯の演技だった。

「そう。半年前、美咲が『チケット余ったから』って誘ってくれたライブあったろ? 
あの時、紹介してくれたじゃん。
 それから何度かみんなで遊んで……なんか、いいなって」

 陽介の言葉が、遠い場所から聞こえてくるようだった。  
そうだ。あの時だ。  
私が二人を引き合わせたのだ。

 なぜあの時、私は菜々子を呼んだのだろう。  
ただの人数合わせ? 違う。  
陽介と二人きりで出かけることへの照れ隠しと、
私の周りにはこんな可愛い友達がいるんだぞという、
歪んだ自尊心を見せたかっただけじゃなかったか。

 陽介は私の反応を待っている。
不安そうな目で私を見ている。  
私が背中を押せば、彼は自信を持って菜々子に向かっていくだろう。  
私が「やめときなよ」と言えば、彼は立ち止まるかもしれない。

 でも、彼女は私の親友なのだ。  
菜々子はいい子だ。陽介にお似合いだ。  
ここで私が反対する理由はどこにもない。
もしここで私が泣いたり、不機嫌になったりすれば、
私は「友達の幸せを喜べない最低な女」になり、
陽介との信頼関係も、菜々子との友情も、すべてを失うことになる。

 だから私は、最高傑作の笑顔という仮面を被った。

「うそ、すごい! 菜々子なら絶対いいよ! お似合いだと思う!」

 口から出る言葉は、私の本心とは真逆の方向へ走っていく。  
陽介の顔がぱっと輝いた。

「マジで? 美咲にそう言ってもらえるとすげー安心するわ。
 ……でさ、相談なんだけど。今度デートに誘おうと思ってて」

 そこからは地獄のような時間だった。  
どんな店がいいか、菜々子の好きなものは何か、
どんなタイミングで誘えばいいか。  
私は親友としてのデータをフル活用し、
好きな男に、別の女を落とすための攻略法をレクチャーし続けた。

「菜々子はイタリアンが好きだよ。
 あそこの新しい店とか気になってたみたい」
「へえ! メモっとくわ」

 嬉しそうにスマホに打ち込む陽介。  
私の心は、音を立てて砕け散っていく。Heartbreak。  
誰にも見られたくない涙が、目の奥で熱く膨張していた。

 ――もし、彼女がただの知人だったら。  
 ――もし、私が臆病じゃなくて、もっと早く気持ちを伝えていたら。
 ――なぜ、あの時、彼女を会わせてしまったの?

 後悔が黒い波のように押し寄せる。  
でも、もう遅い。  
私は自らの手で、
自分の首を絞めるロープを編み上げてしまったのだから。

「ありがとう美咲。お前がいてくれてよかった」

 会計を済ませて店を出る時、陽介は無邪気にそう言った。  
その「ありがとう」が、私への死刑宣告だとも知らずに。

 私は笑顔で手を振り、彼と別れたあと、逃げるようにタクシーに飛び乗った。  
ドアが閉まり、一人になった瞬間、張り詰めていた糸が切れた。

 -Alone in my room-これから帰る部屋には誰もいない。  
誰も知らない、私の失恋。  
誰かに寄り添いたいのに、
その「誰か」はもう、私の手の届かない場所へ行こうとしている。

第二章:月明かりの画策

 週末、私は部屋という名のシェルターに鍵をかけ、外界との接触を断った。  
カーテンの隙間から細い月明かりが差し込んでいるけれど、
私の顔を照らしているのは、
もっと無機質で冷たい光――スマートフォンの画面だ。

 見なければいい。そんなことは分かっている。  
指先一つで電源を切れば、少なくとも視覚的な暴力からは逃れられる。
けれど、自傷行為にも似た衝動が、私の親指をSNSのアプリへと滑らせる。

 画面上部に並ぶ「ストーリー」のアイコン。
その一番左に、菜々子の顔写真が赤いリングに囲まれて表示されていた。  
二十四時間で消える、儚い幸せの記録。  
私は息を止めて、そのアイコンをタップした。

『念願のイタリアン! 予約ありがとう♡』

 画面いっぱいに広がる、お洒落な前菜のプレート。
そしてその向かい側には、
見切れているけれど間違いなく陽介だと分かる、
男性の腕と腕時計が写り込んでいた。  
その腕時計は、去年の誕生日に私が陽介と一緒に選んだものだ。

 ――ズキリ、と胃のあたりが重く軋む。

 数秒後、画面は次の動画に切り替わる。  
夜景をバックに、二人の影が寄り添っている。
顔は映っていないが、楽しそうな笑い声がノイズのように鼓膜を揺らす。
陽介の声だ。菜々子の声だ。  
私の知らない世界で、私の大好きな二人が、
私を置き去りにして物語を紡いでいる。

「……なんで」

 指先が震えた。  
彼女が友達じゃなければ。
ただの知らない女だったら、心の中で罵倒して、ブロックして、
それで終わりにできたかもしれない。  
でも、菜々子は親友だ。
このストーリーに「いいね」を押さなければ、私は不自然な存在になる。  
私は強張る指で、ハートマークをタップした。  
画面の中の二人に「祝福」を送る。
それが、私の心を殺す儀式だった。

 ベッドにスマホを放り出し、膝を抱える。  
部屋は静まり返っている。
壁に掛けたコルクボードには、いつか三人で撮った写真が貼られたままだ。
陽介と菜々子の間で、私が能天気にピースサインをしている。  
まるで、二人の恋のキューピッドであることを誇るかのような笑顔。

「馬鹿みたい」

 なぜ彼に、あの時彼女を合わせたの?  
自分自身への問いかけが、呪詛のように頭の中を回る。  
私が彼らの「出会い」を用意し、
私が彼らの「デート」を演出し、今、私が独りで泣いている。  
この滑稽な悲劇の脚本を書いたのは、紛れもなく私自身だ。

 涙が滲んで、月明かりが歪んで見えた。  
しばらくの間、私は抜け殻のように天井を見つめていた。
陽介と菜々子、二人の関係が進展していく想像が止まらない。
今頃、手を繋いでいるかもしれない。
キスをしているかもしれない。
もっと先へ進んでいるかもしれない。

 嫉妬と自己嫌悪で押しつぶされそうになった時、
ふと、黒い感情が胸の奥で鎌首をもたげた。

 ――でも、まだ「永遠」が決まったわけじゃない。

 私は体を起こし、再びスマホを手に取った。  
陽介とのトーク画面を開く。
最後に送られてきたのは
『うまくいった! マジでありがとう!』という、残酷な感謝の言葉。

 私は涙を拭った。泣いている場合じゃない。  
ただ部屋にこもって落ち込んでいるだけでは、
私は「過去の女友達」に成り下がるだけだ。  
二人が付き合い始めたとして、それがゴールではない。
恋愛には必ず、倦怠期が来る。
喧嘩もする。
すれ違いも起きる。

 その時、誰が彼らの相談に乗る?  
共通の友人であり、二人をくっつけた功労者である「私」だ。

 私はスマホの画面を見つめながら、思考を冷たく研ぎ澄ませていく。  
二人の恋路を邪魔する必要はない。むしろ、全力で応援するフリを続けよう。  
一番近くで、一番の理解者として振る舞い続けるのだ。  
そうすれば、陽介は菜々子への不満を私に漏らすようになるだろう。
菜々子は陽介への不安を私に相談するだろう。  
二人の弱みも、亀裂も、すべて私が一番最初に知ることになる。

 私はコルクボードの写真を剥がさなかった。  
むしろ、机の上のフォトフレームに入った陽介の写真を、
月明かりにかざしてみる。

「待つわ」

 小さく呟いた声は、自分でも驚くほど低く、落ち着いていた。
 私は待つ。巡りくるチャンスを。  
陽介の隣にいるべきなのは、ぽっと出の運命なんかじゃない。
彼を構成するすべての時間を共有してきた、私なのだから。

 私は深呼吸を一つして、陽介に返信を打った。
『よかったね! また話聞かせて!』  
 末尾につけた絵文字の笑顔は、今の私の顔とそっくりだったかもしれない。  
誰も知らない私のheartbreakは、今夜、静かな執着へと姿を変えた。

終章:優しい残酷の仮面

 あれから数週間が経ち、
陽介と菜々子の関係は順調に進んでいた。

 美咲は、自分が築いた「最高の理解者」というポジションを忠実に守り続けた。
陽介からデートの報告があれば
「いい感じだね、私も嬉しい」と返し、
菜々子から「陽介と上手くいってるよ」とノロケられれば
「流石だね、最高のカップルだよ」と祝福した。

 その言葉はすべて、偽りのない本心だった。
彼女は本当に、陽介と菜々子がお似合いだと思っていた。
だからこそ、その事実が美咲を苛んだ。

 そして今日、三人は久しぶりに揃って食事をすることになった。  
場所は、美咲が菜々子に勧めた、件のイタリアンの系列店。

「美咲のおかげだよ、本当に。
 あの時、美咲が背中を押してくれなかったら、
 俺、ここまで行けなかったと思う」

 テーブルを挟んで向かい側。
陽介は、美咲から見て左隣に座る菜々子と視線を合わせ、嬉しそうに笑った。
その顔は、高校生の頃から変わらない、
優しくて鈍感な陽介そのものだった。

「もう、陽介ったら。美咲ちゃんに感謝しなきゃだめだよ」
「もちろんだって!」

 二人のやり取りを見ながら、美咲はフォークを持つ手を一瞬止めた。  
この光景こそが、数週間前まで部屋で一人、涙に暮れながら恐れていたものだ。
今、私はこの二人から最も近い場所に座っている。
そして、最も遠い場所にいる。

 美咲はグラスを手に取り、自然な笑顔を作った。

「二人ともね、すごくお似合いだよ。
 なんか、見ているこっちが幸せになる。
 私が二人を引き合わせたんだもん、
 責任持って全力で応援するから!」

 カチリ、とグラスが軽く触れ合う。  
その瞬間、美咲の心の中には、陽介への熱い想いと、親友への罪悪感、
そして彼らの関係を「壊したい」という黒い願望が、
複雑に混じり合った液体のように渦巻いた。

 美咲は笑う。二人のために、優しく、朗らかに。

 でも、彼女の心の奥深くでは、静かな思考が巡っている。  
――菜々子は、少し優柔不断な陽介に対して、
もっと強いリーダーシップを求めてしまうだろう。
陽介は、菜々子の社交的な面に、いずれ不安を覚えるはず。

 陽介が楽しそうに菜々子に話しかけている隙に、
美咲は菜々子の方を向いた。

「ねえ菜々子。陽介ってさ、ああ見えて結構気遣いすぎるタイプだから、
 もし何か陽介のことで困ったことがあったら、いつでも私に相談してね? 
 なんたって、彼の長年の幼なじみだから。
 陽介の弱点は、私が一番よく知ってるからね」

 その言葉は、優しさに満ちていた。
親友からの温かいアドバイスだった。  
菜々子は「わかった、ありがとう!」と無邪気に微笑む。

 美咲は満足した。  
そう、彼は私を一番信頼している。
そして、菜々子も私を頼るだろう。  
私は、二人をつなぐ結び目であり、二人の弱点を握る監視者なのだ。

 その夜、自宅に戻った美咲は、
部屋の電気をつけずにベッドに腰掛けた。  
今日もまた、陽介は彼女と過ごした時間について、
長文のメッセージを美咲に送ってきた。

『美咲、本当にありがとう。
 お前のおかげで、最高のデートだった。
 今、家まで送り届けたところ。
 菜々子、本当にいい子だわ。』

 美咲はメッセージを読み、微笑んだ。
スマホの画面が、彼女の顔を青白く照らす。  
彼女は、彼らの幸せを祝福する言葉を打つために、指を動かした。

 〝Alone in my room″誰もいない部屋。  
美咲のheartbreakは、もう過去の痛みではない。
それは、巡りくるチャンスを待つための、
静かで冷たいエネルギーとなった。

 私は待つわ。巡りくるチャンスを。  
その日まで、この仮面を外しはしない。  
そして、その「チャンス」が訪れた時、
私は彼を救い出す、唯一の存在として振る舞うだろう。

 美咲は、返信の末尾に、満面の笑顔の絵文字をつけた。

(前編・了)


Alone in my room(後編)―再会の毒―


第一章:沈黙の三年間

 あれから、ちょうど三年が経った。

 私はあの日、自分に誓った通り、
徹底して「都合のいい女友達」という役を演じきった。
陽介と菜々子が付き合い始めて一年ほどの間、
私は二人の完璧な良き理解者だった。
相談を受ければ親身になり、喧嘩をすれば間に入って仲裁した。

 けれど、ある日を境に、私は彼らの前からぷっつりと姿を消した。  
転職を機に、住む場所も変えた。
SNSの更新もピタリと止めた。
共通の友人には「仕事が忙しい」とだけ伝えて。

 それは逃げではなく、戦略的な潜伏だった。  
「いつも隣にいる女」では、いつまで経っても陽介の「特別」にはなれない。
彼の中で私の印象を一度リセットし、
空白という名の渇望を作る必要があったのだ。

 三年の月日は、私を大きく変えた。  
幼なじみの気安さを感じさせる服装は捨て、背筋の伸びるタイトなドレスと、
少し冷たい印象を与える香水を纏うようになった。
鏡の中に映る私は、かつて彼が
「美咲は本当にいい奴だな」と言っていた、あの無害な少女ではない。

 ――そして、機は熟した。

 私は、共通の知人のSNSから、
陽介と菜々子が最近ほとんど一緒に過ごしていないことを突き止めていた。
菜々子の投稿からは陽介の気配が消え、
代わりに「寂しさを埋めるための女子会」の記録が増えていた。
陽介のほうも、仕事の愚痴をこぼす夜が増えている。

 私は、かつて陽介が「仕事で疲れた時に一人で行く」と言っていた、
路地裏の小さなバーの扉を開けた。

第二章:計算された再会

 重厚な木の扉の先、
琥珀色のライトに照らされたカウンターの隅に、
見覚えのある広い背中を見つけた。  
陽介だ。  
彼は少し疲れた様子で、シングルモルトのグラスを見つめていた。

 私は彼に気づかれないよう、少し離れた席に座る。
カクテルの一杯目が運ばれてくるまで、彼の横顔を観察した。
三年前より少し痩せ、大人の男の渋みが加わっている。

 頃合いを見計らい、私はわざとらしくなく、
けれど確実に彼の視界に入るように席を立った。
手洗いに立つふりをして、彼の背後を通り抜ける。
その瞬間、かつて彼が好きだと言っていた石鹸の香りとは違う、
少し挑発的なサンダルウッドの香りが彼の鼻腔をかすめるように。

「……美咲?」

 低く、震えるような声がした。  
私はゆっくりと振り返る。
驚きを、何層にも塗り固めた完璧な表情で。

「……え、陽介? うそ、どうしてここに」

 陽介は目を見開いたまま立ち上がった。
「美咲……だよな? 
 すごい、見違えたよ。全然、雰囲気が違うから……」

 彼の視線が、私の首筋から指先、
そして唇へと吸い寄せられるように動く。
その瞳に宿ったのは、懐かしさだけではない。
明らかな「戸惑い」と「興味」だ。

「座れよ、一杯奢らせてくれ。
 ずっと連絡取れなくて、心配してたんだぞ」

 彼の隣に座る。
かつてのような、遠慮のない距離感ではない。
私はあえて、指一本分ほど彼から距離を置いて座った。
その「距離」こそが、今の彼にはもどかしく感じられるはずだ。

 彼は私が席を外していた三年間を矢継ぎ早に質問してきたが、
私の返答は全て
「なんでもないよ、ただ環境が変わっただけ」
というシンプルなものに終始させた。
謎を残すことは、好奇心を刺激する。

第三章:綻びへの侵入

 会話が温まってきた頃、
私は毒入りのキャンディを差し出すように、その名前を出した。

「菜々子とは、どう? まだ仲良くやってるんでしょ?」

 陽介の表情が、目に見えて曇った。
彼はグラスに残った酒を一気に飲み干し、自嘲気味に笑った。

「……正直、もう限界かもしれない。菜々子はいい子だよ。
 それは間違いない。
 でも、俺が仕事でぐったりしてても、
 週末は『どこか連れてって』ってタイプなんだ。
 俺は家でゆっくりして、
 お前みたいに他愛もない話がしたいだけなのに、
 彼女はSNSに載せるための充実した週末を求めてる。
 なんか、隣にいるのが
 **『安らぎ』じゃなくて『役割』**みたいになってきて……。
 そういうのって、美咲には絶対言わなかった悩みだろ?」

 彼の言葉を聞きながら、美咲は心の中で冷たい笑みを浮かべた。  
――当然だ。
菜々子のSNSのストーリーを見ればわかること。
彼女はいつも、外向的な刺激と承認を求めている。
一方、陽介は優しすぎるゆえに、
その期待に応えようとして疲弊する。

 美咲は、ゆっくりと彼の手の上に、自分の手をそっと重ねた。

「そうなんだ……。
 あんなにお似合いだったのに。
 やっぱり、長く一緒にいると難しいこともあるよね」

 その言葉は、同情と理解に満ちていた。
そして、明確な対比を匂わせていた。  
(私は違うよ。私はあなたの疲れた背中を、
 ただ静かに見つめていられるよ)  
そのメッセージを伝えるためだけに、
私は彼の指先に淡く、確かな温度だけを伝える。

「私でよければ、また話聞くよ? 
 三年前みたいに。
 ……でも、今の私は、あの頃の私とは少し違うけどね」


 潤んだ瞳で彼を見つめ、意味深に微笑む。
陽介の指先が、ぴくりと跳ねた。  
彼は私の手を握り返そうとしたが、
私はそれをふわりとかわし、会計のために席を立った。

「今日は帰るね。また、連絡して」

 店を出る私の背中に、
陽介の熱い視線が突き刺さっているのが分かった。

終章:独りの部屋の勝利

 〝Alone in my room"  帰宅した私の部屋は、三年前とは違う。  
月明かりの下で眺めるのは、陽介の古い写真ではない。
最新の、高画質な彼のSNSのアイコンだ。

 スマホが震える。
『美咲、今日は会えて本当に嬉しかった。
 近いうちに、また二人で会えないか?』

 私は暗闇の中で、静かに、深く笑った。  
菜々子。ごめんね、親友。  
でも、あなたが彼を疲れさせてくれたおかげで、
私の出番が回ってきたの。

 私は待っていた。  
あなたが彼を愛し、そして飽き、彼が絶望する瞬間を。  
三年前の失恋は、今日この日のための「投資」だった。

 私はゆっくりとメッセージを打ち込む。
『いいよ。陽介の力になれるなら。』

 窓の外では、三年前と同じ月が照っている。  
けれど、この部屋の主はもう、涙で枕を濡らす哀れな少女ではない。  
私は、誰にも知らない私のHeartbreakを肥料にして、
この上なく美しい毒花を咲かせたのだ。

 さあ、陽介。
 私の腕の中で、ゆっくりと眠ればいい。  
 菜々子との別れという、
 残酷で甘い終わりに向かって。

(完)


<Generated fiction> supported by Gemini / Google


いいなと思ったら応援しよう!