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「手洗無院」のおじさんについて 〜2025展示〜

Torary、ツーバックスで路上での制作、発表はコンスタントに行ってきたが
久しぶりにホワイトキューブで展示をする機会があり
所有していた小人おじさん(妖精とも呼んでいる、以降おじさん)を作品として召還することが出来た事をせっかくなので。

召喚した地は、長年自分と共にTorary、ツーバックスで活動を行っている大阪在住の小灘が、
その大阪市中央区本町橋で運営している Torary NAND だ。
(以降 NAND、ナンド)

NANDは元々大阪の味園ビルというところの2階にあったのだが(東京の自分も最初数年の少しだけ運営に関わっていた)この度ビルの老朽化に伴う取り壊しの為移転を余儀なくされ、新しく大阪市中央区本町橋の3階建てのビルに、
小林マナブ氏による2階のレコードショップTwindiscと共に3階にナンドを移転オープンしたのだ。
そのナンドのお披露目も兼ねて
小灘主催、小灘セレクトの作家達のグループ展
「NEW  NAND GARDENING」展
(2025年5月31日土曜日〜6月7日土曜まで)に小人おじさんを展示することが出来て一旦ホッとしているので、これを綴っている。

NEW  NAND GERDENING SHOW


おじさんは雨の日も暑い日も氷点下の朝も、そしてもちろん気持ちのいい朝もいつも、何年も同じ表情で、自分を含めた私達家族を潤んだ瞳で見続けていた。

おじさんは今の家に引っ越してきた10数年前、
まだ夫婦2人の時代よく外を歩いている時に目にしていた。
というかほぼ毎日その横を通りながらの通勤だったから視界に入っていた、横目で見えていたと表現する方がしっくりくるが、

それは僕ら夫婦の通勤の通り道がそもそも公園の中の通路で
その公園内の水飲み場の水を飲むところにその、小人おじさんがいた。
おじさんは脳天に水飲み用の蛇口があり、そこから上に向かって水が出る仕様の水飲み場で、老若男女、主に子供達がその上で口を開けて待ち出てきた水を飲んでいた。

そのおじさんを初めて見た時だったか覚えてないけど
たまにまじまじ見た時とかは素直にかっこいいと思ったのは覚えていて
妻とあれを見た時に
「あの妖精(小人)あれだけで完成してるわ。あれはかなりかっこいい」
とよく会話していたのを覚えている。
(会話というか自分が勝手に喋っていたのを聞いてもらっていた。)
※何がかっこいいか。
→少しだけ目線を斜め上にし、体育座りしながら物憂げに水を放水しているところと言えばいいか、言い表せないがそれ自体がその場所にあってその形ってのが完成している、と言う事。
※だから本当はそこ以外に行ったらおじさんは完成しないかなとは思っている。

で、頭の片隅では欲しいけどそれは半永久的にそこに設置されて稼働されていることが彼のタスクでミッションで、
現実的・物理的にもらえないものとわかっている公共物だからこそ簡単によく言っていた
「あれかっこいい、あれ欲しいな〜、あれはまじで何かと使えるわ〜」
と、
お腹空いたな〜。
旅行行きたいな〜。
雨やだね〜。

みたいな挨拶会話のノリでたまのネタとしておじさんは話題に上がっていた。(ここも俺が勝手に話題にしていた)
いつもそこにいる、やや気になるものレベルのやつ。絶対手にすることが無いから言うやつ。
※例えるとこんなとこに面白い形の石像あるんだね〜、みたいな感じで。

で、時を経て我が家は家族が増え
その横をベビーカーに乗せて歩いたり
その子が歩けるようなってきて外で少しずつよちよち遊べるようになった頃、
その公園の改修/修繕工事が始まった。

息子越しに見えるおじさん(ここでは青い○内)
ベビーカーを押す妻子の左にいるおじさん

公園内の土の歩道だったところが舗装されたり、タイルの段差のレベル違いを直す為にタイルがジリジリ剥がされたりと
公園がしばらくの期間の工程で、市民にとっての未来に前向きな改修工事をいそいそと進めていた。

で、そんなある日の夕方家へ帰っている日、
いつも片隅にいたおじさんは消えていた。
手洗い場からその姿を消していた。
突然だったから覚えている、その時のこと。
お、なくなっとるやん、
と思った事を。(今書きながらそれを思い出した)

ただまあしょうがない、縁がなかったんやなと
彼を保有する資格がなかった事を、
別で日常の中に頻繁に生じる多くの残念のひと つの少しだけの残念な事として、
いや少しよりは少しだけ大きい残念な事として受け止め、
その後数日公園内で歩く時はおじさんどこ隠れてるかな〜と、思い出した時に少し探しながら歩いていたのだが、
そのさらに数日後のある日
その頃育休中だった妻から連絡があり
「おじさん、工事現場のコーンに刺さってたから、もらう約束してきたよ、明日もらってきなよ。」
と。

え、まじかと思った、あれがもらえるかもしれない?
あれが?! てかまだ捨てられんで現世(公園内)におったんかナイス!
と。嬉しかった、
妻よありがとう! と心の中で大きな声ではっきりとなんなら聞こえるくらい言った。

で翌日、はやる気持ちで、そのおじさんのいる聞いていた場所に行ったら言っていた通りにおじさんはいた。
体育座りでケツから刺さっていたよコーンに。
彼はまだ人々に水を飲ませているという優越感と感じ取れるその表情で少し空を見上げながらただそこにいた。

当時の2019年7月5日のインスタ投稿原文まま

近所の公園が改修工事で、
このおじさんは旧手洗い場に元々設置されてて、365日見かけてて、
工事に伴い無くなったから、どこかにある、
ゲットしたいと日々思いながら公園を通過して、 
今日もあのおじさんどっかにあるはず、
と朝探しながら通勤したけど見つからず、まあ半分諦めてたら、
昼頃妻からこれをもらう約束をしたとラインが届いた。明日これもらえる、嬉しいな〜重いかな〜 



あたりを見回し、このおじさんを管理しているような位置にいた現場の土木作業員の方がいたので声をかけ、
あのすみません、これ昨日自分の妻があの小人のおじさん貰いたいと言ってた件、
取りに来たんですけどほんとにいただいてもいいんですかね、と伝えたら

「もらってくれんの?
むしろ捨てるの手間だったからもらってくれると助かるけど何に使うの?」

「飾ったりとかっすかね、あとうちの子供あれ好きなんで」
と、嘘でも本当でもないような口上でその場を繕い、手に取り持ち上げたところ思ったより軽く片手で持って帰った。(FRP製)

去り際、おじさん管理人おじさんは自分に右手を上げて
「ありがと、助かったよ」
と言われたのを書きながら思い出した。
で歩いて家に持って帰っている時少し興奮したのも思い出した。

もらえた、、嬉笑

で、持ち帰って
元々人々に水を飲ませていたその脳天には丸い穴が空いていたので、外に置いて蜂とかがその穴に入って家で巣を作らないように養生テープで穴を塞ぎ
その日からこの2025年5月末の先週まで約6年程ベランダでずっと体育座りしながら前を見ていた。

そしてそれから彼をベランダで洗濯物を干す時、見るたびにいつか使うからね、
と思い見ていた。

言い訳だがアトリエは手放してアッサンブラージュ的な作風の自分は倉庫がとにかく必要だが倉庫、アトリエはこの13年程無いので、外に(ベランダに)そのまま素材が置けて保管ができるというのは、家のスペース確保にも一役かっていた。

で、しばらくそれもあって自分個人の作品はテーブルの上で作れる程度の小さいものが多かったが
今回はとりあえずベランダで作れて、大阪に郵送で送れるように作って
とか色々考えていたら展示1週間前。

いつも強く言っている事、10年以上かけて集めたのではなく、拾ったのではなく、集まってきたものたちを僕は素材にしている。
素材達はいつもいざという時、
これ、俺のこれを部品にしてくれ!
と素材達は訴えてくるんだが
作り始めたら不思議なもんで次にくっつけるそれだけ光って見え始めると言うとオーバーってかうそだけどそんな感じなのでちょっと焦っていたけど完全な焦りはなかった。

で、ベランダからおじさんが見えた。
彼の出番だ。
今回だったんだ彼が外に出るのは。
と自分を鼓舞するように彼を使う事が決まり、
気づいたらおじさんの脳天穴にピッタリハマる、
軽くて強い棒を探し始めていた。
とりあえずなんか方向性はないけど棒状のようなもの、探して入れようとなったがないので
コンセプトとかそこは一切無視してホームセンターへ棒を探しに行き
試行錯誤で脳天穴直径15mmに入るはずのぴったりのアルミの棒を買い、
持ち帰り途中、帰り道で脳内で完成したが、
自分の制作しているシリーズ「無院」の3作目のゆるいタワーバージョンを作りたいなとなった。
家に着き、ベランダにて
多分何十年も人々の乾いた喉を潤したおじさんの脳天穴に新たな金属管のアルミの棒を入れてからは早かった。

簡単な組み合わせた物の説明だが
おじさんに組み合わせた鍋敷きはこの数日近所の敬愛していた偉人の娘さんからその偉人の遺品として譲っていただいたものだったり
10年以上使っていたお玉や、
自身が4ヶ月入院した後に帰ってきたら届いたバルーン「wellcome back Kisshin」(おかえり きっしん、きっしんとは俺のあだ名)
結婚祝いにいただいた米俵、等々
ひとつひとつかなり個人的な事だが、話題の尽きない物達で組み合わさっている作品、それが無院だ。
それをおじさんがあの目で受け入れてくれている、そんな作品だ。

別の結論として、妻がいなければ作品を自分は生み出せていなかったしきっかけすらも自ら生み出していなかった。
妻は自分の作品達をいいとか面白いとかでは無くただゴミを集めているだけと思っているのに協力してくれて、話を聞いてくれている。
ありがとう。
いつか見にきてね。
2025年6月5日 職場の仮眠室にて。
岸本 雅樹

手洗無院 と 奥の壁の写真(ツーバックス作品)でコラボレーション。初めて自分と自分でコラボレーション出来た。

本題、
今回のTorary NANDのグループショー
『NEW  NAND GERDENING』は2025年6月7日土曜日まで。
二階のバーでのワンドリンク制なので、好きな飲み物飲みながら見て欲しい。
最終日6/7のトークショーも楽しみだ。
最終日は自分も大阪の現地にいるから是非みんな来て欲しいです。

"morning 〜ing .2025"

(since2013〜now ,unfinished)
5/31初日のオープニングイベント


ツーバックスの作品も展示してるよ
ツーバックスの作品の頂上のボール


※現在はこの方(型)

【追記】2025/06/05
大変申し訳ありません。ここまで書いて重大な間違い、記憶の間違いを指摘いただいたので報告します。
おじさんの脳天から水が出ていたわけではなく、おじさんは手洗い場のあくまで「飾り」、
確かあの穴は水が溜まらないように開けられたとかそんなんだったんじゃないか?と妻より。
その証拠のストリートビューが下記です。

妻から送られた証拠。おじさん顔ぼかしあり。

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