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AI を経営戦略の中心に据えるには? - みんなで「AI」をキャンバスへ

Deep Learning (深層学習)やReinforcement Learning (強化学習)等に代表されるAI 技術によって次々と新しいサービス、ソリューションが登場している昨今、AIを経営の中でどう位置づけ、どう戦略を策定し実行していくべきかは、企業にとって重要なテーマとなってきています。

先日、以下の記事で、AI は従来のモジュール型アーキテクチャ的な発想やビルディングブロック的な発想では、有効に活用できないという話を述べました。

では、どういう考え方やアプローチをしていくべきなのか、ということで、本記事では、そのための「みんなでAI をキャンバスへ」について書きます。タイトルにキャンバスとありますが、これは絵を描くためのキャンバスではなく、経営戦略を考えるツールとしての「キャンバス」です。

ビジネスのコンテキストの中で「キャンバス」というと、10年程前に流行した「ビジネスモデル・キャンバス」が思い出されます。これは、スイスの経営管理システムの研究者である、アレクサンダー・オスターワルダーが提唱した戦略マネジメントのフレームワークテンプレートです。ビジネスモデルを、それを構成する9つの要素へ分解し、ひと目で視覚的に理解できるようにしたものです。いわば、ビジネスモデルの見取り図といえます。


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ビジネスモデル・キャンバスの要素は、顧客セグメント(CS)、顧客との関係(CR)、チャネル(CH)、提供価値(VP)、キーアクティビティ(KA)、キーリソース(KR)、キーパートナー(KP)、コスト構造(CS)、収入の流れ(RS)の9つです。左側にあるものが自社に近い要素、右側にあるものが顧客・市場に近い要素という配置になっており、一望でビジネスとそれを取り巻くものの全体像を把握することができます。このキャンバスを用いることにより、企業の中で、経営層からミドルマネジメント、現場のメンバーまで幅広い社員が同じ View でビジネスモデルのありようを確認し、認識をあわせ、議論し、戦略を策定し、それをみんなで共有することができるようになります。
例えば、以下はLEGOを題材に、ビジネスモデル・キャンバスをどのようにワークさせるかを紹介したVideoです。


このビジネスモデル・キャンバスに代表されるような、視覚化し、議論し、関係者で共有することができるような手法は、その後、世界的にブームとなり、様々なキャンバスの亜種が生まれました。その中には、AI 関連のキャンバスもあります。例えば、以下のように、Deep Learning を用いたシステムの開発を関係者と確認、議論し、方向性を定めるツールとして、Deep Learning AI Canvas なるものを提唱している方もいます。こちらはどちらかというと、Deep Learningを用いたシステムやサービスの具体的な開発にフォーカスされたものです。


ですが、冒頭で書いたような、AIを経営の中でどう位置づけ、どう戦略を策定し実行していくべきかについて取り扱った、経営層も巻き込んだAIによるビジネスモデル・企業戦略を実現していくキャンバスも提唱されています。その名もずばり、AI Canvas です。

AI Canvas は、トロント大学 ロットマン経営大学院の Prof. Ajay Agrawal によって考案されました。

ちなみに、余談ですが、トロント大学でAI と言ったら、2012年にDeep Learning 技術の有効性を華々しく証明した Geoffrey Hinton, その弟子の Yann LeCan が有名です。この二人に Yann LeCan の AT&T ベル研究所の同僚の Yoshua Bengio を入れて、「カナディアン・マフィア」と呼んだりします。この3名が Deep Learning の今の隆盛に大きな役割を果たしています。カナダ、特にトロントとAI はきっても切り離せないと言えます。

話を戻します。Prof. Agrawal は、共著書「Prediction Machines: The Simple Economics of Artificial Intelligence (Harvard Business School Press, April 2018)」の中で、現段階でのAIは、膨大なデータに基づいた「予測(Prediction)」をするためのコストを下げたことが本質であると喝破しています。以下のVideo では、その主張の部分の解説をしています。



「AIは、膨大なデータに基づいた予測(Prediction)をするためのコストを下げた」

訳は、書籍の日本語訳でも「予測」となっていますが、実際のワードの「Prediction」は、語源としては、Pre (予め) - diction (述べる)、ですので、「(正解を)予め言う」つまり、「言い当てる」という日本語に置き換えて解釈をした方がより、Prof. Agrawal の意図を汲めるかもしれません。Prediction の言葉をそのように理解すると、「現段階でのAI は、膨大なデータに基づいた手法で、正解を言い当てることのコストを下げた」となります。これは素晴らしい説明で、機械学習の、特に教師あり学習、深層学習の様々なアプリケーションを、一言で言い表していると思います。画像認識も、音声認識も、機械翻訳も、文書分類問題も、トピック抽出も、需要予測も、AIがやっていることは、それが未来を対象にしようが過去を対象にしようが「その問題の正解だと思われるものを言い当てている」というコンセプトで一つにまとめることができます。

AI技術の進化により、「正解を言い当てる」ことは、より正確に、より迅速に、そしてより安価に行うことが可能になっています。予測する、言い当てることが容易になるということは、日々のビジネスを行っている不確実な環境の中でもより確固たる意思決定を行うことができることを意味しています。しかし、では、どうやって、この「予測する・言い当てる」技術を、経営における意思決定のプロセスに組み込むことができるでしょうか。

その問いに対する答えとして考案されたのが、AI 版キャンバス、AI Canvas になります。AI Canvas の実際のテンプレートですが、以下のハーバードビジネスレビューの記事に掲載されています。

AI Canvas を構成する要素は7つ。

・予測(Prediction)意思決定のために何を知りたいのか?

・判断(Judgement) それぞれのAI の予測結果・結果KPIや誤りをどう解釈し、評価するか?

・アクション(Action)判断をして、どのようなアクションを実行に移すつもりなのか? 

・結果(Outcome) タスクの成否は何をもって測られるのか? KPIは何か?

・インプット(Input) 予測アルゴリズムを実行するためのインプットデータは何か?

・トレーニング(Training) AI を学習させるためのサンプルデータ・教師データは何か?

・フィードバック(Feedback) 予測結果・結果KPI の値をどう予測アルゴリズムの改善に役立てるか? 

AI Canvas におけるそれぞれの要素において利害関係者が議論し、必要となるデータや、取るべきアクション、評価の仕方等を識別し、共有し、目指すべき有り様の見取り図を作り上げることで、AI のポテンシャルを十二分に引き出すことができます。適用範囲は幅広く、AIを用いたアプリやサービスの開発等の実務具体的なトピックから、AI システムによる経営の刷新等の組織改革の取り組みまで、レベル感・規模感が異なるテーマにおいても、同じように取り扱うことが可能です。それゆえ、まずは試しやすいトピックからAI Canvas での議論を試し、その効果を関係者で、特に部署や職位をまたがる幅広い層で実感することで、よりインパクトの大きいテーマでの活用を狙っていくということもできるのではないかと思います。

先日、Prof. Agrawal と直接話す機会があったのですが、既に教授はコンサルティングファームと共同で 300社程の企業にWorkshop を行って、AI Canvasを導入し、効果をあげているとのことでした。ビジネスモデル・キャンバスが注目を浴びた10年ほど前に、Workshop を行った企業も多いと思います。その以前のノウハウを活かしながら AI Canvas を試してみて、AIを経営の中でどう位置づけ、どう戦略を策定し実行していくべきというテーマに挑んでみるというのもいいのではないかなと思います。


おまけ

現在、多くの企業がAI活用を含んだデータドリブン経営を指向しており、また産業分野においてもデータやAI活用を起点としたビジネスのアップグレードが進んでいます。以下のデータドリブン経営のための枠組みを説明した記事も参考になるかと思います。


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