産業分野のDXを促す IIot(Industrial Internet of Things)、もしくはインダストリアルIoTを概観
"View of Diamond Exchange Center from Azrieli Center" by Ted Eytan Under CC BY-SA 2.0
IIot(Industrial Internet of Things)
IIot(Industrial Internet of Things)、または インダストリアルIoT という用語は、モノのインターネットである IoT のソリューションを産業分野に応用することを意味した言葉です。製造業、建設業、運輸業、通信業、保険業、不動産業、農林水産業、鉄鋼業、鉱業、等など、幅広い産業において活用が始まっており、工場の機械から車のエンジンまで、あらゆるものに IoTの技術およびコンセプトが適用されています。これらは、5G及びローカル5Gの普及により更に後押しされます。(5Gの特徴の一つ、超多数端末接続により、1キロ平方メートルあたり約100万台のIoT機器をネットワーク接続することができます。)また、新しいアーキテクチャの提案であるエッジコンピューティングの概念の浸透も、適用領域の拡大に一役買うでしょう。
以下に、インダストリアルIoTの基本的効果とそれによってもたらされる変容の図を示します。

IIoT の基本的効果ともたらされる変容
インダストリアルIoTの基本的効果
インダストリアルIoTの基本的効果は、「データ収集による見える化」「AI/アナリティクスによる予測」「遠隔制御」「プロセスの自動化」があげられます。
センサーデータ等を収集することで機器・設備の状況をモニタリングし、人や車両等の位置・状態を可視化します。これらにより、機器や設備の異常をリアルタイムに検知したり、プロセスの非効率な箇所やボトルネックを特定、また稼働や生産性の改善、品質の適切な管理が行われます。また、それらデータに基づくアナリティクスモデルによる予測を行うことで、見える化する前にそれらの効果を達成することが可能になります。遠隔制御は、IoTならではのソリューションです。検知・予測をしたことによる対処を、人員を現地に派遣することなく対処していきます。また、プロセスの自動化はIoTソリューションの到達地点です。
インダストリアルIoTのユースケース
インダストリアルIoTの基本的なユースケースに以下に挙げます。
アセットトラッキング
従前、多数の取引先企業や関係企業によって構成されたサプライチェーンにおける資産管理は、チェーンの長さもあって非常に難しいものでした。IoTベースのアセットトラッキングは、資産の把握と追跡を効率化させ、チェーンのさまざまなコンポーネントを接続し、統合された戦略的なシステムを構築することができるようになりました。ワークフローの自動化、リアルタイムでのアラート、各チェーンのポイントでのアセットの制御、クロスドメインでの分析等を得ることができるようになりました。ここにおいては、ブロックチェーンの活用という更なるステージの可能性も見出すことができます。
車両管理(フリートマネジメント)
産業分野においては、近年、効率的な管理だけでなく、環境負荷への管理・低減も求められています。IoT は、プロセスをより環境に優しいものにすることで、車両管理に革命をもたらしています。 IoTの各種ソリューションは、車両のサービス状態をモニタリングするのに役立ちます。それにより、炭素排出量、システムの故障、バッテリー残量、エンジン温度をモニタリングし、ドライバーへの指示やフリートの管理を適切に行う事ができます。自動配車システム(TMS)と連携し、道路事情や輸送コストを考慮した最適ルートを常に用いることも可能となり、結果として、燃費や安全管理の改善にもつながります。
予知保全 (PdM)
予知保全とは、工場内の機械や設備の不具合や故障をあらかじめ「予知」し、機械や設備を監視し最適な状態に管理することを言います。効果的な予知保全を実行するためには、大量のデータを処理する必要があり、その上で洗練されたアルゴリズムを実行する必要があります。そこで、テラバイトにも及ぶデータを保存し、必要な機械学習ベースのAI/アナリティクスモデルを実行できるIoTベースのソリューションが導入され、進捗状況を把握し、産業機器が故障するケースの予兆を適切に識別できるようになりました。
今日、IoTベースの予知保全システムは、産業に欠かせないものとなっています。クラウド、データレイク、ストリーミングデータ処理、機械学習モデル、とビッグデータ活用の技術群がフル活用されるアプリケーションと言えます。
遠隔制御・メンテナンス
アセットトラッキングや、フリート管理やPdMにより、様々なプロセスにつながる機器のリモートでの状態監視やまた故障の予測などができるようになりました。IoTソリューションの進展により、ここから更に一歩進み、リモートでの機器の制御やまた修理等も行うことが可能になります。これは企業における人員配置の最適化をさらに次の段階へ進めます。
プロセスオートメーション
基本的効果の解説のところでも、自動化は到達点と述べました通り、インダストリアル IoTの最も優れたユースケースの1つは、プロセスオートメーションです。主に、化学、冶金、水処理、精油産業において複雑な工程を管理し、安定性を確保するために活用され、今日では、そのような施設や工場だけでなく、倉庫やレストラン等でも活用されるようになりました。近年は、クラウドやエッジコンピューティングを介し、相互に接続したスマートセンサーネットワークによる情報のリアルタイム収集と即時処理によって、より高いレベルでの生産性と効率性を達成しています。プロセスの制御は格段に改善され、工程の管理においては省人化が進んでいます。また各業務における属人化から脱することを可能とし、ヒューマンエラーの防止にも効果があります。
IIoT を実現するための課題
さて、インダストリアルIoTを実現していくには、いくつかの課題があります。
センサーデータ収集のネットワークとセキュリティ
IIoTの実現には、センサーデータを適切に通信して収集していくことが必要になります。これらソリューションは、従前の有線技術に加え、様々な無線技術にて構築されています。Wi-Fi、Bluetooth、メッシュネットワーク、セルラーネットワーク、LPWAN技術などがあり、今後はローカル5Gによる大量データの収集が期待されます。ですが、インターネットを含むネットワークを経由してデータを収集するとなれば、同時にセキュリティ対策の構築が欠かせません。IIoTの通信がサイバー攻撃にさらされれば、製造プロセスが乱され、工場が正常に稼働しなくなる可能性もあります。様々な技術により多様なソリューションをつなぐことになるからこそ、セキュリティ対策はよりクリティカルになります。
プラットフォームの整備
そのように収集されるデータですが、活用においては大きな課題があるケースがあります。多くの場合において、センサーデータ収集による個々のソリューションが独立しており、連携していないことがあります。企業は複数のソースから機器やプロセスのデータを収集していますが、ソリューションのサイロ化状態によって、これらのデータは適切に統合されていないことが少なくありません。これではインダストリアルIoTの潜在能力を十分に発揮することは困難です。企業は、各IoTのソリューションが十分に連携され、データが統合された状態で利用できて初めて、そのベネフィットを最大化することができます。すべてのセンサーからデータストリームを整理し、データ管理を可能とする基盤である、インダストリアルIoTプラットフォームを持つことが重要です。
例えば、AWSはIIoTのプラットフォームをクラウドベースで提供しています。
IIoTプラットフォームは、データとプロセスやアプリケーションの間の仲介役として機能します。 収集されたデータはそのプラットフォーム上にて管理され、そこでリアルタイムの解析や分析が行われ、また各機器の制御が実行されます。このプラットフォームが整備されることで、今後、追加される様々な機器やプロセス、データネットワークによる拡張性が担保され、バリューチェーンをまたがるデータの可視化や、エンドユーザーアプリケーションとの接続も容易になります。
IIoT によりビジネスを進化させる
産業用の機械や製品を作る企業においては、このIIoTのトレンドを踏まえ、製品を作り売るビジネスから、プロセスオートメーション、アセットトラッキングや、PdM、遠隔メンテナンス等によるサービスベースのビジネスへとシフトしていくことが近い将来、重要になってきます。サービス化により、顧客との関係はより強いものとなり、顧客エンゲージメントは高まり、顧客からのフィードバックで企業は改善をし続けることができます。これは昨今、様々な業界でも叫ばれるDXへの変化に沿ったビジネスの進化であり、これにより企業はデータと顧客とのインタラクションに基づく継続的な付加価値を提供していくことが可能となります。
IIoTでDXは推進される
以上、インダストリアルIoTを概観しました。
インダストリアルIoTは、工場や施設におけるIoTソリューションの導入というイメージだけで理解されることもあるのですが、実際は、ビッグデータの活用をベースとした産業全体のDXを推し進める重要なソリューションです。もちろんプラットフォームをどう整備するかという肝となるところは存在しますが、それらクリティカルなポイントをおさえて、いかにその真価を発揮するかが大切です。
