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DA,DSA,DMA: GDPRに続く、欧州におけるテックプラットフォーマーへの新たな規制の動きについて


新しい規制の動き

近年のテクノロジーの激しい進化やそれに基づくビジネスモデルの躍進が引き金となり、欧州を中心に、新しい規制を定める動きが続いている。その象徴的なものの一つが、GDPR だ。EU(欧州連合)では、個人情報の保護という基本的人権の確保を目的とした GDPR( General Data Protection Regulation: 一般データ保護規則)が、2018年5月から適用が開始されている。GDPRは、EUを含む欧州経済領域(EEA)域内で取得した「個人の画像、映像、音声」「メールアドレス」「顧客の名簿」「従業員や取引先の名簿」等の個人データを EEA 域外に移転することを原則禁止している。従業員の名簿に関しては、現地採用の外国企業(例えば日本企業)の従業員や外国から派遣されている駐在員も含まれ、その対象は広範に及んでいる。


このようなプライバシーに関わる課題と規制に関しては、インターネット業界を中心としたビジネスの本質的なあり方にも関わり、以前、以下の記事も投稿した。


プラットフォーマーへのプレッシャー

EC(欧州委員会)は、GAFAに代表されるテクノロジーに支えられたプラットフォーマーへのさらなる新しいルールを打ち出そうとしている。

過去数年に渡り、どれだけテックプラットフォーマーの影響力が大きく、また他の小規模の企業の欧州での競争を妨げているかを調べるために、ECは、Google、Facebook、Amazon 等の企業の一連の調査を行い、彼らへのプレッシャーを強めている。最近では11月に、ECは、Amazonを独占的地位の濫用をしているとして調査を開始している。

しかし、これらの調査はプラットフォーマー側の反論もあって長引く傾向にあり、結果的に法的な論争が継続してしまい、実際の何らかのアクションにはほとんど結びついてこなかった。

他にも最近の例としては、ECと、アイルランド政府と同国に欧州本社を置くアップル社が争ったケースがある。


ECと、アイルランド政府・アップルとの係争

2016年、ECはEU加盟国のアイルランドに対し、アップル社に130億ユーロの追徴課税を指示した。アイルランド当局による税優遇措置が不当な補助金に当たるとしたものだ。しかし、2020年7月15日、ECJ(欧州司法裁判所)の一審にあたる一般裁判所は、アイルランドの税優遇措置が特定の企業にだけ利益を与えるものではなく、不当な補助金とは認められないと指摘し、この指示を却下する判決を出した。この紛争は、現在、ECが判決を不服とする上訴を行い、EUの最高裁判所に進んでいる。そのため、最終的な決着は数年先になることが予想される。(以下の Wikipedia の項目は、このケースを時系列で整理しており、詳しい内容となっている。)


ECによる3つのAct

実際に何らかのアクションには結びついていないものの、欧州の政策立案者の中では、現在の規制はデジタル経済のために設計されたものではないため、更新する必要があるという議論は高まりつつある。欧州の多くの国において、テック企業への規制を強めていく計画が策定されている。しかし、EUの27の加盟国がそれぞれ個別に規制を強化するようなアプローチは、ユーザーにも他の多くの企業にも混乱を巻き起こし、欧州市場の全体的な価値を低下させかねない。

そこでECは、EU全体として、テックプラットフォーマーの立場を制約するための新規制に取り組んでいる。GDPRを強化していくデータ法(Data Act)、そして、12月15日に発表されたデジタルサービス法(Digital Services Act)とデジタル市場法(Digital Markets Act)である。


データ法(Data Act)は、B2BやB2Gにおけるデータ共有促進に加え、センサーやウェアラブルデバイス、デジタルサイネージ、スマート家電等から生成されるデータ(machine generated data)に対する個人のプラットフォームをこえたコントロールをサポートする方針を示している。例えば、センサーを通して取得されたデータにアクセスして使用できるユーザーをより細かく制御できる、より多くのデータのプラットフォーム間の移行が行える等だ。

デジタルサービス法(Digital Services Act) は、主要なプラットフォーム上の商業的利用者に関するKYCの義務化や関連当局との効果的な協力、コンテンツの監督を要求する内容となる。違法コンテンツや有害コンテンツの監視・削除義務を強化し、AI(特にレコメンドや広告、ターゲティング等)の使用と透明性確保とレポート(誰が特定の広告を掲載したのか。なぜそのユーザーをターゲットとしたのか)に関するルールを定めることができるようになる。

デジタル市場法(Digital Markets Act)は、デジタル空間上での競争をよりオープンにし、プラットフォーマーの市場影響力を減らすように設定されることが検討されている。企業を買収する際の当局への事前通知や自社製品の優遇の禁止等だ。例えば、Apple や Google のそれぞれのアプリストアにおける自社のアプリの掲載上限や、検索結果における自社のコンテンツの上位表示の制限が設定される。


新たな規制で何が起こるか

ECの競争担当のコミッショナーである Margrethe Vestager 氏は、新規制の下で何が起こるかについていくつかのメディアで語っている。Vestager 氏は、「これらの規制により、欧州でのよりフェアな競争が保証されることとなり、それこそが重要な点だ」と述べている。


以下は、ドイツの公共放送である Deutsche Welle のニュースにおける解説である。今回の新規制に向けた動きが広告サービスやソーシャルメディアでのヘイトスピーチ等、対象は何なのか、何を意識しているのかとその影響について論じている。



規制の影響について

冒頭でGDPRについて述べたが、現在進められているこの規制は、プラットフォーマーのビジネスの中枢に関わっているという点で、GDPRよりも桁違いにクリティカルであるといえるかもしれない。また、これらの規制は非常に大きなインパクトをプラットフォーマーだけでなく、インターネットをフィールドとして活動するテック企業にもたらしうる。ビジネス活動やビジネスモデルそのものの転換を必要とする企業も出てくるかもしれない。それゆえに、今後の規制の影響は、欧州の競争力を低下させ、域内で成長しているテック企業を育成する能力を弱めてしまうのではないかという懸念もある。


世界の大規模テック企業

そもそも世界を見たときに、欧州に出自を持つ大規模テック企業(Tech Giants)は少ない。世界最大のテック企業20社のうち、EUに拠点を置くのはSAPの1社だけである。以下のランキングでは、20社の内訳は、アメリカ 14社、中国 4社、ドイツ 1社、韓国 1社となっている。アメリカが圧倒的であるが、中国も着実に勢力を強めつつある。

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source: visualcapitalist.com

新しい法案は、これら大規模テック企業の活動にブレーキをかけ、欧州の企業にイノベーションの可能性を与えるのだろうか。しかし、実際のところがどうなるかは慎重に見る必要がある。近年のイノベーションは、Scale Fast というキーワードとともにいかに早く顧客をインターネットスケールで獲得していくかということと無縁でなかった。欧州のテック企業も含めてそのスケーラビリティは弱まってしまう恐れもあるだろう。


終わりに

近年のテクノロジーとそれによるビジネスモデルの進化の時代は、新しいフェーズに入ろうとしている。これらの提案が実際に法律になり、施行されるまでには時間がかかると思われる。しかし、GDPRへの対応が一朝一夕ではできなかったように、プラットフォーマーだけでなく、多くのテック企業もその影響範囲とそれによるビジネスのゲームチェンジがどのように起こるかを見定めて、次の戦略を準備しておく必要があるだろう。


Appendix

今回の欧州における規制強化の動きと関連して、テック企業だけでなく、多くの企業のデータ活用に関しても規制が整備されていくことが予想される。そのような中で、企業はどうデータドリブンな経営を実現していくのかに関しては、以下の記事にて、「『攻め』のデータガバナンス」がコアとなることを述べている。データガバナンスを欠いた現状のまま、規制のみが強化されるとデータドリブン経営どころか手足が縛られた状況にも陥りかねない。体制の構築とデータ活用へのあくなき挑戦が肝要である。



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