深夜二時に着信アリ|シロクマ文芸部
深夜二時になると、いつも有美から電話がかかってくる。
最初は僕も喜んでその電話に出ていたし、甘えてくる有美が可愛くて愛おしかった。毎日その時間が楽しみで、次の日がいくら朝早くても長い時間話をしたものだ。毎日の出来事を報告してくれる有美自身もとても楽しそうだった。
しかし、やはりそれが毎日続くと当日の仕事に響く。睡眠不足で遅刻しそうになったり会議中に居眠りしてしまいそうにもなった。有美にはやんわりと断ったのだが、一向に電話をやめる気配はなかった。
僕はある日、着信音をオフにした。自分の生活も大事だ。それでも履歴には毎日有美の名前が残っていた。しかし不思議と1回しかかけてはこない。有美はその時間一体何をしているのだろう?大学生だから時間の融通はきくだろうけど、そんなに毎日二時まで起きて何をしているのだろうか?
ある日有美から電話がかかってくるのを僕は待っていた。かかってくるなり僕はスマホを手に取りこう言った。
「僕にも生活があるんだ。それは分かるよね?とにかくもう電話はやめてくれないか?」
それを聞いた瞬間に有美は電話を切った。いや、ちょっと待てよ。僕は二時にかけてくるのをやめてくれというつもりで言った。なのにもう電話はやめてくれと言ってしまった。え?ここでサヨナラになってしまったのだろうか?
次の日から一切有美からの電話はなくなった。二時の電話だけでなく、起きている時間にも電話はない。たった一言の間違いでとんでもない誤解を生んでしまった。しかし紛れもなく僕が突き放してしまったわけだから自業自得だ。
僕は毎日独りよがりな反省を繰り返していた。でも有美からの電話はない。有美はメールが苦手だったのでメールも来るはずがない。僕の心の中は寂しさのあまりドーナツのように穴が開いてしまった。
それでも他の誰とも付き合う気にはなれず、毎日惰性で暮らしていた。哀れなもんだ。あんなに迷惑だと思っていた電話がかかってきた午前二時。その時間になるとふとスマホの画面を見てしまうほどロスになっていた。
しばらく経ったある日、次の日会社が休みだったので、僕は夜遅くにNetflixで映画三昧の時間を過ごしていた。また午前二時がやってくる。虚しい。虚しくてやりきれない。 来た、午前二時。かかって来るはずのない電話を待つのも疲れる。とっとと寝てしまおう。
すると突然インターホンが鳴った。こんな夜中に物騒だな。来るやつなんかいない。恐る恐るカメラで確認すると、そこには有美が寒そうに突っ立っていた。
急いでドアを開けると
「お誕生日おめでとう!」
と照れくさそうに微笑んで大きなバラの花束を僕に手渡してくれた。
「あの時は本当にごめん。ずっと会いたかったよ」
僕は有美の頭を撫でながら、強く抱き締めた。
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