【インタビュー】実家をパフェ専門店&ギャラリーに改修。異業種の繋がりで磨かれる個性
京急線・梅屋敷駅の高架下にはインキュベーション施設「KOCA(コーカ)」があります。町工場、ものづくり、まちづくりに関わる創業者の支援を軸に活動している場所です。
この記事は、【KOCA】にオフィスを借りている人や卒業生、関わりの深い人にお話をお話を聞く企画です。
今回は、フルーツパフェ&ギャラリーを営む鈴木瑞穂さんにお話を伺いました。
※インキュベーション施設:起業家の育成や、新しいビジネスを支援する施設
(参考:独立行政法人 中小企業基盤整備機構)
平和島の商店街にあるフルーツパフェのお店【Safi(サフィ)】。大田市場や生産者から仕入れる季節のフルーツと手作りジェラートが贅沢に使われています。
店舗は、オーナー・鈴木瑞穂さんがかつて住んでいた実家を改修。インテリアや現代アートのお仕事に携わっていた経験やアーティストの協力を得て、パフェと一緒にアートを味わえる空間を作っています。
鈴木さんは勤めていた日本科学未来館を2017年に退職し、フルーツパーラーでの技術習得、インキュベーション施設【KOCA(コーカ)】での受付業務を経て、2022年にお店をオープン。提供するフルーツは月2〜3回ほど変わり、そのたびに常連のお客様が訪れるお店となりました。
施設で出会った人たちの言葉や、前職で関わりのあったアーティストの東恩納裕一(ひがしおんな ゆういち)さんとの再会が【Safi】に影響を与えています。
質屋だった実家のたたずまいを残した店づくり
【Safi】は空き家となっていた実家を改修しながらオープンしました。2階建ての元質屋で、入ってすぐ右手に質蔵があります。質蔵の天井にはアーティスト・東恩納裕一さんの作品が常設されています。2階はギャラリーとなり、時期ごとに異なるアーティストの展示をする空間に生まれ変わりました。
オープンして1年目は質蔵がメインの座席でしたが、2年目に手付かずだった奥の部屋も改修。厳選した北海道民藝の大きなテーブルが置かれています。

お店の特徴のひとつは、建て替えではなく、実家だった空気感を残しながら少しずつ改修したこと。2階をギャラリーにしたのは予定外で、東恩納さんの発案でした。
「2階も昔の荷物が残ったままで、人に見せるつもりなんて全くなかったんですよ。でも東恩納さんが面白がってくれて、『当時住んでいた住人の気配が残るこの風景は、作ろうと思っても作れない。ここで何かしたい』と、展覧会を提案してくださいました。
東恩納さんがよく言う、プリコラージュという好きな言葉があります。新しいものを買って作るのではなく、そこにあるものだけを組み合わせて作る考え方。ゴミを出さず環境に良いし、美しい考え方だと思うんです。私にとっては美しくないと思っていた実家の空間を、アーティストの皆さんの解釈によってとても面白い映像作品にしてもらえました」
展覧会の映像はこちら(YouTube)
東恩納裕一 山中春海 「Play Double」展
声:Safi 鈴木瑞穂

働き続けられる仕事を自分で作る
ご家族の介護と育児や仕事とのバランスを考え、2017年に会社を退職。しばらくして介護が落ち着いた頃、自分の将来や働き方について考え始めます。
「会社員での仕事も面白かったのですが、このまま管理職になっていくのはイメージができませんでした。ずっと頭にあったのは、おばあちゃんになるまで働ける仕事を自分で作ること。最初はやりたいことが決まっていなかったので、片手間ではなくプロらしく見えるものは何かを考え始めました」
お金を出していただくからには華やかなものがいいと思い、おいしくて見た目が鮮やかなフルーツパフェにたどり着きます。まずはおいしいフルーツの仕入れ方法やカット技術を身につけようと思い立ちました。そして昔から子どもに作っていて好評だったジェラートを思い出し、合わせて出す形を考えつきました。
2020年から1年半フルーツパーラーで働き、フルーツに関する知識やカットの技術などを学びます。すでにお店を出す構想はできていましたが、コロナ禍に突入。このタイミングでお店を始めるのは厳しいと判断し、独立の準備を一旦中断することになりました。
その頃、近所のインキュベーション施設【KOCA】をたまたま通りかかり受付募集の案内を見つけます。直感的にここで働こうと思ったそう。すぐに面接を受け、1年ほど運営に関わりました。
「パフェだけにしたら?」の一言が決め手
【KOCA】での出会いや人の繋がりがお店の運営に大きく影響していると鈴木さんは言います。提供メニューを決める際、KOCA運営者のひとりである茨田禎之(ばらだ よしゆき)さんの一言で物事が進んだそう。
「オープン2週間前になってもメニューに悩んでいて、あれこれ出そうとしていました。ひとりでは決めきれず、忖度なく意見を言ってくれる人に食べてもらおうと茨田さんに試食してもらいました。彼は飲食にも携わっているので、プロの目線を持っています。
感想はかなり辛口評価だったのですが、最終的には『パフェだけにしたら?』と一言。パフェは今と同じくらいの完成度だったのですが、他はプロっぽくないという意味なのかなと、腑に落ちました。その時パフェは1種類だけのつもりだったので、急いで2種類に増やしましたね。感謝している助言のひとつです」
2022年5月にオープンし、同時期に2階で開催した展覧会も好評で、暇を感じる日はなかったとのこと。茨田さんの言葉を受けメニューを削ぎ落とし、フルーツパフェ専門店にしたことで、フルーツ好きの方に注目してもらえたのではないかと振り返ります。

壁を黄色にしたのは「フルーツが映えるビタミンカラー、そして性別関係なくニュートラルな色だと思って。イメージした色になるまで何度も塗り直した」と教えてくれた。
出会いと繋がりの拠点KOCAで感じた自由なチャレンジ
鈴木さんが【KOCA】に勤務していた際の担当は受付業務。設立されてまだ1年ほどの時期だったこともあり、入居者向けの契約書の見直しや施設利用ルールの整理も行いました。
【KOCA】の運営は、異なる会社の経営者が共同で行っています。それぞれの意見が異なるときに鈴木さんが橋渡しをすることもあったそう。大変かと思いきや、それも面白かったと言います。
「意見が違うからこそ刺激があるし、統一されているべきだとはまったく思いませんでした。異なるバックグラウンドの人たちでチームを組んでいるのは、多様性があって良いなと思いますね」
現在も【KOCA】での出会いが形を変えて継続しています。繋がりがまた新しい出会いを呼び、地域のアーティストとの接点も増えています。
「KOCAで多くの個人事業主やアーティストとの関係性の基盤ができましたね。私は自分の思いだけではやらず、客観的な意見を取り入れながらここまできました。そのおかげでSafiは面白い施設になっているのではないかと思っています。1人でやっているわけではなく、助言や意見をもらえる人たちが周りにいる。人の出会いに助けられていますよね」
【KOCA】で出会う業界も仕事内容も異なる人たちの話を聞くのはとても楽しく、そして励みになったそうです。自分で考えて、自分の意見でやっていく心得が聞けたことは、マインドセットの期間になったかもしれないと言います。
また、みなさんのビジネスがどうやって成り立っているかを根掘り葉掘り聞くのも面白かったそう。「立ち入ったこともKOCAだと聞けちゃう雰囲気がある」と振り返っていました。
最後に、鈴木さんの目線で【KOCA】の好きなところを伺いました。
「新しい取り組みにも臆さないところですかね。組織だと安全な道を取ることが多いのではないかと考えますが、私がいた頃もいろいろなチャレンジをする自由さがあって好きでしたね。運営の皆さんのバックグラウンドや得意分野がそれぞれ違う、その多様性は失わないでほしいなと思います」
Safiで現在提供されているパフェの種類、アート展示などの最新情報は、Safiの公式Instagramからご確認いただけます。
