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菜園と生ゴミ堆肥と、あと一つ

土いじりがしたくて、家庭菜園を始めてもう何年にもなる。せっかくだから肥料は生ゴミ堆肥で賄い、有機栽培で地球に優しくゴミも減らして大豊作、と夢見ていたのだが・・・

我が家の敷地は猫の額ほどで、そのほとんどが畑と化している。といっても収穫高はけっして褒められたものではない。玉ねぎはピンポン玉ほどのサイズだし、ジャガイモはせめて皮むきに苦労をしない程度の大きさがほしいと、家族からはいつも苦情が投げつけられる。でもそれも想定内の結果かもしれない。肥料や資材に決して多くを投資していないのだから。

化学肥料や農薬といったたぐいのものは使っていない。有機栽培だと表向きはイッパシの威勢を放っている。一応自然環境への負荷を減らし、生物の多様性を保ち、生ゴミの排出量の削減に努めているのである。大きな視野で見ると、化石燃料の使用を減らし地球温暖化対策へつながる、はずである。

この生ゴミ堆肥の活用は、専用容器で台所から出た残渣に堆肥促進剤を混ぜることから始まる。この作業を雪深く覆われる季節も含め、年中真面目に繰り返す。必然と地道な作業に伴う苦労と忍耐が、それなりにジットリと背中にまとわりつく。
そして例年、雪解けが進んで桜の花も散る頃、シーズンの始まりに胸を踊らせながら作付けに向けて土づくりにとりかかる。スコップで地面を起こし、地中に生ゴミ堆肥を埋め込み、今年こそは豊作だと意気揚々と汗をぬぐう。
あとはじっと待つのみだ。
2、3週間も経てば堆肥は土の中に消え、微生物とともに養分となって生育の糧となる。

ところがである。
その堆肥が分解される過程には、思いもよらぬ障害が待ち受けるのであった。

キタキツネ。
彼らはどこからともなくやって来て、せっかく地中に埋めた堆肥を夜な夜な掘り返すのである。朝早く現場に出てみると、堆肥を施したところは無数の穴となり、見るも無残な姿となって目の前に広がっているのであった。

近所の話によると、ここら一帯はキツネが頻繁に出没するらしい。しかも一度味をしめたら繰り返しやって来る。昼間などは人間が近づいても、堂々と居座りなかなか立ち去ろうとしないそうだ。

彼らには地面を掘って巣穴を作ったり、地中深くの小動物を嗅ぎ分けて捕らえたりする習性がある。嗅覚の鋭さは並大抵のものではないようだ。うちの昼寝ばかりでグウタラな小型犬など到底及びもしない。

しかしこのキツネ、いったいどこから来てどこへ帰って行くのだろう。
考えてみれば、その昔ここは家も道路もないただの自然の一部だったはずで、あとから人間が進出してきたところである。ここに限らずほとんどの土地がそうだ。役所に登記を済ませ自分の物だと主張したところで、自然界から見るとそんなのは人間の勝手な言い分に過ぎず、区画や境界線は彼らにとっては何の意味もなさない。地球上には人類が自分たちの都合で決めた領土なんてものがあるが、そんな概念など全く持ち合わせない獣や鳥たちは、国境をお構いなく移動するし上空を自由に行き来する。

とはいうものの、こっちだって作物を育てる権利はある。別に彼らの生活に不都合を与えているわけではない。向こうがこちらの所有物を略奪しに来ているのだ。エキノコックスといった病気感染の問題もあり、動物出没の動画を見せると自治体も駆除に動いてくれるそうだが、でも命まで奪おうなんてサラサラ思わない。

さてどうしたものか。
ビニールマルチで覆いかぶせればそれなりに効果が得られそうだが、使い捨て資材にそんな手間とお金はかけていられない。放水で追い払うにはこっちの身が追い付かない。音での威嚇は近所付き合いにヒビが入る。光を利用するのは電源や装置に手間がかかる。オオカミの尿はコストパフォーマンス的に全く割に合わない。うちの2匹は番犬として到底役に立ちそうもない。案山子が効くのならとっくに立てている。

思案の末、堆肥を施したところを段ボールで覆い被せ、対象物の匂いを遠ざける作戦に打って出ることに。しかし結果はもろくも惨敗。
それではとネットとポールでフェンスを作り、侵入を防ぐことを試みた。しかし中途半端な高さでは簡単にそれを飛び越え、地面のふもとの処理が甘いと上手に穴を掘り侵入してくる。

敵は相当に手ごわいのであった。

それでも相手がキツネであるのはまだマシなのかもしれない。シカやヒグマ、アライグマなどは農家の畑にも手を出すようだ。サルやイノシシがここでは生息していないのが、せめてもの救いだと考えるのが賢明だろう。

アライグマが道内ほぼ全域に活動範囲を広めているという報道が出て、もう随分と経つ。だからここに現れても何ら不思議ではない。彼らは動きが機敏でいかなる高所にも簡単に上り、水辺の泳ぎも得意である。狭いところも通り抜けるし穴も掘る。愛くるしい見た目とは反対に非常に気が荒い。その厄介さはキツネの比ではないようだ。

元々日本では生息していなかったのだが、アニメの影響もあってかペットとして人気がでた。しかし逃亡に加えその狂暴さが手に負えなくなり、自然界に放置されて今に至る。いわば外来種で、生態系にも大きく影響を及ぼしている。ここでも人間の身勝手さがはっきりと悲しく露呈する。

生ゴミ堆肥を施す時期が過ぎるとキツネとは休戦状態になる。そもそも肥料を施さない上、埋めた堆肥はほとんどあさられているのだから、畑には十分な栄養が行き届いていない。当然収穫も上向くはずが無い。

だがこんな奮闘の中でも土に触れていると、それなりに天候不順には注意が向くし、プロの農家の作柄と売値の動向が随分と気になるようになった。そして何より土をいじることにこの上ない喜びを感じている。

野菜が欲しければスーパーで求めれば良いわけで、いっこうに芳しくない我が菜園の収穫高は、生活になんらダメージを与えるものでもない。こんなドタバタな攻防もそれはそれで悪くはないと思っている。

生ゴミ堆肥が自然の力の応用なら、動物の生態も自然そのものである。そして人間も自然の中で生かされている。こんな到底童話のネタにもなり得ない ”知恵比べ” は終わりの姿が見えてこないが、それでも間違いなく可燃ゴミの削減には貢献している。この自然という恵みに感謝し、菜園生活を有意義に楽しんでいこう。
半分開き直りながら、前を向いて行くのであった。

#私たちの環境アクション

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