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眠れぬ夜のショートショート #59 止まらないプレゼント(忘れ物センター #4)

落とし物センターには、ときどき説明のつかないものが届く。
その日の午前、通勤途中の会社員風の男性が小さな箱を差し出した。

「駅の広場に置いてあって……持ち主が困ると思って」

赤い包装紙に、金のリボン。
見慣れた“贈り物”の見た目をしているが、中身の重みは薄い。

(プレゼントかな?)

職員は“本日の忘れ物”の棚に、そっと置いた。

そろそろ業務が終わろうかという時、若い女性が現れた。
肩までの髪。淡い服。
まるで空気から“ふっと”形を取ったような気配。

「プレゼントの箱……届いていますよね?」

棚から箱を渡すと、女性は深く美しいお辞儀をした。

「ありがとうございます。開けずに届いてよかったですね。」

なぜか、他人事のように言う女性。

(開けずに?)

女性は、音もなくすっと去っていった。

気になる言い方だったが、元の持ち主に届けばそれで良し。
職員はセンターのシャッターを閉めた。

夜。

駅前の広場。
あの若い女性が、昼間持ち帰ったはずの箱を、今度はベンチに置いている。

そして、また音もなくすっと消えた。

しばらくすると、スケボーを抱えた三人の若者が近づいた。

「なんだこれ? 忘れもん?」
「プレゼントじゃん」
「開けちゃえよ、こんなとこ置くほうが悪いって」

リボンが乱暴に引きちぎられる。包装紙が裂ける。
箱が、開く。

ぱかり。

三人の動きが止まる。
中を覗いた三人の顔が恐怖で凍った。

「………………え?」
「……なんだよ、これ……」
「ヤバいぞ、締めろ!」

ひとりが震える指先で蓋を閉めようとした瞬間――

ピ…ピ…ピ…ピ…。

箱の奥から、カウントダウンのような音。

「わぁぁ!」

三人は箱をそっと置き、転げるように逃げ去った。

残された箱は、脈打つように青く光っている。

その箱を拾い上げたのは、昼間の若い女だった。

女は箱を耳もとに当て、静かに目を伏せた。

「どうして人は、“触れなくていいもの”ほど触れたがるのかしら。」

そっと呟き、
金のリボンをゆっくり結び直す。

「……もう、止まらない。」

女は箱を抱え、夜の人混みに吸い込まれていった。
その背中には、もう迷いもためらいも、なかった。

(おしまい)

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一条 詩紋 いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。 物語があなたの癒しになれば幸いです。 チップはご無用です。一緒にドキドキしてくれた思いを伝えてくだされば・・・。それがうれしいです。