⑮ 「何がしたいか?」では答えられない
第3フェーズでは、
生活課題を引き出すための「聞き方」と「視点」を整理してきました。
どこを見て、何を聞くか。
そして、それをどう支援設計につなげるか。
しかし実際の現場では、
そもそも本人がうまく言語化できない場面に多く直面します。
「何がしたいのか分からない」
「困っていることが出てこない」
この状態にどう向き合うか。
今回は、
言語化できない人への問いの立て方を整理します。
支援設計は“問いの立て方”で決まる
「何かしたいことはありますか?」
この問いに対して、
「特にない」「分からない」と返ってくる場面は多い。
しかしこれは、ニーズがないのではなく、
問いの粒度が合っていないだけである。
■ 「したいこと」は“0か1か”の問いである
「何がしたいか」は、
一つに絞ることを求める問いである。
つまり、
「これか、これじゃないか」
という“0か1か”の判断になる。
しかし実際の生活は、
・したいこと
・しなければならないこと
・してみたいこと
・したくないこと
・どちらかと言えばしたいこと
こうした曖昧さを含んでいる。
本来はグラデーションで存在しているものを、
無理に「これ!」と一点に絞らせる。
だから答えにくい。
■ 「どんな状態でいたいか」は“グラデーション”の問い
そこで有効なのが、
「どんな状態でいたいですか?」
という問いである。
これは行動ではなく、
状態・在り方を問う問いになる。
そしてこの問いは、
0か1かではなく、
1〜30くらいの幅で答えられる問いになる。
例えば、
・なんとなく家で安心して過ごしたい
・できれば人と関わりは持ちたい
・迷惑はかけたくない
このように、
「なんとなくこんな感じ」でも成立する。
だからイメージしやすく、
答えやすい。
そしてこの「状態」が見えてくると、
そこから初めて具体的な行動(点)に落とし込める。
■ 抽象と具体の往復が「設計」になる
重要なのは、
抽象(状態)と具体(行動)を行き来することである。
・抽象:どんな状態でいたいか
・具体:そのために何が必要か
この往復ができると、
・生活課題
・目標
・サービス選択
すべてがつながる。
逆に、
具体だけで進めると「筋力向上」になり、
抽象だけで止まると「なんとなくの支援」になる。
■ 難しいのは“技術”ではなく“切り替え”
ここで多くの人がつまずく。
それは、
抽象と具体の切り替えが難しいからである。
・具体で聞きすぎて答えが出ない
・抽象で止まってしまい落とし込めない
このズレがあると、
支援設計はぼやける。
つまり、
問いの本質は
「何を聞くか」ではなく
**「どのレベルで聞くか」**である。
■ 結論
「言語化できない人」に対して必要なのは、
・0か1かで聞くか
・グラデーションで聞くか
この使い分けである。
そして、
最初はグラデーションから入る。
そこから0か1かに落とす。
この順番を意識するだけで、
引き出せる情報は大きく変わる。
さらに重要なのは、
抽象(状態)と具体(行動)を往復しながら、
対象者の思いを計画に落とし込むこと。
これは単なる聞き取りではない。
支援設計そのものだ。
そして、
具体化と抽象化を使い分けて、
対象者の思いを形にすることこそが、プロの仕事である。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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