⑭ケアプランは「利用目的」で決まる
第3フェーズでは、面接やアセスメントの場面で「どのように聞くか」「何を引き出すか」を整理してきました。
生活課題の捉え方や問いの立て方、参加と機能という視点の違いについても扱ってきました。
しかし、それだけでは支援は決まりません。
聞いた情報をもとに、何を優先し、どの方向に支援を組み立てるのかという判断が必要になります。
今回は、その判断の軸となる「利用目的」について整理します。
「これでいいのかな」と感じる支援の正体
ケアプランは回っている。
サービスも入っている。
大きな問題も起きていない。
それでも、どこかしっくりこない。
本人の満足度は上がらない。
家族の不安も残っている。
支援している側も、「これでいいのか」と感じている。
しかし、その原因ははっきりしない。
こうした状態は、現場では珍しくありません。
そして多くの場合、問題は関わり方やサービス内容ではなく、
もっと手前の設計にあります。
それが、
「この人は何のためにこのサービスを使うのか」
という視点です。
利用目的が曖昧なままでも、支援は“成立してしまう”
介護の現場では、ある程度の情報が揃えば支援は組めてしまいます。
身体機能、生活状況、家族構成、既往歴、ADL、認知機能。
さらに、「歩きたい」「元に戻りたい」といった本人の希望。
これらが揃えば、サービスは選定でき、ケアプランも作成できます。
実際、多くのケースはこの段階で支援がスタートします。
そして、そのまま問題なく“回っていく”ことも少なくありません。
しかし、この状態には一つ大きな特徴があります。
👉 「成立しているが、最適化されていない」
なぜ“回っているのにズレる”のか
利用目的が明確でない支援では、
支援の判断基準が曖昧なまま進みます。
その結果、
できそうなことを優先する
提供しやすいサービスに寄る
分かりやすい課題(筋力・歩行など)に集約される
といった形になりやすくなります。
たとえば、
「歩きたい」という言葉があれば歩行練習へ、
「体力が落ちた」という話があれば運動へ、
といった流れです。
これは一見自然ですが、ここに大きな落とし穴があります。
👉 それが“何のための支援か”が決まっていないことです。
利用目的がないと、支援は“なんとなく良さそうなこと”になる
利用目的が曖昧なままの支援は、
結果として「なんとなく良さそうなこと」の組み合わせになります。
とりあえず運動
とりあえず入浴
とりあえず通う機会の確保
これらはすべて意味のある支援です。
しかし、それが本人の生活にどうつながるのかが整理されていなければ、
支援としての精度は上がりません。
そしてこの状態では、
本人は「何のために通っているのか」が分からない
家族は「期待した変化が見えない」と感じる
支援者は「やっているが手応えがない」と感じる
という状況が生まれます。
👉 ズレているのに、問題として認識されない状態です。
同じ利用者でも、利用目的が違えばプランは変わる
利用目的は、支援の優先順位を決める基準です。
ここが定まると、同じ情報でも支援の組み立て方は変わります。
たとえば、同じ「歩行が不安定な利用者」でも、
① 目的:自宅生活を続けること
転倒予防
屋内移動の安定
トイレ動作の確立
家族負担の軽減
👉 生活維持が軸になる
② 目的:外出機会を増やすこと
屋外歩行
体力の維持
移動範囲の拡大
通所の継続性
👉 活動拡大が軸になる
③ 目的:家族を安心させること
見守り体制の構築
情報共有
リスク管理
介助方法の統一
👉 家族支援が軸になる
このように、何を優先するかは目的で決まります。
逆に言えば、目的が曖昧なままだと、優先順位も曖昧になります。
「歩きたい」は目的ではなく、入口である
現場でよくあるのが、本人の発言をそのまま目的として扱ってしまうケースです。
「歩きたい」
「元に戻りたい」
「リハビリを頑張りたい」
これらは重要な言葉ですが、多くの場合は本当の目的の手前の段階です。
その奥には、
買い物に行きたい
一人でトイレに行きたい
家族に迷惑をかけたくない
以前の生活に近づきたい
人と関わる機会を持ちたい
といった生活上の意味があります。
ここまで掘り下げないまま支援を組むと、
「歩行練習をしているのに生活が変わらない」という状態になります。
それは支援が足りないのではなく、
目的に届いていないという問題です。
利用目的は「何をやるか」ではなく「何を優先するか」を決める
支援設計では、「何をやるか」に目が向きがちです。
しかし実際に重要なのは、「何を優先するか」です。
時間も人員も限られている中で、すべてを同時に改善することはできません。
だからこそ、
どこに時間を使うか
どこまで介入するか
何をあえてやらないか
を決める必要があります。
この判断基準になるのが利用目的です。
目的が明確であれば、支援は絞られます。
逆に目的が曖昧であれば、支援は広がり続けます。
利用目的が曖昧な支援は、途中で必ずぶれる
利用開始時は問題なく見えても、目的が曖昧な支援は時間とともにぶれていきます。
本人の通所意欲が下がる
家族の期待とずれる
職種間で評価が分かれる
会議で方向性が定まらない
こうした状況は、支援内容の問題ではなく、
最初の設計が曖昧だったことが原因である場合が多いです。
支援を見直すとき、本来確認すべきなのは「何をするか」ではありません。
何のためにやっているのかです。
面接・アセスメントは、利用目的を明確にするためにある
ここまでの内容を踏まえると、第3シリーズの位置づけが見えてきます。
生活課題を引き出す
問いを工夫する
視点を整理する
これらはすべて、
利用目的を明確にするための手段です。
情報を集めること自体が目的ではありません。
その情報をもとに、支援の方向を決めることが目的です。
この視点を持つと、面接や会議での聞き方が変わります。
単なる情報収集ではなく、
判断につながる情報を取りにいく意識になります。
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございます。
支援がうまくいかないとき、問題は方法ではなく出発点にあることがあります。
どれだけ丁寧に関わっても、利用目的が曖昧なままでは支援はずれていきます。
だからこそ、最初に確認すべきなのは「何をするか」ではなく、「何のために使うのか」です。
このシリーズでは、ケアマネジャーや支援職が判断の精度を上げるための思考整理を言語化しています。
今後も、面接・アセスメント・サービス選択につながる視点を発信していきます。
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