#130:【日本経済】金利が上がった日、格差も上がった
金利が、31年ぶりに1%を超えた。
6月16日、日銀の政策決定会合が開かれた。結果は予想どおり0.25%の利上げ。これで政策金利はついに1%の大台に乗った。
31年ぶりというのは、バブル崩壊後の1994年以来のことだ。あの頃、社会に出たばかりだった人間が今では50代になっている。
それだけの時間が、ゼロ金利という異常な状態の中で静かに過ぎ去っていった。
あなたはこのニュースを聞いて、何を感じただろうか。
「ああ、またか」と画面をスクロールした人もいるだろう。だがこの小さな数字の変化が日常生活に与える影響は、じわじわと、気づかないうちに、家計の深いところへ忍び込んでくる。
そしてその侵食は、静かであるだけに気づいたときには手遅れになっていることが多い。
喜ぶ人と、苦しむ人。利上げはその二種類の人間を、くっきりと分断する。
喜ぶのは誰か
利上げで真っ先に恩恵を受けるのは、銀行と多額の預金を持つ高齢者だ。
銀行は企業や個人への貸出金利を引き上げることができる。利ざやが広がり、長年苦しんできた収益構造がようやく改善に向かう。
何十年も貯め続けた預金を持つ高齢者にとっても、眠っていたお金がようやく動き始める感覚だろう。
老後のために積み上げてきた貯蓄が、少しずつ報われていく。節約と我慢を重ねてきた時代への、遅すぎるご褒美のようなものだ。
だが、世間の大多数はそうではない。
利上げの恩恵を受ける側と、負担を押しつけられる側。その境界線は、思ったよりくっきりとしている。あなたはどちら側にいるか、真剣に考えたことがあるだろうか。
ローンを抱えるすべての人へ
車を現金一括で買える人は少ない。家を買うとき、35年ローンを組むのは当然の選択肢だ。
そうやって私たちは、低金利という「空気」の中で借金を積み上げ、それを当たり前のこととして生きてきた。31年間、その空気が続いた。
私たちはその空気を呼吸しながら、ローンを組み、子どもを育て、老後の計画を立ててきた。
固定金利で借りている人は今回の影響を受けない。問題は変動金利だ。返済額は少しずつ、しかし確実に増えていく。
毎月の支払いが1万円増えるだけで、年間12万円の出費増になる。10年では120万円だ。これは決して小さな金額ではない。
今でさえ、食費も光熱費も上がり続けている。スーパーのレジで合計金額を見て、思わず目を疑う瞬間が増えていないだろうか。
そこへローンの返済増加が重なったとき、一体どこを削ればいいのか。
返せない人が増える。手放す家が増える。買い手がいなければ不動産価格は下がる。
さらに今後、団塊世代が保有してきた住宅が市場に大量に出てくる。住宅価格の下落圧力は、これから本格化していくだろう。
あなたの会社は大丈夫か
個人だけの話ではない。
金利が上がれば、企業の借入コストも増える。内部留保が薄い中小企業ほど、返済の重さは経営を直撃する。
1社が倒れれば、取引先が連鎖する。倒産件数が増え始めたとき、自分が勤める会社が安全だという保証は、どこにもない。
今の職場は大丈夫だと、あなたは胸を張って言えるだろうか。会社が倒れたら、そこからの立て直しはどれだけ難しいか。
40代・50代で職を失ったとき、次があるという保証はどこにもないのだから。
これは「景気回復のインフレ」ではない
今回の利上げは、建前上はインフレ抑制のためとされている。だが、利上げが本来正当化されるのは、景気が良くて、物が売れて、自然と物価が上がる好循環のときだ。
今起きているのは、構造が違う。イランをめぐる地政学的リスクや資源価格の高騰が引き金を引いたコストプッシュ型のインフレだ。
需要が旺盛で物価が上がっているのではなく、供給コストが上がって物価が押し上げられている。この違いは、根本的に大きい。
もし地政学リスクがなければ、金利はここまで上がっていなかったかもしれない。そう考えると、今の利上げが本当に正しい処方箋なのか、疑問が残る。景気は良くないのに、金利だけが上がっていく。その矛盾の中に、私たちは立っている。
格差は、もう始まっている
日経平均株価が、一時7万円の大台をうかがう場面があった。
あなたは日本株を持っているだろうか。
持っていない人が多いだろう。そしてそれが、これから10年で起きることの核心だ。
資産を持つ人は、インフレで資産価値が上がり、株高でさらに資産が膨らむ。
億り人が続々と誕生する一方、資産を持たない中間層は物価上昇とローン返済増の二重苦に晒され、じわじわと貧しくなっていく。
今のアメリカで起きていることが、そのまま日本でも再現される。格差拡大は、もはや予測ではなく、進行中の現実だ。
これがインフレの本当の怖さだ。持っている人がより豊かになり、持っていない人がより苦しくなる。
その仕組みは、金利が上がっても変わらない。むしろ加速する。あなたの周りにも、気づけば「資産を持つ人」と「持たない人」の溝が深まっていないだろうか。
では、どうするか
答えはシンプルだ。今のうちに倹約・節約でお金を貯え、投資の勉強を始めること。それしかない。
「投資は怖い」「詐欺に遭いそう」という声をよく聞く。だが、詐欺に遭うのは勉強不足が原因だ。
正しい知識を持ち、インデックスファンドや積立NISAから少額で始めれば、そう簡単には失敗しない。投資は詐欺ではない。正しくやれば、時間が最大の味方になる。
まずは1,000円でも、5,000円でもいい。金額より「始める」という事実が大事だ。最初の一歩を踏み出した人と、踏み出せなかった人の差は、最初はほとんどわからない。
だが10年後、20年後、その差は静かに、しかし決定的な形で現れる。受益者の側に回ることを、今日から選ぼう。
格差が拡大する時代に、その第一歩は、今日この瞬間から踏み出せる。利上げのニュースを「他人事」として聞き流した人と、「自分事」として動き始めた人。その差は、10年後に取り返しのつかない形で現れる。
あなたはどちら側に立つつもりですか?
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