#136:【信用取引】「追証の震え」──フジクラ暴落と信用取引の怖さ、AIブームの終わりを読む
上場来高値7,933円から、わずか一週間で半値近くまで叩き落とされた。
フジクラという会社の話だ。
生成AI向けデータセンター建設の波に乗り、光ファイバーケーブルの需要が爆発的に膨らむ中で株価は急騰し続けた。
「AI関連の大本命」として個人投資家の間でも注目を集め、期待が期待を呼ぶような上昇が続いた。
ところが5月14日の決算で、今期の業績見通しが市場予想に届かなかった。
その瞬間、積み上がっていた買いポジションが一斉に崩れた。
信用取引で乗っていた個人投資家たちの損切り売り、追証回避の投げ売りが連鎖し、わずか一週間で株価は上場来高値から半値近くへと沈んだ。
画面に並ぶ赤い数字を、どんな気持ちで見ていたのだろう。
自分が信用取引でフジクラを持っていたら、と想像するだけで、指先が冷たくなるような感覚がある。
含み損が膨らむ速度と、追証通知が届く速度は、信用取引だとほぼ同じだ。
逃げたくても逃げられない。その恐怖の中で、冷静な判断ができる人間がどれだけいるだろうか。
一か月で起きたこと
だが話はここで終わらない。
6月18日、フジクラは驚異的な業績の上方修正を発表した。
その後の株価はストップ高を交えながら急回復している。
5月14日の暴落から、まだ一か月と経っていない。
これほど短期間でこれほど大幅な上方修正が出るとは、生成AI向けデータセンターの需要がいかに旺盛かを物語っている。
データセンターの建設ラッシュが続く限り、光ファイバーケーブルは「必要不可欠なインフラ」として引き合いが途切れない。
その需要に供給が追いつかない分だけ、利益が乗りやすい構造になっている。
しかし、それでも投資家にとっては苦しい現実が残る。
5月14日の決算さえなければ、まだ保有し続けていた人が大勢いたはずだ。
「なぜあの時、キオクシアのように今期見通しを上振れで出してくれなかったのか」
そう歯噛みした投資家も少なくないだろう。
もしイラン情勢がさらに悪化して地政学リスクが膨らんでいたなら、AI銘柄全体が売られ、フジクラの株価はさらに下落していた可能性もあった。
上方修正があっても、外部環境次第で市場は真逆に動くことがある。
投資は、いつだって「たられば」と隣り合わせだ。
うまいようにいかないのが投資の常なのだと、わかっていても悔しいものは悔しい。
それでも市場は一切の感情を無視して、今日も動き続ける。
信用取引が持つ「刃の両面」
フジクラのケースでもっとも傷を負ったのは、信用取引で買っていた投資家だった。
現物で保有していれば、5月14日からの急落に巻き込まれなかった可能性がある。
含み損を抱えながらも持ち続け、6月の上方修正を静かに待てたかもしれない。
それができたなら、今頃は笑っていたはずだ。
信用取引にはレバレッジがある。利益の拡大も速いが、損失の拡大も恐ろしく速い。
追証の通知が届いた瞬間、選択肢は「耐える」か「投げる」かだけになる。
その二択を、血の気が引いた状態で迫られる。
あなたも今、信用取引で保有している銘柄があるなら、一度立ち止まって考えてほしい。
その含み損が追証水準に触れたとき、あなたは冷静でいられるか。
信用取引の怖さは、相場が読めないことではない。
「時間を買えない」ことだ。
現物投資なら、暴落の先に上方修正があったとしても、持ち続けるという選択ができる。
信用取引には、その選択肢が最初からない。
フジクラが証明したのは、株価が動く順番を人間はコントロールできないという、当たり前でも見落としやすい事実だった。
AIブームの終わりをどう読むか
今のAI相場を下支えする構造的な需要は、本物だと思っている。
アメリカのデータセンター建設は需要に供給が追いつかず、光ファイバーや関連インフラの利益は出やすい状態が続いている。
だがデータセンターは無限に増やせるわけではない。
コストの壁、そして何より電力の壁がある。
電力不足によって着工が遅れ始めたとき、それは一気に悪材料として株価に織り込まれるだろう。
「電力が足りない」という一報だけで、AI銘柄全体に売りが入る展開も十分あり得る。
もう一つ気になるのは、AI半導体銘柄のPERの高さだ。
エヌビディアが好決算を出しても株価が上がらない場面が増えてきた。
市場がすでに「織り込み済み」に入りつつあるサインかもしれない。
PERが正常水準に戻る局面こそが、AIブームの終わりになるのではないかと私は見ている。
その「いつか」がいつ来るかは誰にもわからない。
でも来ないと思っている人が多いほど、来たときのダメージは大きくなる。
今のAI相場に、あなたはどれだけ乗り出しているだろうか。
私のポジションと、これからの話
正直に言う。私はAI個別銘柄を買っていない。
S&P500、FANG+、楽天全米株式インデックスファンドを通じて、AIブームの恩恵を広く薄く受け取る形を選んでいる。
フジクラのように一銘柄に集中してリターンを狙う投資は、私の性格には合わない。
信用取引も使わない。時間を味方につける現物の長期保有が、私が20年の経験から選んできたやり方だ。
これからも少しずつ、着実に資産を積み上げていく。
それでも、フジクラのチャートを追いながら思うことがある。
上方修正の発表を、暴落前から持ち続けた投資家として受け取れていたら、どんな気持ちだっただろうか。
喜びと同じくらい、あの一か月の恐怖が心に残っていたはずだ。
人は利益の記憶より、恐怖の記憶のほうを長く抱えるものだと、私は信じている。
AIという大きな追い風の中で、あなたはどんな乗り方をしているだろうか。
リターンの大きさだけでなく、その乗り方があなたの眠れる夜を守っているかどうかも、一度確かめてみてほしい。
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