【二次創作 小説7 8 9 呪術廻戦 懐玉・玉折】五条悟との邂逅 黎明編7〜9
ご覧いただきありがとうございます。この小説は約4800文字で、約12分程度でお読みいただけます。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義で使用しています。不快な方はご注意ください。
🌀念のため1〜3話目のリンクを置いておきます。
●7
高専の倉庫として使われている部屋で、
「よっ! ほっ! あと、あと少し──」
せいらがぐらぐらと揺れる足場に乗って、手足を伸ばして高所にある段ボールを取ろうとしていた。
「危ない!」
その様子を見かけて、つい声に出た一言が、彼女を驚かせてしまう。足場が崩れる瞬間、咄嗟に呪霊でせいらを包み込む。
「わー! なにこれー!」
「怪我はないかい?」
呪霊を解除して収納する。
「すぐる! ありがとう。さっきのこもありがとうね」
──ん? 呪霊にもお礼を言うんだ。変わった子だな。
「さっきのこのお名前は? なんかふわふわしてて気持ち良かったな。けまるちゃんとか?」
「いや、私にとって呪霊は道具だ。ひとつひとつに名前なんてつけないよ」
──そう。呪霊は道具。名前を付ければ情が生まれる。そうなったら使い捨てがし辛くなる。
「え?」
どうして彼女は、そんな驚いた顔をするんだろう。
「そうなんだね」
せいらは少し寂しそうな表情になり、困ったように微笑んだ。
「……君は何を取ろうとしていたんだい?」
「あ、清掃用の予備のモップの先がここにあるって聞いて、取りに来たんだけど……思ったよりも上にあったから、そよかはさとるを呼びに行ってて──」
「それなら悟が来るまで待っていれば良かったのに」
「ぎりぎり取れると思ったんだもん!」
「はいはい。じゃあ私が支えるから段ボールごとじゃなくて、中のものだけを取り出すといいんじゃないかな」
せいらの脇腹を両手で掴んで持ち上げる。華奢で軽いなと感心した。
「やったー! とれたよー!」
ふわふわとした金色の髪から甘い香りがする。シャンプーの香りかな? いい香りだなんて思ったらいけない気がして、つい呼吸を止めてしまう。
「みてみてー!」
身体の向きを変えて見せようとしてくれるのは嬉しいが、彼女の脇腹を持つ手に力が入る。
「良かった」
「……はやくおろして」
急にせいらは絞り出すような声を出してきた。
「どうした?」
「なんかくすぐったいし……恥ずかしくなっちゃった」
頬を赤らめるせいら──そんな表情するんだ。つられそうになって視線を外す。
体育館、バスケットボールをもて遊びながら悟は言った。
「しっかしさー、帳ってそんなに必要? パンピーからは見えないんだし──」
悟の視界にそよかが入ると、
「帳は必要だな! 原因不明の事件とか起こすべきじゃねぇわ!」
後で頭の毛をむしられるとでも思ったのか、発言をあっさり撤回した。
「そうだな。呪霊を生み出させないためには人々の心の平穏を守らなければ」
ゆっくりとドリブルをして近付きゴールを決める。
「呪術は非呪術師を守るためにある」
「──それだけじゃないよー」
バスケットボールをせいらが手にする。低い位置でのドリブルは手が出しづらい。
「呪術は呪術師も守るためにあるんだよ」
スピード、柔軟性、彼女は前衛として戦えるアタッカーだ。ボールで遊ぶ猫のような素早さでゴールの近くに優しくボールを誘導した。
「──ッ」
それはそうだ。私たちはただ犠牲になっているわけではない。
「世界を守るヒーローだって? でもさー俺、そういう自己犠牲嫌いなんだよね」
「悟、ならあなたの力はなんのためにあると思うの?」
硝子と並んで体育館の壁の前にいたそよかが声を上げる。
「俺の力は俺のためにあるんだよ。呪術に理由とか責任を乗っけんのはさ、それこそ弱者がやることだろ」
「そう。なら、近い内にあなたと私たちはさよならね」
「なんでだよ!」
「この世界には様々な呪霊がいるわ。ある日、私やせいらが危機に瀕してもあなたは助けてくれないでしょう?」
「お前たちは俺の──いや、助けないなんて──」
「そういう積み重ねなのよ。それに、得意なこと不得意なことは人によって違うわ。私たちは呪霊を祓うことが出来るから呪霊を祓う。その他の出来ないことを助けてもらっているのだから──」
悟はそよかに言い返せず、もやもやした様子だ。硝子がせいらとそよかを手招きして、何かを話すと一緒に体育館から出ていく。出て行く直前に硝子はちらりと私に目配せをした。
「悟、あの二人は君のなんだ?」
「なんだってなんだよ。別になんでもねーよ」
「友人にしては距離が近いんじゃないか?」
「仕方ねーだろ、片方だけ相手してっともう片方が寂しがるんだから──羨ましいのかぁ? 傑ちゃん」
聞き慣れない呼び方に悟のイライラが透けて見える。
「少し外で話そうか?」
「お前も寂しんぼかよ。一人で行けよ」
私と悟のピリピリとした空気を、体育館の扉を夜蛾先生が勢いよく開けて終わらせてくれた。
●8
あの人の声が好きだった。時に優しく、時に厳しく俺に物事を教えてくれた。
あの人の手が好きだった。ふわりと頭を撫でられる時も、手を繋いだ時のあたたかさも。
あの人の香りが好きだった。どこか懐かしさを感じた香り、抱きしめられた時はとても嬉しかった。
──その人はもういない。
別れ際に誰かを探す旅の途中で、たまたま俺と出会ったんだと教えてくれた。
『あなたはもう大丈夫』
そう言ってくれたけど、納得なんて出来るわけがない。
『嫌だ。
──行くなよ! ずっと俺のそばにいろ!』
その人は困った様子で微笑む。
『……なら俺が一緒に行く! それなら文句ないだろ!』
『だからそれは、何度も説明したでしょ?』
『この世界の意味なんて──』
俺はあの時、なんて言ったんだっけ。その人との記憶は突然途切れ、今はその人がどんな姿をしていたのかも、好きだったはずの声も思い出せない。
「悟、人の後頭部に穴を開けるつもりなの? 凝視するにもほどがあるわ」
前を歩くそよかがそう言って振り返った。
「なになにー? 虫さんでもとまってる?」
せいらが俺の視線を追いかけようと、俺とそよかを交互に見る。
「なんもいねーよ。たまたまだよ。いちいち気にすんな」
そよかせいらと一緒にいると、どうもその忘れかけた記憶を刺激するようで妙にイライラする。ただそよかの物言いが気に入らないだけだと、思うようにしているが──。
「共同任務楽しみだね!」
せいらは俺たちを見回して楽しそうに言う。星漿体の護衛と抹消。それが俺たちに託された任務だ。
「小学生の遠足じゃねぇんだぞ!」
「悟、どうした?」
「なんでもねぇよ」
「早く行こう! 素性がばれてるって、不安だと思うし!」
俺と傑の腕を引いて、せいらが先を急ぐ。
「──君は優しいな」
「ならお前たちは先に行けよ。俺たちは周囲を警戒しておいてやるから」
「そうだな、そうしよう。行こうかせいら」
「うん!」
傑とせいらの二人は走って星漿体と合流する予定のホテルの一室へと向かった。
「何を勝手に決めているの?」
後ろからそよかの圧を感じる。
「何か文句あるのか?」
「別に、悟にしては良い判断だったと思うわ。きなさい」
そよかが俺の手を引いて歩き出す。向かった先はベンチだ。
「座って待つつもりか」
「バカね。それだけじゃないわ」
先にそよかがベンチに座った。
「ほら、早く」
自分の腿のあたりを両手でぽんぽんしている。
「……なんだよ」
なんとなくわかったが、つい警戒してしまう。
「私が膝枕してあげるから、あなたは六眼に集中しなさいってことよ」
まさかのご褒美タイム!?
「やれやれ──」
まぁわかってたけどなと尊大に寝転がり、そよかの膝枕に甘んじる。そして気付いた。
「なによ?」
「お前、せいらほどじゃないが結構胸が大きくなってるな!」
俺の額にそよかの拳が振り下ろされる。ゴッと鈍い音がした。
●9
ホテルに入る直前、せいらが急に立ち止まった。
「どうした?」
「すぐる! 髪の毛にゴミがついてるよ? かがんでー?」
なにもこんな時にと思ったが、少し屈んでみせる。せいらの手が頭に触れた。
『尾行されてるよ。このまま死角に入って帳を下ろそう』
「とれたみたい」
にこりとせいらが微笑む。
『腹話術だよ。口の動きで話してる内容がバレちゃうからね』
「さ、早くいこ!」
なるほど、既に高専の動きが読まれていたか──せいらとの初めての任務が、こんなにも心強いものになるとは思っていなかった。
携帯が着信する──相手は悟だ。
あぁ、いるな。俺たちの近くに一人、傑たちの側に一人。ついでに遠巻きに俺たちを気にしてる奴らがちらほら。ホテル内に爆破系の呪霊が数えきれないほど徘徊してるな。
傑の携帯に発信すると直ぐに繋がる。
「──傑、聞こえるか?」
『あぁ、聞こえるよ』
六眼で見た内容を知らせた。
『ちょうどせいらにも教えてもらったところだ』
ちらりと俺を膝枕しているそよかを見る。両目を閉じて意識を集中していた。硝子ほどではないが、反転術式の基礎が出来ていると感心させるほどの腕前だ。
「そっちはそっち、こっちはこっちで片付ける。OK?」
『あぁ、問題ない。スマートにいこう』
悟との通話を終えて、携帯をしまいながら移動する。
「お待たせ」
曲がり角で待っていたせいらと合流した。手短に状況を伝える。
「帳を下ろそうと思うけどいい?」
「そうだね。そうしよう」
せいらがふわりと両手を広げて術式詠唱をはじめた。
「帳よ、帳ここにおいで。穢れを祓うわたしを見守って」
まるで子供にお伽話でも聞かせるように、せいらの優しい声が耳に届く。初めて聞く帳の術式詠唱だった。
ぽんと小気味良い音を立てて一羽の鴉が出現する。
「カァ! せいらサマ! オヨビデスカ?」
差し出したせいらの腕にとまる鴉。
「クロちゃん! 少し離れたところで、このあたりに大きめの帳をお願いね」
「カシコマリマシタ!」
バサバサと翼を広げて鴉が飛び立ち。窓から外に羽ばたいていった。
「さ、行こ!」
「あ、あぁ。──今のは?」
「そよかの作った試作中の帳の術式だよ。夜蛾先生が実地で使っていいって」
にこにことせいらは答える。ほどなくして周囲は帳に包まれた。
「驚いたな帳の発生起点と発動タイミングをあえてずらしたのか」
──さっきまでこちらを窺っていた気配が遠ざかっていくのを感じる。私たちの向かう先を誤認出来たかもしれない。ともあれ、急いだ方がいいな──歩みを早めるが、せいらは自然に合わせてくれた。
「そうなの。尾行してる人もきっと驚いてるよね」
「そよかのアイデアなのかい?」
「うん? あ、そういえば今ね、高専に臨時の先生が来てて。その人が、いろいろ面白いこと試してるんだ──そよかとよく遊びに行ってるんだよ。美味しいおはぎとかお茶もご馳走してくれてさ〜」
「──それは初耳だ」
詳しく聞き返そうとしたところで、
「あ、この部屋だよね?」
せいらが口を開く。部屋番号を確認する。間違いない。
部屋に入るとメイド姿の女性に案内される。
「──随分時間がかかったのう……いかにも妾が星漿体、天内理子じゃ。護衛の任、心して務めよ!」
机の上に片足をのせて胸を張る女子高生。
なぜだかせいらは「わー」と喜んでる。何か指摘するのも馬鹿らしくなって、自己紹介をした。
「私は夏油傑、こちらは」
「せいらだよ!」
「ふむ。夏油傑に夏油せいらか、その歳で結婚? 兄妹か何かなのか?」
「ち、ちがうよー!」
せいらが真っ赤になって訂正している。何か微笑ましくて、急がないとと頭の片隅で思いつつふと微笑んでしまった。
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