な!サンタおったやろ!
「俺、今日学校でコウタとケンカした」
かあちゃんが仕事から帰るのを待ち構えていた俺は、洗面所で手を洗うかあちゃんを追いかけてそう言った。
「めずらしいねえ。どないしたん?」
かあちゃんがうがいをする横で、俺は一気に話し始めた。
終業式の今日。校庭で校長先生の長めの話を聞いた後、俺たちはぞろぞろと下足箱が並ぶ出入り口に入った。上履きに履き替え、教室に戻ろうとしていた。
俺の教室4年3組は、3階建て校舎の3階。さらに階段の一番奥だ。かあちゃんは、参観や懇談で俺の教室に行った日は、「入り口から遠いわぁ」「はよ6年になって、1階になってほしいわ」と毎回言っている。
「クリスマスプレゼントなにもらうの?」
階段を上がっていたら、あちこちでそんな声が聞こえてくる。親やおじいちゃん、おばあちゃんにこれをもらう、私はあれをお願いしたんだって話の中で、
「リョウは何もらうん?」って聞かれた。俺は、なぜかそのとき、こう答えた。
「俺んちには毎年サンタがくる」
一瞬周りが静かになった。
あれ? なんか、へんなこと言うたかな。
そう思ったすぐ後に、隣にいたコウタがでっかい声でこう言った。
「サンタなんかおらへんし。サンタは、お父さんかお母さんやねんで」
俺はそれを聞いて、ムカついた。猛烈にムカついたが、なぜかちょっとだけ恥ずかしくなった。
「いるしー!サンタほんまにいてるし!」
俺は言い返した。なんだか嘘つきと言われた気がして、腹が立った。でも、俺も心の中でめっちゃ小さく、コウタと同じことを思っていた。
それをつつかれた気がして、余計にムカついた。
「サンタなんて、おらへんし!」
「いてる! 俺んちには来るんや!」
「ほな、証拠見せてみろや!」
証拠? そんなん、どないして見せるねん。
「おる!おるんや!お前んちにサンタこーへんだけやろ」
そういうと、コウタがうつむいてしまった。
おれは、ちょっと言い過ぎたかなと思った。
そんな俺たちをみて、担任の小泉先生が笑いながら言った。
あんたら、ほんまに仲ええなあ。
ケンカしてるのに、仲ええわけないやん。でも、先生のそのことばで、俺たちの「サンタいる いない」ケンカは一旦おさまった。
「あんたら、仲ええなぁ」
喧嘩した話をしたのに、かあちゃんは笑いながらそう言って、毎年クリスマスイブに焼いてくれるチーズケーキの用意を始めた。
先生もかあちゃんも、なんでおんなじこと言うんやろ?
俺はよくわからなかった。
🎅🎅🎅
俺が小さい時から、俺んちには12月24日の夜中にサンタが来た。かあちゃんと父ちゃんがリコンして、かあちゃんと俺の二人家族になってからも、サンタは毎年来てくれた。
プレゼントをくれるのは、サンタだけではない。父ちゃんと、かあちゃんの父ちゃんであるじいちゃん。3人から毎年プレゼントをもらっている。
かあちゃんは、仕事の帰りにチキンを買って来てくれて、混ぜて焼くだけのチーズケーキを作ってくれる。
だから、かあちゃんからのプレゼントはない。俺も、かあちゃんにはプレゼントをねだったりしない。仕事と俺の世話で忙しいかあちゃんへの「気づかい」なのだ。
その代わり、12月になるとかあちゃんは
「サンタにあんたのプレゼントをリクエストするから、今年はなににするか決めといてや」
と言ってくる。
かあちゃんの話によると、父ちゃんやじいちゃんは俺にだけプレゼントを買えばいいが、サンタは世界中の子どもたちにプレゼントを用意するため、「ひとりいくらまで」と決まっているらしい。
それを「予算」と言うんだそうだ。
「予算」はその年によって変わるので、俺は毎年サンタに頼めないものは、じいちゃんに頼むことにしていた。
今年はちょっと予算が上がったらしく、「5,000円くらいのもんでもええらしいで」とかあちゃんが教えてくれた。
なので俺はサンタに新しいポケモンのゲームソフトをお願いすることにした。
🎅🎅🎅
コウタに「サンタはおる」と言ったものの、今年も来てくれるんかなとちょっと心配だった。
「サンタはいない、と口に出したら、もうそこでサンタは来なくなるよ」
と、かあちゃんは言っている。
俺はサンタはかあちゃんじゃないかと、心の中でめっちゃちょびっと思っている。口に.出したら来なくなるので俺は言わない。
そうだ。
言うてしまったら、新しいポケモンのゲームソフトがもらえない。冬休みゲームをするのが楽しみなのに、それは困る。絶対いやだ。
「ごはんやで」
かあちゃんに呼ばれて、俺はいつものようにお皿や箸をテーブルに出した。
かあちゃんが買ってきてくれたチキンと、いつのまにか作ってくれていた、野菜がいっぱい入ったミネストローネをお腹いっぱい食べた。
風呂に入って、チーズケーキを食べて、俺はすっかりご機嫌になっていた。去年と同じように、サンタは来てくれるって思えてきた。
かあちゃんにケーキを一切れもらって、皿にのせた。小さなフォークも添えてテーブルに置いた。
「サンタさん、今年もクリスマスのプレゼントありがとうございます。かあちゃんのケーキを置いておきます。めっちゃおいしいので、食べてください」
って、手紙を書き、ケーキが乗った皿の横に置いておいた。
なぜか、かあちゃんはうれしそうだった。俺は歯を磨き、寝る用意をして、かあちゃんより早く布団に入った。今年はプレゼントを置いてくれるサンタの姿を見て、コウタに「俺、サンタ見たぞ」と言うたるねんと思っていたが、いつのまにか寝てしまっていた。

翌朝起きたら、かあちゃんはもう起きていて、コーヒーを飲んでいた。俺は枕もとを見る。
あったー!
プレゼントだ!
赤いリボンをほどき、包装紙をびりびり破くと、ポケモンのゲームソフトの箱が現れた。
やったー!サンタさん、ありがとう!
そうだ。サンタはケーキ食べてくれたかな。
テーブルを見ると、俺がケーキを置いた皿が空になって残っていた。その横には白い封筒があった。表には
To Ryo
と書かれていた。
「サンタからの手紙みたいやね」って言いながら、かあちゃんが渡してくれた。封筒をあけると、英語でなにか書かれた便箋が1枚あった。
「これ、なんて書いてんの?」
俺はかあちゃんにその便箋を渡して、日本語に直して読んでもらった。
リョウへ
今年も1年おかあさんとふたり、よくがんばってきたね。リクエストのプレゼントを贈ります。
「サンタはいてる。」そう信じてくれてありがとう。キミがそう思ってくれているかぎり、また来年も来るからね。
メリークリスマス!
サンタクロースより
すげー! サンタからの手紙や!
仕事に行くかあちゃんを見送り、俺は何度もその手紙を見た。そうだ。今日はコウタたちと校庭でサッカーしようと約束してたんだ。あいつが言った『証拠』を見せるぞ。
コウタやみんなが驚く顔を早く見たくて、おれはいつもの学校までの道を走った。サンタからの手紙を見せるとき、こう言うてやろ。
な! サンタおったやろ!
森野きのこさんの『アドベントカレンダー』企画に参加しています。
参加表明したときは、「私が書いて投稿する日の前に六本木ヒルズ行くし、クリスマスマーケットやきれいなクリスマスツリーの写真を撮って、短めの文章添えよう」
なんて思っていたのですが。
六本木ヒルズでクリスマスツリーに出会えず。
クリスマスっぽい写真もほとんど撮れず。

さて、どうしようかと考えていたとき、昔書いたこちらのnoteを思い出しました。
そのままリライトするのではなく、今回、主人公を息子にして、フィクション味をまぶして、『ショートショート小説』っぽく仕上げてみました。
フィクションも、小説っぽいnote書いたのも初めてですが、書いている間、楽しかった!
きのこさん、素敵な機会をありがとうございました。
引き続き、みなさんのアドベントカレンダーnote、お楽しみください。
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美味しいはしあわせ「うまうまごはん研究家」わたなべますみです。毎日食べても食べ飽きないおばんざい、おかんのごはん、季節の野菜をつかったごはん、そしてスパイスを使ったカレーやインド料理を日々作りつつ、さらなるうまうまを目指しております。