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「BtoBマーケティング大賞2026」受賞の裏側-市場構造から考えるBtoBマーケの設計思想

「リード数は増えても、会社の収益につながらない」

インバウンドリードを増やし、インサイドセールスに渡し、新規掲載社数を伸ばす。その繰り返しでトップラインは確かに成長していました。でも、気がつくと収益構造は少しずつ悪化していたのです。

この記事では、タイミーのBtoB事業においてマーケティング戦略を「売上規模の最大化」から「LTV/CACの最大化」へと転換した経緯と、その結果LTV/CACを前年比2倍以上に改善するまでの取り組みをお伝えします。同じような課題感を持つBtoBマーケターの方に、何かヒントになれば幸いです。

この記事は、日経クロストレンド主催「BtoBマーケティング大賞」で受賞した取り組みをもとに書いています。私自身は、複数のBtoB事業のマーケティングに関わってきましたが、今回の取り組みは特にマーケティングの本質を問い直すきっかけになったものでした。受賞の裏側にある思考と試行錯誤を、できるだけ具体的にお伝えできればと思います。


なぜ「売れているのに儲からない」状態になったか

タイミーは、ワーカーさん(toC)の「働きたい時間」とクライアントさん(toB)の「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービスを展開しています。

その中でBtoB側のマーケティングでは、デジタル広告を中心としたインバウンド施策でリードを獲得し、インサイドセールスが商談・クロージングするザ・モデル型の体制を敷いていました。この構造自体は機能しており、新規掲載社数は順調に伸びていました。

ところが、ある時点で気づいたことがあります。

インバウンドでは、市場構造にあわせて8割以上がSMB(中小企業)となるという事実です。個人事業主まで含めると、その比率はさらに高まります。SMBはそもそも求人ニーズの規模が小さく、利用頻度も限られる。つまり、インバウンドで広く集めれば集めるほど、LTVの低い顧客が流入しやすい構造になっていたのです。

結果として起きていたことは、

  • 新規獲得数は増えているが、1社あたりの生涯売上(LTV)は低い

  • インサイドセールスのリソースも、低LTV顧客のフォローに追われてしまう

トップラインの成長を追い続けた結果、収益構造を自ら圧迫していた——これが当時の実態でした。


利益最大化への戦略転換の決断

この構造に気づいた私は、戦略目的そのものを見直す必要があると判断し、マーケティング方針を転換しました。

この戦略にあわせて、取り組み方針も再整理しました。

「売上を追うのをやめる」という判断は、社内的にも勇気のいる転換でした。短期的には新規掲載社数が減少するリスクがある。それでも、事業を健全化することが正しいと信じて動きました。


[打ち手①]デジタル広告の効率化でCACを改善させる

まず着手したのは、CAC改善に向けて獲得導線での無駄を排除することです。

施策1:インバウンドリードの獲得チャネルの見直し

タイミーはtoCとtoBでブランド名が共通のため、「タイミー」という指名検索の中には、ワーカーとしての検索とビジネス利用の検索が混在しています。当然ながら、BtoBマーケティングとして広告費をかけるべきは後者だけです。

そこで、指名検索の中でも「toBモチベーションの高い検索キーワード」を精査し直しました。企業向けの利用を明確に示すキーワードに絞り込み、それ以外はオーガニック流入に移管する方針をとったのです。

ただし、切り替えは慎重に進める必要がありました。広告を削りすぎればリード数(=売上)に影響する。そのため、何度もA/Bテストを繰り返しながら段階的に移管を進め、最終的には広告コストを半減しながらも獲得数は微減にとどめることに成功しました。

施策2:エントリーフォームでの個人誤流入の抑止

あわせて取り組んだのが、エントリーフォーム最適化(EFO)です。共通ブランド名であるが故、どうしてもワーカーさんの流入が発生してしまいます。そのため、プロダクト本部と連携し、申し込みフォームの段階でワーカーさんと法人を振り分ける仕組みを構築しました。
結果として、インサイドセールスに渡るリードの法人比率が向上し、チームがLTVの高い企業に集中してフォローできる体制が整いました。


[打ち手②]高LTV企業への能動的開拓でLTVを引き上げる

インバウンドリードの獲得効率を高める一方で、もう一本の柱として取り組んだのが、アウトバウンド施策です。

外部データを使って未開拓の残マーケットを分析したところ、中堅の物流企業への掲載が進んでいないことが判明しました。物流業界は物量の繁閑の差が大きく、スポット人材の需要が高い顧客層です。そこに、BDR部隊と連携しながら戦略的に開拓を進めることにしました。

このとき私が意識したのは、「マーケ施策だけで完結しようとしない」という考え方です。メルマガを送るだけでは、直接的な売上効果は見込めません。そのためマーケティングの役割を、営業が売上を上げやすい状態をつくることと定義し、複数の施策を組み合わせました。

施策1:箱型DMで「受付の壁」を突破する

これまで架電をしても受付で止められていた企業に対し、開封率の高い箱型DMを送付しました。目に留まりやすい形状を選ぶことで、リーチ率を高め、その後の架電でDMを認知してもらいやすくする狙いです。

結果として、架電時のDM認知率が約60%に達し、これまで接点が持てなかった企業との新規接点構築につながりました。
受付突破が難しい企業群にも関わらず、結果として数十社の初回掲載獲得という成果につながりました。

施策2:「閲覧トリガー通知」でアポ獲得率の向上

見込み顧客が情報収集しているタイミングに合わせてアプローチするために、メール配信後に受信者が資料を閲覧した瞬間、担当営業にSlack通知が届く仕組みを構築しました。

「今まさに興味を持っている」タイミングで営業が即時連絡できるため、アポイント獲得率が2.5倍に向上しました。マーケと営業が連携することで、タイミングの「ズレ」をなくした好例です。

施策3:Salesforceデータエンハンスで「隠れ注力企業」を発掘

停滞リードを分析したところ、企業情報が未紐づけの状態で放置されているケースが多数ありました。企業名や規模が分からないため、営業がフォローすべきかの判断ができず、注力企業であるにもかかわらずそのままになっていたのです。

Salesforceの停滞リードに外部企業属性を付与することで、営業が優先度をつけてフォローできる状態にしました。これにより、これまで埋もれていたリードからの新規掲載獲得が増加しました。


結果:LTV/CAC 前年比2倍超、生涯売上高も増加

一連の取り組みを約6ヶ月〜1年かけて実施した結果、以下の成果を達成しました。

  • LTV/CAC:前年比2倍以上に改善

  • 広告コスト:約半減(獲得数は微減に止める)

  • 新規掲載社数:高LTV顧客が増加

新規掲載社数が減ることへの懸念はありましたが、「数ではなく質」に転換したことで、事業全体の収益構造が改善するだけに留まらず、生涯売上も前年を上回る水準に到達しました。


まとめ:マーケターが問うべきは「どのレバーを改善すべきなのか」

この取り組みを通じて、改めて実感したことがあります。

マーケティングの施策そのものより先に、「どのレバーを改善するか」という戦略目的の設定が最も重要だということです。

リード数を最大化するのか、新規顧客数を最大化するのか、LTV/CACを最大化するのか etc…
この問いに答えずに施策を積み上げると、個々の施策は成立していても、事業として目指す方向からずれていきます。

市場の構造を正しく把握し、自社が「どこで・誰に・どう勝つか」を明確にした上で施策を組み立てる。当たり前に聞こえるかもしれませんが、日々の業務に追われる中でこそ、立ち止まって考える価値があることだと実感しました。


✍️ あとがき

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

タイミーのマーケティング本部でマネージャーをしている増尾です。マーケティング本部では、一緒に事業を前に進める仲間を募集しています!少しでも興味を持っていただけたら、お気軽にご連絡ください 🙌

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