見出し画像

【アジア横断&中東縦断の旅 2004】 第17話 パキスタン

2004年10月7日 旅立ちから、現在 278 日目

日本を出てアジアを西に移動していくと様々な宗教に出会うことになる。
その中で土着宗教、新興宗教などの少数派を除いて、アジアを宗教的に大まかに分類すると、インドより東は仏教圏、西はイスラム教圏(そしてインドは全てが混ざり合う混沌の国)と言えるかもしれない。
もちろん今まで通ってきたインド以東の国でもイスラム教は存在していたが、それらの国においてはあくまで少数派だった。
だが、いよいよインド西隣の国パキスタンから先は本格的なイスラム教国家が続く。

ビザ取得に奔走したが、ようやくそのイスラム教圏の入り口パキスタンに無事入国した。
旅を始めて10ヵ月も経つと旅の日々が日常になり新鮮な気持ちがやや薄れてくるが、新しい文化圏に足を踏み入れて久しぶりにどきどきしていた。

パキスタン人の多くはシャルワールカミーズと呼ばれる裾の長い民族衣装を着ていたので「郷に入りては郷に従え」と思い、早速服屋で何枚か試着をして気に入った色の一着を購入した。
服屋の店主から「お前はパキスタン人みたいだ」と言われたが、確かに客観的に見ても、長旅で髭も長く伸びて浅黒く日焼けした私の姿はとても日本人には見えなかった。

翌日から毎日その服を着て街を歩いた。
「どこから来た」
『日本だ』
「そうか。日本はいい国だ。ようこそパキスタンへ。アラーのご加護を。」
何回そんなやり取りをしただろう。皆とても好意的だった。
イスラム教では「旅人には親切にするように」という教えがあるらしいが、それ以上に彼らの控えめながらも素朴で純粋な人柄の良さを感じた。

気軽に声をかけてくれる街の人々
パキスタン名物のギンギラトラック
好きが高じて工場まで見学に行った
なんと木造だった


当初、私のイスラム教国に対する知識は乏しく、テロや紛争が頻繁に起こる地域といった、新聞やテレビなどから見聞きしただけのネガティブな印象しか持っていなかった。
しかし、この旅で実際にいくつものイスラム教国を旅してみて、確かにそのような負の一面は完全に否定できないものの、それはあくまでも物事のほんの一部のみで、それを補って余りある魅力が満ち溢れていることを知った。
情報に惑わされずに自分の目で見て自分の頭で考えることの大切さを改めて強く感じた。


パキスタンの北部山岳地帯にフンザと呼ばれる地域がある。
この地域には渓谷沿いに自然豊かな村々が点在している。
この辺りの村は、春になると杏の花でピンク色に埋め尽くされ、夏は涼しく、秋には果実がたわわに実る。

私が行った時期は秋だったので村中にリンゴがたくさん実っていた。
目前にはエベレストに次ぐ標高世界第二位の山「K2」を擁するカラコルム山脈が迫るため、その雪山や氷河と、渓谷の緑や紅葉との色鮮やかなコントラストの景観が、この世のものとは思えない程美しかった。
そして何よりそこに住む人々は本当に親切な人が多かった。

カラコルム山脈を望む


ある日、村の細道を散歩していると庭で日光浴をしている老人たちから声がかかり、家へ寄っていきなさいと言われた。

日光浴をしている老人たち


その言葉に甘えて家に上らせてもらうと、お茶とリンゴを出してくれた。
老人は私に「よくこんな所まで来たな。この村はどうだ。」と聞いた。
「ここは本当に素晴らしい所です。私は昔からここへ来るのが夢でした。」と答えた。
老人は満面の笑みでゆっくりとうなずいてお茶のおかわりを出してくれた。

私たちは何語で会話していたのだろう。
老人は英語も日本語も解さない。
当然私も現地の言葉はわからない。
お互い言葉はほとんど通じないはずなのに、私たちはなぜか意思の疎通が図れていた。
老人宅にてのんびりとした時間を過ごさせてもらった後、帰りがけにリンゴの土産をもらった。
宿に戻るとドミトリーにはリンゴが溢れていた。
聞くと、他の旅人たちも皆、散歩途中で同様にさまざまな家に招かれてリンゴの土産をもらってきたとのこと。
この村の人たちはなぜ皆ここまで親切にしてくれるのかというのが、その頃の宿での一番の話題だった。

フンザの子供たち


このようなため、フンザは世界を巡る旅人たちから、「理想郷」、「桃源郷」などと呼ばれ非常に人気の高い場所だった。
そして、ここはあの「風の谷のナウシカ」の「風の谷」のモデルになった場所だとも言われていたが、目の前に広がる山と谷と緑の雄大な風景は、確かに物語のモデルにしたくなるような程に美しく素晴らしい場所だった。

フンザの絶景


「旅をする意味」を小難しく考えたりしたこともあったが、心をニュートラルにして、ただ純粋に感動したり楽しんだりすればいいのだと、ここフンザで教えられた気がした。


続く
 ↓

いいなと思ったら応援しよう!

mata ありがとうございます。励みになります。

この記事が参加している募集