●美術館の名作椅子#10●横浜美術館
横浜美術館
設計:丹下 健三
開館:1989年
・Barcelona Stool


デザイナー:ミース・ファン・デル・ローエ
発表:1929年
メーカー:Knoll
価格:¥757,900〜(2025年現在)
ミース・ファン・デル・ローエは、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に近代建築三大巨匠の一人に数えられる。
1929年のバルセロナ万博にてスペイン国王夫妻を迎えるためにドイツパビリオンの設計を依頼されたミースが建物ともにデザインした、近代デザイン史においても最も重要な椅子のひとつである名作バルセロナチェアとともに置かれることの多いスツール。
世に出回るバルセロナシリーズはブラックレザーの品が多いが、横浜美術館のものはあまり見かけないグレーのレザー。
東京国立博物館本館にはバルセロナシリーズのデイベッドが複数台設置されているが、構造はそれらと同様にシートの下にレザーバンドが張ってある。
レザーバンドなので使っているうちに伸びてくるのは避けられないし、劣化するとヒビが入って最悪切れたりと旧時代の仕様だが、デザインのアクセントにもなっているし、ある意味このシリーズのアイデンティティでもあるので改良するわけにもいかないか。
なおバルセロナシリーズの正規ライセンシーであるKnollの日本法人だったKnoll Japanは2025年3月31日で解散し、Knoll製品の国内販売はinter officeが引き継ぐことになった。
・Suzanne Bench

デザイナー:高浜 和秀
発表:1965年
メーカー:Knoll
横浜美術館がメインで用いているベンチ。
館内に多数設置されている。
取り立てて何がどうというデザインではないが座面は広くフラットで座りやすい。
高浜氏について詳しく存じ上げなかったので調べてみた。
イタリアで活躍された方だったのですね。

・model 591 Sculpture Chair


デザイナー:プレベン・ファブリシャス、ヨルゲン・カストホルム
発表:1964年
メーカー:Bo-ex
北欧デンマークの椅子。
メタル部は同じくデンマークのポール・ケアホルムを彷彿とさせる。
現在は廃盤か。参考までに ↓
・LAPIS Chair

デザイナー:シルッカ & ティモ・サールニオ
発表:1996年
メーカー:カンディハウス
参考価格:¥44,000(2022年)
「国際家具デザインコンペティション旭川1996」の受賞作。
3つのパーツからなるシンプルな構造で、軽量なうえスタッキングも可能。
カンディハウス公式の2022年カタログの中には見つけたが、最新のカタログには掲載されていなかったのでストアに確認してみたところ現在は廃番になってしまったとのこと。残念。

・03 Chair


デザイナー:マールテン・ヴァン・セーヴェレン
発表:1998年
メーカー:Vitra
価格:¥89,100(2025年現在)
21_21 DESIGN SIGHTや他美術館でも監視員用椅子として使用されている。
背もたれから座面の素材は程よく弾力があって気持ち良い。
歴史に残る名作椅子というタイプの椅子ではないが、名バイプレーヤーといったところだろうか。
・オリジナル什器




デザイナー:乾 久美子
発表:2025年
メーカー:ニュウファニチャーワークス
美術館の大規模リニューアルにあたり、空間構成・サイン計画を担当した乾久美子による一連のオリジナル什器。
建物に使用されている御影石からサンプリングした色を用いているとのこと。

什器の製作にあたっては、さまざまな障がいのある方たちと共にインクルーシブワークショップを実施しました。原寸大のモックアップを試しながら知見を得るという貴重な機会がなければ生まれなかった家具もあります。
・CASTOR Chair


デザイナー:BIG-GAME
発表:2009年
メーカー:KNS
価格:¥42,900(2025年現在)
¥41,250(Kids)
KNS(Karimoku New Standard)はカリモク家具による2009年設立の新ブランド。
広葉樹のサスティナブルな活用、森林保全や林業地域の活性化といった日本の森が抱える問題に対し、木製家具メーカーとしてどうあるべきかというミッションを掲げている。
KNSのブランドアイコンモデルとして新時代を担うこの椅子をリニューアルに合わせて大量に採用することで、横浜美術館としてのメッセージを込めているような気がした。
kidsモデルやアーム付きモデルもあり、テーブルやソファなどと共にKNSの中核を担うシリーズとして展開している。
・Eames Elephant

デザイナー:Charles & Ray Eames
発表:1945年
メーカー:Vitra
価格:¥46,200(2025年現在)
元々はプライウッド成型技術を用いて開発された木製だった。
素材をポリプロピレンに変えたモデルを復刻版として発売した後、現在ではスモールモデルや改良されたプライウッドモデルも販売している。

本来子供用ではあるが、オブジェとして置いて眺めるだけでも楽しめるのはさすがイームズ。
・まとめ
横浜美術館の椅子は現在廃番になっているものがいくつもあった。
歴史に残る名作椅子もあったがそれぞれの文脈はバラバラでいまいち選定基準がわからなかった。
せっかく数年間の休みを経たのだから、椅子や什器もこだわりを持って再選定し、横浜美術館としての何らかのストーリーやメッセージを盛り込めばよかったのに、と思う。
丹下健三も椅子をデザインしているが、横浜美術館の雰囲気とはニュアンスが違うか。
丹下健三の文脈で現在活躍している面々の中で椅子もやっている方の作品を選ぶとかすればストーリーが繋がると思うのだが。
もしくは横浜美術館に合うようなデザインを各人に新たに依頼してみるのも面白そうだ。
ところで以前あったはずの川久保怜(コム・デ・ギャルソン)の椅子はどこ行った?
ざっと探してみたけれど見つからなかった。
貴重な椅子なので処分してしまったということはないだろうが、今はバックヤードで休憩中だろうか。
次回訪れた時にもう一度探してみよう。
(以上、2024年記)
以下、大規模リニューアル後、2025年4月追記
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大規模リニューアル後に訪れると雰囲気は一変していた。
辺り一面にピンクがキーカラーとして用いられ、以前の重厚で厳かな雰囲気はかなり薄れていた。
多様性、インクルーシブ、ボーダーフリー、昨今何をやるにも必須のキーワードたちが盛りこまれている。
プレオープン時に「横浜美術館としての何らかのストーリーやメッセージを盛り込めばよかったのに」と記したが、今回のリニューアルではそれらのメッセージが強烈に押し出されていた。
だが、それらは普遍的に意識し取り組むべき事柄であるのはもちろん大前提なのだが、それをデザインの最重要事項として全面に押し出しているのに関しては個人的に疑問が残った。
丹下健三の重厚な建築に対してピンクの色合いはポップすぎるように感じ、場の調和が置き去りにされてコンセプトだけが先行してしまっているようにも思え、工業製品としてもチープな印象を受けた。
あくまでもプロダクトとしてアプローチする中で、結果としてそれらも達成されているという構図が望ましく、まずはモノとしての強さや美しさ、普遍性がないと一過性の流行りでもてはやされた後、そう遅くない時期に古臭くなってしまうのではないか、と考えてしまった。
何回か訪れるうちにいずれ見慣れるのだろうか。
ところでなぜ乾氏なのだろうと辿ってみたら、
乾久美子→青木淳→磯崎新→丹下健三!
なるほど、文脈が繋がった。
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