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【美術展2024#95】アレック・ソス 部屋についての部屋@東京都写真美術館

会期:2024年10月10日(木)〜2025年1月19日(日)

アレック・ソス(1969-、アメリカ・ミネソタ州生まれ)は、国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした、写真で物語を紡ぎだすような作品で、世界的に高い評価を受けてきました。

本展「部屋についての部屋(A Room of Rooms)」には、初めて出版されたシリーズであり、初期を代表する〈Sleeping by the Mississippi〉から、今秋刊行の最新作〈Advice for Young Artists〉まで出品されます。30年に及ぶソスの歩みを単に振り返るのではなく、選ばれた出品作品のほぼすべてが屋内で撮影されているように、「部屋」をテーマにこれまでのソスの作品を編み直す、当館独自の試みとなります。
〜中略〜
「ポートレイトや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」と作家は述べています。ソスの作品に登場するさまざまな部屋や、その空間にたたずむ人々に意識を向けることで、果たして何が見えてくるのか。展覧会と写真集共に多くの支持を得る作家の表現の魅力を探ります。

東京都写真美術館


秋に「TOPコレクション見ることの重奏」で訪れた東京都写真美術館。
前回は車でガーデンプレイスの駐車場に直接乗りつけたが、今回は天気が良かったので東京都庭園美術館から歩いてみた
高級住宅街を突っ切りながらの初めて歩く道のりになんだかわくわくしてしまった。

着いた

アレック・ソスは「マグナム・フォト」の正会員なのだが、マグナム・フォトといえばロバート・キャパやアンリ・カルティエ=ブレッソンが思い浮かぶ。
長いこと「マグナム・フォト」は報道写真家集団という認識だったのだが、それはやはり私の中でロバート・キャパのイメージが強すぎたからだろう。


本展は今までのアレック・ソスの作品群の中から部屋にまつわる写真を用いてこれまでのソスの作品を編み直すということがテーマだそうだ。


Room1

本展は似たような広さの6つの部屋で構成され、最初の部屋には〈Sleeping by the Mississippi〉を中心とした初期のカラー作品が展示されている。2004年に作家初の写真集として刊行されたシリーズ〈Sleeping by the Mississippi〉では、ミネソタ州北部のイタスカ湖を源流とし、メキシコ湾へと注ぐ、全長3,780キロメートルのミシシッピ川の流域を、1999年から2002年に欠けて8×10インチ判のフィルムカメラで撮影している。
〈Sleeping by the Mississippi〉では、カメラのセッティングを行っている間に、被写体となる人物に自身の「夢」を書いてもらっている。夢の内容は「できるだけ長生きをすること」だったり、「パイロットになるための学校を自分で経営すること」だったり十人十色だ。多くの場合、写された人々は画面の中央でレンズをまっすぐ見返している。凛とした表情は背景に埋もれることがなく、風景と人物がゆるやかにつながっていく。

展覧会ハンドアウトより
〈Sleeping by the Mississippi〉より

主不在の部屋。存在は感じる。

〈Sleeping by the Mississippi〉より

壁に貼られたキング牧師の写真が未だ叶わぬ彼の「夢」を静かに主張している。
シリーズのテーマでもある「夢」が重なる。


Room2

2番目の部屋では、ソスが影響を受けた写真家たちのポートレイトや〈Looking for Love〉をはじめとする初期のモノクロ作品、〈Sleepingby the Mississippi〉に続く初期の代表作である〈Niagara〉、2004年に中国の北京に滞在した際に、毛沢東(1893-197)の統治時代に作られた地下トンネルを写した作品などが展示されている。
〜中略〜
〈Niagara〉は〈Sleeping by the Mississippi〉と同じく、8×10インチ判のフィルムカメラで、2004年から2005年にかけて撮影された。
巨大なナイアガラ滝だけを写したのではなく、むしろ、滝の周りに広がる風景やそこに集まる人々に目を向けている。点在する少し古ぼけたモーテルのファサードや、がらんとした駐車場、モーテルの室内で撮影された旅行中のカップル、連れ子たちと共に家族だけでささやかな結婚式を挙げた夫掃など、風景に人間模様が織り込まれていく。

展覧会ハンドアウトより
ソスが影響を受けた写真家たちのポートレイト
毛沢東統治時代に作られた中国の地下トンネル
〈Niagara〉より

8×10インチ、いわゆる六切サイズの特大フィルムに焼き付けられる光景は、圧倒的な描写力でそこに存在するリアル以上のリアルなストーリーを描き出す。


Room4

4番目の部屋には、タイトルの通り、フランスのパリとアメリカのミネンタなどが舞台のファッション写真のシリーズ〈Paris/Minnesota〉と、ソスが新宿のパークハイアット東京に滞在したときに撮影された作品が展示されている。
〜中略〜
2015年、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』の「Voyages」と題した特集号の企画で、ソスは新宿のラグジュアリーホテル、パークハイアット東京に滞在した。
〜後略〜

展覧会ハンドアウトより
《Park Hyatt Hotel,Tokyo》 2015

今回のキービジュアル写真。
ホテルのガラスに映り込む自身を写した写真。
その写真作品にさらに別の展示作品が映り込む
しばらく見ていると様々なストーリーが交錯して不思議な感覚になり、なんだかそこまで含めての作品のようにも思えてきたりする

別の展示作品が映り込む


Room5

5番目の部屋では、本展が生まれるきっかけとなったシリーズ〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉が展示されている。アメリカの詩人、ウォレス・スティーヴンズ(1879-1955)の詩「灰色の部屋(Gray Room)」の一節からタイトルがとられた本作は、2019年に同名の写真集としてまとめられ、ソスのキャリアにおいて一つの転換点となった。
〈Sleeping by the Mississippi〉をはじめ、初期からソスはアメリカ国内を車で旅し、風景や出会った人々を大判カメラで撮影してきたが、2017年から2019年にかけて制作された 〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉では、そうしたロードトリップのスタイルではなく、舞踏家・振付家のアンナ・ハルプリン(1920-2021)や、小説家のハニヤ・ヤナギハラ(1974-)など世界各地に様々な人々を訪ね、その人が日々を過ごす部屋の中で、ポートレイトや個人的な持ち物を撮影した。
〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉では、静謐な空間で彼写体から醸し出される親密さが大きな魅力となっている。「どれだけ激しくあなたの心臓が鼓動しているのか知っている」というタイトルは、その瞬間を写し留めたソスの胸中だけではなく、展示室という一つの部屋の中で、作品と対時するわたしたちの心の内までをも言い表しているかのようである。

展覧会ハンドアウトより

写真の中に写真が写り込んでいたり、ガラス窓を通して外の風景が写されていたり、本が溢れかえっていたりと、部屋という空間や空気感そのものを写したような写真が続く。
部屋の主にピントが合ってなかったり、そもそも不在だったりするが、そうすることでそこに写っているものがより際立ち、逆に主の存在を強くしているようにも見え、新たな表現の広がりを感じた。

〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より
〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より

「部屋」はそこに存在している主のストーリーが多かれ少なかれ凝縮されてこそ「部屋」となりうるわけで、それが無ければ、そこはただの室内空間としての「場所」なのだな、なんて思う。

ふと今回の「部屋についての部屋」というタイトルを考える。
「部屋」を写した作品が展示されている「部屋についての場所」ではなく、あえて「部屋についての部屋」としている。
この美術館を訪れる鑑賞者一人ひとりがソスの「部屋」を通して各々のストーリーを各々の「印画紙」に投影し、そこに新しいストーリーを描き出すことで、この美術館という「場所」は私たちにとっての「部屋」となるのではないか、なんて妄想してみる。


Room6

6番目の部屋では、2018年から2021年にかけて制作された 〈A Pound of Pictures〉、そして、世界初公開となる新作〈Advice for Young Artists〉が展示されている。
〈A Pound of Pictures〉の1ポンドとは換算すると454グラムだ。写真の束が入った箱が大きなテーブルの上にいくつも置かれている様子を写した作品があるが、その一束がだいたい454グラムなのだろう。それらは昨今ではヴァナキュラー写真と総称されるような写真だが、色観せた名もなき一枚一枚の写真にも、撮影者がたしかに存在し、固有のストーリーがある。〈A Pound of Pictures〉でソスが試みているのは、そうした写真の本質を再確認するような作業である。
新作〈Advice for Young Artists〉はアメリカの美術学校を舞合に、2022年から2024年にかけて撮影された。全米各地の学校で学ぶ「若いアーティストたち」のポートレイトも含まれているが、このシリーズで際立っているのは、教室やスタジオなどに置かれたオブジェだ。もちろん、これまでのソスの作品にも、住人の日用品など物だけを写した作品は多くあるが、本作では物自体が主役になっていると言っても過言ではない。デッサン用の石像や静物、床に積み重ねられた本など、物の色や形、線が作り出すリズミカルな画面には、これまでのソスの作品にはなかったタイプのユーモアがある。

展覧会ハンドアウトより
〈A Pound of Pictures〉より


アメリカの美術学校を巡った最新シリーズ。

〈Advice for Young Artists〉より
〈Advice for Young Artists〉より
〈Advice for Young Artists〉より
右奥にソス本人が写る

私にとってはこのシリーズが一番リアリティを感じた。
石膏像やモチーフ室など、美大を目指していた自身の浪人時代を思い出し、写真に写る未来のアーティストを目指している学生たちにあの頃の自分を重ねた
それとともに下手したらその学生たちの親世代の年齢に差し掛かろうとしている今の自分が若い学生たちに何をアドバイスできるだろうか、と思いながら写真に映り込むソスに今の自分を重ねた

私はあの頃からどんなストーリーを積み重ねてきただろうか。
私はこれからどんなストーリーを描き出すことができるだろうか
そして、あの頃の仲間は今どうしているだろうか。

美術館を出た後、勢い余ってつい当時の仲間に「久々に忘年会でもやらな〜い?」なんて10年ぶりくらいに連絡をしてしまった



【美術館の名作椅子】↓


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