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今を生きる水戸の文化遺産

 建設から100年以上経過した茨城県水戸市泉町の旧三菱UFJ銀行水戸支店(旧川崎銀行水戸支店)が今月、複合施設「テツ・アートプラザ」に生まれ変わります。来年2月には美術館が開館し、水戸中心市街地のにぎわい創出や芸術に親しむきっかけづくりが期待されいています。近年、著名な建築家が建てた建築物など人々に親しまれた近現代の建造物の取り壊しが相次ぎ、メディアでも取り上げられています。このような状況を踏まえ、文化庁が現行制度では十分に保護が図られていない近現代の建造物の継承を図るため、その方策について検討を行っています。価値ある建造物を継承していくことは文化の発展に寄与するとともに、解体し新しく建てるよりも環境への負荷が少なく意義ある取組となります。今回は近現代の建造物を取り巻く現状や近現代の建造物の継承に関して学んでいきたいと思います。

近現代の建造物を取り巻く現状~相次ぐ解体及びその背景~

 第二次世界大戦により我が国のほとんどの都市が戦災を受けたが、戦後の混乱を経た後、復興と工業力の発展・充実によって国際的に注目を集める建築物が生まれるようになりました。こうした建築物の多くは都市や文化の中枢として建設され、戦後復興のシンボルとなってきました。なかには現在も改修を経て使い続けられているものも多く、人々の生活に身近なものとして親しまれています。また、著名な建築作品ではないものの、地域住民等に愛され現在も使い続けられている近現代の建造物も全国各地に存在しています。現在も使い続けられている建築物がある一方で、解体されてしまった建築物もありました。文化財保護法に基づく保護を受けていない建築物だけではなく、同法に基づく保護を受けている登録有形文化財の解体も後を絶たない状況になっています。解体が相次いでいる背景としては、建築物を消費財として捉える傾向が強く、取り壊し・建替えのサイクルが30~50年程度のショートスパンのサイクルで回っていることが挙げられます。これは戦禍で歴史的な景観が多く消滅し、私権が拡大した戦後において顕著となっています。また、経済的な負担の内情は建築物の所在地によって異りますが、都市部では主に取得費と相続税や固定資産税等の税が負担となっている一方、地方では主に改修費が負担となっていることから、古い建築物を改修するよりも新築する方が、手間がかからず経済的な優遇も多いと考えられていることも原因の一つとして挙げられます。そして、継承すべき建築物の価値・基準についての共通理解が現状では存在していないといった問題もあります。全ての建築物を残すことは非現実的であり、一定の建築物を維持・継承していくためには、その基準を示すとともに全体像を把握することが求められます。文化庁では、優れた建築物等の所在地・建設年・規模・構造・現況などを集約する近現代建造物緊急重点調査事業が平成27年度から実施されています。

建造物に係る文化財保護制度と課題

 文化財保護法に基づく文化財保護制度のうち、建造物単体の保護制度として有形文化財(国宝・重要文化財、登録有形文化財)や地区単位での建造物の保護制度として伝統的建造物群が存在をしています。

1・有形文化財
 有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定し、更に重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定してその保護を図っています。日常管理や保存修理について国庫補助があり、所有者等は、現状変更や保存に影響を及ぼす行為を行おうとする場合、文化庁長官の許可を得なければならないほか、滅失・き損・亡失・盗難等があった場合には届け出を義務化しています。また、文部科学大臣が保存及び活用の措置が特に必要とされる文化財を文化財登録原簿に登録する登録有形文化財も存在しています。平成8年の文化財保護法改正により創設され、届出制と指導・助言等を基本とする緩やかな保護措置を講じ、所有者等による文化財の自主的な保護を促すものとなっています。
2・伝統的建造物群
 伝統的建造物群保存地区の制度は昭和50年の文化財保護法改正により創設され、「周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの」と定義されています。市町村は伝統的建造物群保存地区を決定し、地区内の保存事業を計画的に進めるため保存条例に基づき保存活用計画を定め、国は市町村からの申出を受けて、我が国にとって価値が高いと判断したものを重要伝統的建造物群保存地区に選定しています。文化庁は、市町村が行う伝統的建造物群保存地区の保存・活用の取組や所有者等に対し、支援を行っています。

現行制度の課題

 ここまで見てきた現行制度について、近現代の建造物の継承の観点から指摘されている課題として、現行制度では経過年数が求められる点があります。登録有形文化財登録基準には「原則として建設後50年を経過」するものとの規定があり、建設後50年を経過していない建造物は将来的には文化財保護法の対象となり得るものであったとしても、同法に基づく保存等の措置はまされません。「建物というのは15年から20年で一度大規模改修、修繕がなされるのが通例で15年から20年ぐらいの段階で、その建物の歴史的価値がある、ないといったことが判断できるものに対しては、長期保存するための手続とか認定をしていく」、「30年を過ぎたあたりで応援できる制度が必要」といった指摘があります。また、登録有形文化財の所有者等への支援が少ないといったことが挙げられます。登録有形文化財の解体等の理由の1位が廃業・老朽化等(42.9%)、2位が相続・経済状況の悪化(27.2%)であり、過半数を経済的な事情が占めていることわかっています。税制優遇の拡大など登録有形文化財に対しての支援があれば保存のインセンティブになると考えられています。

おわりに

 街中を見渡してみると文化庁の保護にまで至っていないが、街の景観の中心となる建物が散見されます。これらの近現代の建造物の継承を図るためにどうしていくことが大事なのか、これらの建造物は市町村が行っている景観形成やまちづくりに直結することから、何らかの関与は想定される。既に市町村は様々な計画の策定を行っており、市町村の負担を増やさないような配慮が必要となってくる。また、住宅街にある建造物を活用しようとした場合、現在は都市計画法上、観光事業への活用が難しいくなっていることから継承計画と都市計画法に係る規制緩和の必要性も考えていかなければならない。そして、継承計画の柔軟性も重要となってきます。既存制度との整理を行いつつ近現代の建造物の継承に向けた新たな取組が実施されるのか、文化庁の今後の動向に注目するとともに、地方においては存続を望む有志団体等と地方自治体の間で協議が行われているところもあり、地方における近現代の建造物の継承の好事例となり得る動きについても注目をしていく必要があります。「テツ・アートプラザ」のように明治末期の風格と、戦災の生き証人となっているこの銀行建物がリニューアルすることで「今を生きる水戸の文化遺産」として、水戸中心市街地のにぎわい創出や芸術に親しむ地となることを期待しています。


近い将来水戸芸術館も同じような悩みを抱えることになるのだろうか…。

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