季節がめぐる声を聴く
日本には四季がある。
今年は暑くて「春夏夏秋冬」だったと言われることもあるが、まだ日本には四つの季節がある。
暖かくて、全ての動植物が目覚め、次の命をつなげる春。
温度が上がり、植物は立派に育って緑を生い茂らせる夏。
過ごしやすくなった気候の中で、冬支度を進める秋。
温度が下がり、寒さに負けないように着込んだり、気持ちを高めたりする冬。
こんなにいろんな季節がある国ってのはなかなかないらしい。
でも、実は稲作を生活の中心においていた日本人はさらに季節を細かく、二十四節気七十二候と区分をしていた。
つまり、かつての日本人は自然とともに生きていたからこそ、今の私たち以上に季節の声をよく聞いて暮らしていたのだ。
七十二候の言葉を見ると、それがよく感じられる。
例えばちょうど今の時期、
12/12〜15は『熊蟄穴(くまあなにちっす)』…熊が冬眠のために穴に籠る頃。
寒さがだんだんと厳しくなってきて、生き物たちが冬眠したり、陰に身を潜めたりと活動を抑える頃。
人間たちも冬に備えて支度を万全に整える頃。
山の奥で穴を掘る熊の姿が目に浮かぶ。
それを七十二個、自然の変化に合わせて言葉を重ねていったというのがとても素敵。
私が季節の声を聴くようになったきっかけは、学生時代。
私は茶道をやっていた。
茶道では常に様々な音を聞いていた。
静かな空間で、道具と畳が触れ合う音や、ぐつぐつと煮立つ湯の音。
茶碗に水を注ぐ音、柄杓が蓋置に置かれる音。
そして、茶を点てる音。
この小さな音に耳をすませる時間、みんなでつくるその空間に浸る時間が好きだった。
また、茶道では季節の声を聴くことも大切だ。
桜が綺麗な季節になったので、今日のお菓子は桜を模したものです。
暑くなってきたので、ガラスの茶碗で涼しげにしてみました。
寒くなってきたので冷めにくい筒茶碗にしましょう。
季節の花を床に飾りましょう。
季節の声を聴き、お客様の想いに寄り添い、ベストな空間をつくる。
それが大事なおもてなしの心。
その経験があってから、私は季節の声を聴くことを大切にしたいと思うようになった。
外に出て感じる陽射し。肌を撫でる風。
ふと通る道の木々の様子。花壇に咲く花。
季節が変わったら衣替えをして、部屋の模様替えをして。
季節ものの役目が終わったら、感謝の気持ちを込めて洗濯して。
ついでにちょっと掃除して。
季節の置物をちょっと部屋に置いてみたり、
香りをちょっと変えてみたり。
それだけで自然と向き合っている気持ちがする。
気持ちに余裕が生まれる気がする。
「生きてる!」って感じがする。
余裕のある大人になるために、季節の声に耳をすませていきたい。
