錦繡枕 第三巻(前半)
「錦繍枕」は元禄5年(1692)に伊藤伊兵衛のはじめての著作として
発表されたツツジとサツキの園芸専門書です。
このページは国立国会図書館所蔵公開の原本を、そのまま影印し
1頁づつに読み下し文を添えたものです。
なお読み下し文には、現代人に読みやすくするため、原著を損なわない範囲で手を加えました。
また読解に四苦八苦している私たち😂😂 の “ナマの呟き” をところどころに差し込んでいます。
皆様のご意見 をお待ちしております。


錦繡枕 巻の三 躑躅《つつじ》
〇ふさたん
この花 一所にあつまり
咲いて ふさのごとく


えだも たわわに しだ
れて 興なり 色あ
かし
▲そしたん
あか ふたえ 小りん
▲紫万重
むらさき 中りん まんえ也
▲紫しぼり
白地に 紫とび入あり 太りん

▲ときわむらさき
なるほど こひ むら
さき 太りん 葉 りゅう
きゅう の ごとし
▲けらま
あかく 大りん 葉も
大きし
▲ごしょ紫
むらさき 大りん
葉 りうきう の
ごとく

なんきんしぼり
図の如く 色は うす赤也
白き しぼり のごとく
なる すじ 少しずつ 有

▲あけぼの
たまごいろ にて 少し
むらさき かかり
ほっこり として
八重 中りん 一所に
あつまり さく
▲かうくわさん
こい くれない せん重
小りん より 少し大きし

▲きりん
色あかく 図の如くの こ
まやかに きれざき

▲しし
白地に あかき とび
入 さきわけ さらさ
しぼり かのこ いろいろ
くるい花也 中りん
▲とまや
かき色 太りんに 紫
の とび入 さらさ有


■夏のあふぎ
白き花 中りん さら
り と花形 きれさ
き にも さく
〇こしきぶ
ふじいろ 小りん 花
形 じんじょうに しかも
二月 ひがんの 時分
さかり

▲するが万重
うす紫 大りん 八重
なり 葉も大きし
一所に 花あつまりて咲く
■あっぱれ
くれない 中りん
▲かもむらさき
こいむらさき 太りん

▲花車
いろ むらさき 花中
に 紫の かのこ有
葉も 大きし


▲きさらぎ
白大りん 葉も少し
丸く 白きりしま
に似たり
〇一名さらしな
▲まゆづみ
桜いろ より 少しあ
かく 玉子色 中りん



くわさん嶋つつじ
さつき時分さく 花

あかく 図の如くの 五葉
六七よう まじわり
て さく 花中に かの
こ有
〇一名 夏椿
立花に この花を つ
かう つばきの ごとく
葉も大きし
■おふむ
さくらいろ 大りん


▲くちべに
うすあか色 花のま
わり あかし みそめ
車の花に にたり な
つは 色あおく なり
ちらず


▲みよしの
〇一名こうしん
白地に くれない と
うすいろ にて とび入
さきわけ しぼり
いろいろ さく 中りん
▲二重紫
こいむらさき 中輪
ふたえ也

▲おもかげ
図の如く 八重一重なり
色なるほど白し
葉も大きし

▲おくるま
色あかし
〇一名いとぐるま
〇一名金より
〇一名よりくれない


▲ますかがみ
うすかきいろ 中りん
あか とび入あり
■るすん
むらさき 小りん
春冬二度さく
■むらくも
うすむらさき 大
りん
▲うすくも

うすいろ 大りん 花
中に かのこ有
▲せき寺
うすいろ 太りん 紫
の とびいり有 花
中に かのこも すこし
■おぐら山
あかき 中りん せん
よう なり

㊟【四十八茶百鼠】
しじゅうはっちゃひゃくねずみ
江戸時代に庶民が着られた「茶色」
「鼠色」「藍色」のみに制限された
奢侈禁止令で、町人たちが工夫を
凝らして生み出した多種多様な色
を指す。具体的な数ではなく「沢山」
という意味。

▲十重車

花形 ていせんかずら
の花のごとく よう(葉)
たくさん出 色むら
さき 葉は りゅうきゅう
のごとく にて 木は
こぢたく ねぢけ
たる 物なり
〇わかむらさき
むらさき 太りん


■春おそひく
白地に あかき飛入
絵の如く 白むじ 赤むじ
かきいろ のも さく

かき色の すじも
あり
▲てぼたん
〇一名ふしみ紫
むらさき 中りん せん
重也 葉大きし
八重ま
さつき時分也
なるほど こひ くれな
い 中りん 八重也

から草
色あかく 花一所に
あつまり咲く


からつつじ
あかき 太りん 花も
葉も 大きり嶋 に
似て 又 異あり 各

別 しゃんと したり
▲かうし
くろみ あるほどの こ
い むらさき 大りん
■さよひめ
むらさき の 中りん

▲ふたえみ
図の如くの花 一所に くく
りて さく いろ白き
事 雪のごとし
葉も大きし

▲あさがすみ
うす色 中りん 花の
まわり 白し
一名源氏三吉
▲ぼたんくれない
なるほど こいくれな
い 八重 中りん
▲八重くれない
あか 小りん 八重也
花葉 八重きり のごとく

▲しゃむろ
白地に むらさきの
さらさ 図の如くの いろ

いろ くるいさき
むらさきの むじ もさく
▲くちば
花 黄色にして 大
りん 按に つつじ
さつき の中に 黄
色なる 花 ほかに
なし 然らば 本草綱
目 毒有り と侍る 羊
躑躅は 是なるべし
時珍 曰く 枝少し 一
枝数萼繁る と 誠に 此の

花 一枝に あつまり
咲きて れんげの ごとく
愚 駿州富士山へ 詣で かえる さに
すそ野を見れば
此の花 多くありて
盛りなりし 名を
先立に問い侍れば
黄れんげ と答えり
よくも いひなら
わし たり 時珍 所
どころ 山谷に これ有
高さは 四五尺 一二尺と

いえるも 露たがわず
又 天竺の 伽羅毘羅
樹 といふも 是に
にたる にや
葉 図の如く 冬落ちる
現代語訳:
くちば
花の色は黄色で、大輪である。私の記憶では、つつじ・さつきの中に
黄色の花はこれの他にはない。ならば「本草綱目」に有毒とある
「羊躑躅」はこれなのであろう。
時珍は「枝は少ない 一枝に萼(花)が数枚(数花)つく」と言っている。
㊟李時珍:1518 ~ 1593
中国(明)の医師・本草学者
「本草綱目」の著者
誠にこの花は 一枝に集まって咲きレンゲ草のようである。
私が かつて駿州の富士山へ詣でた折の帰り道 すそ野にこの花がいっぱい
咲いているのを見た。
先立に名をきいてみると「黄れんげ」とのことであった。
よくぞ言い表わしたものである。
時珍が
「これは山や谷のところどころに有る。高さは四五尺から一二尺の
ものもある」
と言っているが、
まったくそのとおりである。天竺にあるという伽羅毘羅樹も
是に似ているのであろうか。
葉の形は図の如くで 冬には落ちる。


