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凍りついた在庫から見えた光…「おおまさり ゆで落花生」誕生秘話

転んだら、立ち上がればいい……。

これは「おおまさり ゆで落花生」誕生の裏にあった実験と挑戦の物語……。

千葉のゆで落花生、ご存じですか?


「おおまさり ゆで落花生」
やますの数ある落花生商品の中で、年間売上ベスト3に入る人気商品です。
原料となるのは、落花生の中でも、一際粒が大きな品種「おおまさり」です。
大きさは従来品種「ナカテユタカ」の実に2倍。

この大粒な「おおまさり」を専用のレトルト機で加工しています。
食べ応えのある、ホクホクした食感が人気で、ファンも多い落花生商品です。

「ゆで落花生」
もともとは落花生農家が、自分達が食べる分を細々と作っていました。
千葉県内でもまだ知名度が低く、その存在を知らない人もいます。

しかし、やますには早くから、ゆで落花生の「美味さと可能性」に気づいた人物がいました。

それが、やますの創業者・諏訪 廣勝(すわ ひろかつ)でした。
ところが、ゆで落花生は量産するにあたって「大きな問題」があったのです……。

ゆで落花生が抱える問題

それは、落花生の収穫時期でした。
ゆで落花生に使う「ナカテユタカ」の収穫は「8月」
一方、煎り落花生に使う「半立(はんだち)落花生」の収穫は「8月後半」

いくら、美味しさと可能性があったとて、主力はあくまで「煎り落花生」です。
収穫時期も近いため、知名度の低い「ゆで落花生」の生産に、多くの時間を割くわけにはいきません。

実際、ゆで落花生の加工に使える期間は、2週間あまり。
作ったら売れるとわかっていながら、量産に踏み切ることができない。
歯がゆい思いをしていました……。

そこで講じた苦肉の策が「中国産ゆで落花生」でした。
中国は、マンパワー的にも設備的にも充実しているため、大量生産&安定供給も可能です。
これなら収穫時期に悩まされることもありません。

味は、間違いなく美味しい「ゆで落花生」
市場に出せば、売上は見込めます。
……その結果、やますの読み通り、順調に業績を伸ばしていったのです。

仕入れれば売れるのですから、中国への発注も加速します。
そんな矢先、思わぬ逆風が吹き荒れます……。

卸先がゼロになる大ピンチ

当時のやますは「中国産ゆで落花生」を外部に卸していました。
ところがある時、卸先からこう言われてしまいます。

まさに青天の霹靂。
原因は、2008年頃から世間を騒がせはじめた「食品偽装問題」でした。

北海道苫小牧の食品加工会社による食品偽装事件(2007年)
京都の某高級料亭の産地偽装、賞味期限偽装(2007年)
中でも大きな話題となったのが、2008年に起こった「中国製冷凍ギョーザ中毒事件」です。

中国の食品に対する不信感が一気に高まり、世間の風当たりが強くなったのです。
その矛先は、「中国産ゆで落花生」にも向かいます。
結果、卸先を失った「ゆで落花生」を在庫として抱えるハメになったのです。

その在庫量。……なんと20トン。

当時のゆで落花生は「常温保存」がきかず「冷凍保存のみ」
やますは、20トンもの在庫を自社の冷凍庫で眠らせることになってしまったのです……。

ついにパンドラの箱が開く

「凍りついた20トンもの在庫」
社員の誰もが、在庫から目をそらし、月日が流れます。
そんな折、現・房の駅代表、諏訪 聖二氏が「営業部長」に就任しました。

営業という仕事柄、冷蔵庫・冷凍庫にも足を運ぶようになります。
当然、そこには20トンのゆで落花生がつまった段ボールもあるわけです。
……しかし当初、聖二氏は20トンの在庫に〝なぜか気づけなかった〟といいます。

聖二氏
「当時、倉庫の6割方を埋めていたと思います。
あまりに多いので、段ボールがカベのようになっているんです。
当たり前のようにずっーとあるので、まさかそれが〝すべて在庫〟とは思わなかったんですね」

冷凍でしか保存できない「中国産ゆで落花生」
このまま放っておいても、ただただ冷凍庫を圧迫するだけです。
……かといって、このまま廃棄するワケにもいきません。

考えに考えた聖二氏の脳裏に、こんな案が浮かびます。

凍りついた在庫を生かす道

このままでは、遅かれ早かれ捨てるしかない20トンです。
そこで、当時付き合いがあった同業者やメーカーに「タダ同然の超破格」で譲り渡し、実験的に新商品を作ってもらったのです。

例えば
「甘納豆」にしてみたり……
「黒みつ」で味付けしてみたり……

同業者&メーカーにすれば、原料となる「ゆで落花生」のコストは、ほぼゼロです。
採算を度外視した「価格テスト」をすることも可能です。

こうしてやますは、20トンもの在庫を使って、落花生商品にまつわる「膨大なDATA」を集めることに成功しました。

こんな実験を繰り返すうち「ゆで落花生」を再生させる〝光明〟が見えてきました。

実験から見えた〝光明〟

在庫の「ゆで落花生」を元に、実験的な商品開発をすすめる、やます。
当然、お客さまの声にも耳を傾けます。
そこで聞こえてきたのが……。

そうなのです。
落花生の大きさには多少のムラがあります。
同じゆで落花生でも、お客さまがもとめているのは「大粒」……。

ならば「国産の大粒なゆで落花生を作れば」人気商品になるのでは?
そんな時、落花生市場に〝大きな新品種〟が誕生しました。

超大粒品種「おおまさり」が登場


それがおおまさりでした。
おおまさりは、千葉県で収穫量が多い品種「ナカテユタカ」と、超大粒の品種「ジェンキンスジャンボ」をかけ合わせて生まれた、落花生の新品種です。

大きさは一般的な品種の約2倍。
収穫量は1.3倍以上にもなります。

その身は甘みがあって柔らかく「ゆで落花生」に向いています。
「食品偽装問題」の騒動が収まったとはいえ、原料に中国産を使うことには一定のリスクを伴います。

ならば原料を「おおまさり」に一本化して、今度こそ「ゆで落花生」をやますの看板商品にしよう。そんな機運が高まりました。
……実はこの時、ゆで落花生の量産に追い風となる、ある大きな〝進化〟があったのです。

レトルト加工機の進化

それが「レトルト加工機の進化」でした。
これまで加工した「ゆで落花生」は、冷凍か冷蔵で保存するしかありませんでした。
……しかし、なんと「常温保存」が可能になったのです。
しかも、賞味期限も大幅に伸びて「180日(半年)」
これは、加工の中で「加圧加熱殺菌工程」があるためです。

これまでのゆで落花生は、保存方法が限られていたので、1年を通して販売することが難しかったのです。

ところが、この問題を一気に解決する「常温保存」「賞味期限180日(半年)」
これによりゆで落花生は「通年販売」が可能となりました。

これは落花生農家にとっても〝福音〟となるハズでした。
先ほどご説明した、おおまさりの特徴を覚えてらっしゃいますか?

収穫量は1.3倍以上にもなります。

そうなのです。
おおまさりは、従来品種と比べて収穫量が増えるのです。これはそのまま、落花生農家の収益アップにもつながります。
加えて、実は「加工の手間」も、大幅にはぶけるのです。

「ゆで落花生」と「煎り落花生」の加工の違い

まず、ゆで落花生から説明しましょう。
実は加工までの手間が、ほとんどありません。
なぜなら、収穫した後、根についた土をとりのぞけば、レトルト加工機に託すことができるからです。

一方、煎り落花生はというと……。
こちらの画像をごらんください。

落花生畑でよく見る風景。
これは「ぼっち」と呼ばれる「天日干し」にされている落花生の山です。
煎り落花生に加工する場合、天日干しして、ある程度は水分を抜かなければなりません。
晴天が続けば良いのですが、雨に降られることだってあります。
そうすると、加工までの管理と手間が増えてしまうのです。

加工だけを切り取ってみれば、ゆで落花生の方が圧倒的にラク。
合わせて収穫量アップは収益アップにもつながります。
落花生農家にとっては、まさに〝いいことずくめ〟です。

ゆで落花生の材料を「おおまさりに一本化したい」

しかし、ことはそう簡単に運びませんでした。

ドラスティックに進まぬ話……

千葉県富里市(とみさとし)にある「池宮(いけみや)商店」
千葉県八街産(やちまたさん)の落花生を原料に落花生製品、豆菓子、落花生加工品を作っている会社です。

やますとは、2代目・優(まさる)さんからの付き合い。
その昔、やますが「房の駅(ふさのえき)」を立ち上げた頃、落花生農家の新規開拓にも力を貸してくれた、戦友と呼べる間柄です。

そんな付き合いの長い、池宮商店にやますは依頼します。

……しかし、池宮商店はすぐには首を縦に振りませんでした。
これには理由があったのです。

この時、池宮商店ではゆで落花生を作るにあたり、2つの品種を使っていました。
一つは「おおまさり」
もう一つは「ナカテユタカ(半立落花生より大きな品種)」です。
これまで池宮商店に「ナカテユタカ」を出荷してきた、落花生農家の都合もあります。
これを、ドラスティックに切り替えることが出来なかったのです。

結果「ナカテユタカ」は切り捨てず、2つの品種でゆで落花生を作っていくことになりました。

これを受けて、やますが思ったこと、それが……。
「おおまさりを作る落花生農家がもっと増えて欲しい」
そこで、積極的に取り組んだことがありました。

おおまさりの種作りに尽力

おおまさりの種は、収穫時期に「品質検査」があります。
そこで、やますは、千葉県からの要請を受けて、高品質な「おおまさりの種」を作るよう力を尽くしました。
千葉県が安定的におおまさりの種を落花生農家に供給ができるよう、影から支えたのです。

売上の逆転は想像以上に早く……

こちらが現在、やます・房の駅で扱っている2つの「ゆで落花生」です。
(ナカテユタカは、その後、「Qナッツ」に切り替えられました)

(おおまさり ゆで落花生)

いま売上は、圧倒的に「おおまさり ゆで落花生」が上回ります。
そうなのです。
両者の売上は、徐々にその差がつまり、ついに「おおまさり」が逆転したのです。
でも、こうなることは、ずっと昔に〝お客さま〟が教えてくれていました。

……覚えていますか?
大量の在庫を使った実験から得た「お客さまの声」を。

「粒が大きい方が美味しい」
凍りついた20トンで実験することで、得られた「大事な大事なお客さまの声」
在庫を在庫のまま放置していたら、決してこの声を聞くことはできませんでした。

やますが落花生商品に込めている〝大事な精神〟があります。
それが……。

「七転び八起き」の精神

「落ちる」という漢字が含まれる落花生ですが、
やますでは「七転び八起き」の気持ちを込めて作っています。

例えば、快気祝い/就職お祝い(再就職祝い)/入学祝い。

人生は山あり谷あり、大変なことも多いけど
「頑張ればいつか花が咲く」というメッセージを込めているのです。

やますの創業者・諏訪 廣勝(すわ ひろかつ)の慧眼から数十年……。
いま「おおまさり ゆで落花生」は、やますにとって欠かすことのできない看板商品へと成長しました。

凍りついた在庫から見えた光(お客さまの声)
いまその光が、「おおまさり ゆで落花生」の未来を大きく照らしています。

※こちらはやますの公式HP(この記事の取材・構成を担当しました)

株式会社やます物語シリーズ















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