短編小説26「死なない夫、黒花太市」
《喧嘩なく過ごしたいね》
「やめてくれ! こ、殺さないでくれ!」
黒花太市(くろばな・たいち)は妻、美玲(みれい)に必死に訴えた。
美玲は包丁を持って立ち尽くし、無感情の目を向けている。
「仕方ないじゃない、もう、こうするしかないのよ」
「い、いいやまだ何か方法があるはずだ、考え直そう」
「うるさいわね、静かにしてよ」
静かにしていたら手遅れになってしまう。何とか諭さないとならないんだからうるさくても喋らないとならないだろう。
「僕は、美玲ちゃんのそんな姿見たくないよっ」
「なら代わりにあなたがやってくれる?」
「……それは、無理だ」
「なぜ?」
「僕にはそんな残酷なことはできない、出来るはずもないんだぁ!」
叫んで美玲を羽交い絞めにする。
美玲はそれを払いのけるでもなく、無抵抗を決めている。包丁を持った手は振り上げられたまま止まった。
「離して、太市」
「僕が離したら、その包丁が振り下ろされる」
「ええ、そうね」
「そうしたら、今日の食卓には……」
ゴクリと唾をのむ太市に冷静に答える。
「魚料理が出るわ」
「僕は魚が苦手なんだー!」
「好き嫌いはダメだよ」
「切って血が出るのも苦手なんだー! 切らないでくれ!」
「そしたら見なきゃいいじゃない」
「僕がここを離れると、魚料理が出てしまうっ」
子供のように駄々をこねる太市。それを無視して、美玲はついに包丁を振り下ろし魚の頭を切り落とした。
「うふ」
「ぎゃーーー!」
今夜は魚料理のフルコース。
おわり
◆【マガジン】松之介の短編小説集
最後まで読んで頂きありがとうございます。
「いいね」「フォロー」「コメント」
で応援してもらえると、これからの創作の糧になります!
めちゃくちゃ嬉しいです。
毎月ジャンル混合クリエイター交流企画を開催してるので、
是非参加してみてください!
企画に参加頂いた作品をまとめたマガジンもお立ち寄りください。
🌏サイトマップ(全作品リンク)
🌕【マガジン】クリエイター交流企画(毎月開催)
🌏プロフィール(随時更新)
いいなと思ったら応援しよう!
僕の記事が『楽しめた』『参考になった』と思いましたら是非サポートをお願いします❗
謎解きや物語など、投稿作品はご自由に使用して頂いて大丈夫ですが、評判が良かったらサポートもして頂けますと嬉しいです😁
今後も楽しめるものを頑張って作ります💪