脚本22「二部という漫画家」
《幸福とはなんなのか、
もしかしたら彼は知っているのかもしれない。》
○登場人物
・漫画家:二部(にぶ)
・恋人
・編集者
・漫画家②:書屋(かきや)
【1】漫画家の部屋。
4人は漫画家の部屋で飲み会をしながら話している。
●漫画家、恋人、編集者、漫画家②はテーブルを囲んで板付き。
漫画②「そうだ二部、おまえ先週誕生日だったな」
編集「そういえばそうだな!」
二部「二人共忘れてたのかよっ!」
編集「はっはっは、仕事が忙しかったからなぁ」
二部「こいつ、女の誕生日は忘れないくせにな!」
恋人「あはは、そうなんですか?」
編集「おまえも女だったら忘れてなかったぞ」
漫画②「おれは女でも忘れるわ」
二部「だからモテないんだっておまえは」
編集「言えてる!」
恋人「えー? 書屋さんモテそうなのにー」
二部「やめろやめろ、こいつ本気にしちゃうから」
漫画②「言いたいこと好き勝手言いやがって」
編集「すまんすまんっ。はっはっは」
漫画②「とりあえず二部、誕生日おめでとう!」
編集「おう、おめでとう!」
二部「ありがとう!」
編集「ところでお前いくつになったんだ?」
二部「年齢まで覚えてないのかよ! 29だよ」
漫画②「29かぁ! 29で売れっ子漫画家!」
編集「大したもんだ! 編集のおれも鼻が高いぞー!」
恋人「書屋さんも売れてるじゃないですかぁ」
漫画②「まぁな!」
二部「少しは謙虚になれってー」
漫画②「ま、おまえよりは売れてないけどな!」
編集「二人共頑張ってくれよー!」
漫画②「そういや、誕生日当日は何してたんだ?」
編集「まさか仕事じゃあるまいな?」
恋人「ふふ、私と居ましたよ」
二部「あ、おい、言うなよ……」
編集「お、なんだ照れてんのか」
漫画②「羨ましいねぇ~」
恋人「水族館とか行ってー」
編集「ほうほう」
恋人「綺麗なレストランでー」
漫画②「ふんふん」
恋人「それでね、プレゼント渡したらー、ふふふ」
編集「おおおっ!? 書屋君、聞き逃さないように!」
漫画②「任せなさい!」
恋人「泣いちゃったの」
二部「やめろぉぉ……」
漫画②「はっはっは、そうかそうか」
編集「泣いたのかおまえー」
二部「悪いかよ……」
編集「いんや、いいんじゃない?」
漫画②「毎年のことだしな」
恋人「ま、そうなんですよね」
編集「あ、酒なくなったな」
漫画②「そうだね、買ってくるよ」
恋人「お願いしますー」
二部「ああ、頼んだ」
漫画②「いや、お前も行くんだよ」
二部「えー、なんで」
漫画②「一人じゃ持ちきれないだろ」
編集「任せた」
恋人「任せたっ」
二部「……わかったよ」
漫画②「ほら、いくぞ!」
●二部、漫画②ハケ。
編集「さて、追い出したところで」
恋人「ええ、始めましょう!」
●恋人、編集は部屋の飾りつけを始める。
編集「しかし、あいつもすげぇなー」
恋人「3000万部ですもんねぇ」
編集「最初なんて2回も打ち切りだったんだぞ」
恋人「言ってました。もう漫画家なんて辞めたくなってたとか」
編集「そうなんだよ。おれも責任感じたなぁ」
恋人「でも言ってましたよ? それでもやめなかったのはあの編集のおかげだ。って」
編集「へぇ、そうなのか。良いこと聞いちまったな」
恋人「やっぱり言ってませんでした?」
編集「ああ、照れくさいんだろ」
恋人「書屋さんも良いライバルだって言ってましたよ」
編集「あいつら人気投票で勝ったり負けたりだったからな」
恋人「いい刺激だったって」
編集「それ、書屋に後で伝えちゃおうぜ」
恋人「いいですね、それ!」
編集「あ、このサプライズ二部には言ってないよね?」
恋人「あたりまえじゃないですかー」
編集「おれもまだ伝えてないからな、新連載決定の話」
恋人「驚くでしょうねぇ」
編集「いや、泣くかもな。嫌で」
恋人「ありそうですね」
編集「連載2つ持つことになるからな」
恋人「ひゃー、大変」
編集「この人気の勢いに乗らなきゃな」
恋人「稼ぎどきってやつですね!」
編集「君もあいつといる時間が減るかもしれないが……」
恋人「大丈夫です。なんとかします!」
編集「なんとかか。愛想つかさないでくださいよ?」
恋人「大丈夫ですってー」
編集「何分くらいたったかな」
恋人「10分経ってないくらいです」
編集「書屋に時間を稼いでくれって言っておいたけど、大丈夫かな」
恋人「コンビニ近いですからね」
編集「よし、あとはそっちの飾り付けだけだ!」
恋人「はい! 出来ました!」
編集「よっし! 間に合った!」
恋人「あとは待つだけですね」
●ガチャガチャと音がし、漫画②、二部入り。
恋人「来ました」
二部「買ってきたぞー。って」
編集、恋人、漫画②「おめでとーう!」
二部「……えっ? なに? 誕生日じゃないよな」
編集「あの垂れ幕を見てみろ!」
漫画②「驚け!」
二部「新連載……?」
恋人「うん! 新連載が決まったんだよ!」
漫画②「2つも連載掛け持ちなんて羨ましいねー」
編集「これから忙しくなるだろうが、頑張ってくれよ」
二部「や、やった……!」
恋人「もっかい拍手ーーー」
●編集、恋人、漫画②は拍手。としばらく続くと、拍手はピタリと止み、照明は薄暗くなる。恋人、編集、漫画②はハケ、二部だけが舞台に。
【2】二部の部屋。
薄暗い、さっきまでの明るさは感じられない暗い空間。二部は一人でテーブルに付き、漫画を書いている。そして、ぼそぼそと独り言を言っている。
二部「も、もういいよ拍手はー」
恋人(二部)「えー、だってすごいことだからー」
編集(二部)「どれだけ稼げば気が済むんだこんにゃろー」
漫画②(二部)「おれも負けねぇかんな」
二部「皆ありがとう、がんばるよ」
編集(二部)「おう、その粋だ!」
漫画②(二部)「今日はお祝いだ!」
●恋人入り。
恋人「二部さん、書けましたか?」
二部「朝まで飲むぞー」
恋人「またつまらない現実逃避!? はぁ、これが理想なのかねぇ」
恋人(二部)「えー、朝まではキツイよー」
●恋人、置いてある原稿を拾って
恋人「なんで私があんたの恋人役なのよ! 書屋がライバル?」
漫画②(二部)「いや、おれは朝まで付き合ってやる」
恋人「あんたみたいな打ち切り漫画家がねぇ。ほら、あんたが原稿送ってこないから取りに来たんだよ。渡しなさい」
漫画②(編集)「しかたねぇ、おれも付き合ってやるかー!」
恋人「書屋に憧れてるんなら、原稿落とす事だけはしないことね」
二部「おれは売れっ子漫画家だー!」
恋人「この編集役は誰なのかしら。ま、いいわ。二部! 原稿は貰って行くわよ」
●恋人ハケ。
二部「おれは売れっ子漫画家だーーー!!!!!」
完
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