短編小説31「屍ハッピーエンド・ジャンク」(企画参加/KAさん)
客に頭を下げる店長の横で腐臭を放つ青年がホゲーと空を見つめている。
クレームの内容は『買った商品から腐った匂いがする』というものだった。
それは仕方がないというもの。レジを打っていたのは、今横に立つゾンビなのだから。
「まったく! ゾンビならゾンビらしくゴミ収集でもしてなさいよね!」
「誠におっしゃる通りでございますでしてはい、クビにしますのでどうかお気を沈めて…」
という事で、スーパーをクビになったゾンビ「原」は今、公園で子供達とサッカーをしている。
「さあ喰らえ少年共。これが俺の、《腐っても人間シュート》だ!」
「うっわ、キッショ! まじ、うわ、げ!」
ボールと共に飛んできたのは、脚だ。
「ハッハッハー、ゴール前がガラ空きだぜ少年共!」
逃げるように少年たちは帰る。
仕方なく原はリフティングを始めると、一人だけ少年が残っている事に気がついた。
「サッカーするか?」
「なんでゾンビになったの?」
「噛まれたからさ」
「そんなの知ってるよ! 誰に? なんで? いつ? 原さんは後どれくらいで腐り落ちるの?」
ゾンビが腐り落ちる。それはゾンビの寿命を意味する。それはそうだ、腐食にも限界はある。肉を支えられなければ腐った人間以下であるのだ。
「俺は噛んでもらったのさ」
「え、自分から?」
「ああ、自分から」
「じゃあ、僕が噛んでってお願いしたら?」
「さあ話はここまでだ、これ以上はゾンビ禁だ」
「なんだよゾンビ禁って」
「ゾンビになるまで見ちゃいけません。ってやつさ」
原は恋人に噛まれた。
まだゾンビが只の怪物扱いだった数ヶ月前。
原の恋人は腐り落ちる寸前だった。
☆
「もう声を出すのもむずかしい、の」
「ここまで君を匿えて俺は幸せだったよ」
原は恋人の肉が落ちる最後まで抱えるつもりだ。
「最後に俺のお願い聞いてくれるか?」
「それはダメ」
「なんで」
「ぞんびにしろっていうんでしょ」
「そうだよ、君がいないんじゃ俺はゴミよりも価値がない」
「だめ」
「最期まで君といたい、君に噛まれて俺が腐り落ちるまで俺の中にずっといてよ。ハッピーなゾンビライフを送るから」
「なにそれ」
「ほら、笑ったね? 俺の勝ちだよ」
「たたかってたの?」
「君は腐っても人間だったろ? 大丈夫、俺もちゃんと人間やるから」
力の入らなくなった恋人の歯を原は、自分の腕に噛ませた。
「もう少し君と居られるようになって、とってもハッピーだよ」
おわり
NNさんの「ゾンビ1000」企画へ2作目です。
思い付いちゃって。
1,000文字以内で完結させるゾンビ物の短編を作る企画です。
他にもいっぱい参加作があるようなので、見てみてください。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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