短編小説2「ロボット農場」

《僕らの未来が、こうならないとは限らない。》


 人工知能の発達は社会を進歩させるのか。僕は目の前の機械を弄りながら、ふと考えた。
 これが自分で考えて動くようになったら、人間は要らなくなるよな。

「異常アリマセン」

 機械的な声だ。

「異常はない、か。自分の体調が即座にわかるってのは良いもんだな」
「アリガトウ」

 人間は自分の異常を自分で見つけるのは困難だ。ジワジワと蝕まれることに気づきにくいからだ。大抵の場合、医者にかからなければ異常が起きてから気が付く。

「ロボットを人間に近づけるんじゃなく、人間をロボットに近づけられたらいいのにな」
「それは人間デハない」
「人間のようなロボットはどうだ?」
「ロボット、デス」

 ロボットが人間とロボットの違いを理解していたら安全だな。おそらく人間には区別がつけられなくなるだろう。否定も肯定もする、意見は分かれて答えは出ないのだろうな。
 僕は人間だから想像がつくんだ。

「ワタシは人間にナリタイ」
「それは難しいよ。君の心臓は止まっているんだ、コアを入れ替えなければならない」

 僕の手がロボットの胸から生暖かい心臓を取り出す。停止したそれは無機物のように感じる。
 コア。それは、ロボット開発の過程で製造できた人口の心臓だ。
 死んだ人間は、身体が無事ならコアを埋め込みロボットとして蘇らすことができる。費用は高額だが、外見だけでも傍に置いておきたいという思いから需要が高く、今では街中に多くのロボットがいる。

 中には恋人を殺し、ロボット化した子もいた。あの時は心底、浮気はするもんじゃないと思ったものだ。彼女はあれからどうしているだろうか。
 まぁ、ロボット化した人間が人間として認められるかは別だ。やはり彼らはロボットで、心はないのだから。

「さぁ、バグができるから記憶は消すよ」
「いや、ダ」
「君がこれからロボットとして活動していく時に記憶があると辛いだけだよ。それにバグが出るとすぐに処分だ」
「イや、ダ」

 毎回だ。いつも記憶を消すときはこうなる。とても面倒。問答無用で消していく僕こそ機械的だな。

 全ての処理を終えた死体はロボットとして生まれ変わった。これらは貴重な労働力として、店の従業員や作業員、戦場に送られる。愛玩用に持ち帰る者もいるが、あまり良い眼をした者たちではないことが多かった。

 世界はずいぶん変わったようで、多くのことが人に代わってロボットがやっている。

 人が死ぬ確率が減り人口が増えたかと思うだろうが逆だった。ロボットに任せ、なまけることを覚えた人間は、生活習慣病の激増や出生率の低下、精神を壊し徐々に人口を減らしたらしい。

 今じゃ世界の半分がロボットとも言われている。
 言われているというのは、ロボットと人間の定義が国によって違ったり、個人の意見も未だにバラバラだからだ。

「追加の死体だ、コア処理をしてくれ」

 落ち着きのない青年が運んできた。関節が軋む音がする。彼はそろそろ壊れるだろう。この死体を彼の代わりにしようか。
 僕はいつものように、同じ作業を繰り返す。

「あのコアの作業員も古くなってきたから交換時かな」
「どうやら自分のことを人間だと思ってるらしい」
「そうか! それは素晴らしい。では研究所行きにしよう」
「ロボットに記憶と人格の維持さえできれば」
「我々人間種とのハイブリッドで、永遠の命を手にできるのだ」
「莫大な利益が出るビジネスとなるだろう」
「倫理観はぶっ壊れてるがな」

 ハハハハハハハと大笑いしながら、人間達は壊れたロボットのコアを引き抜いた。

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