脚本30「親子の嗜好」
《似たもの親子は食事も似てる》
●登場人物
◯寺神五來(てらがみ・ごらい)
◯寺神蒼紫(てらがみ・あおし)
夕食中の蒼紫と五來親子。食卓にはフルコースが用意されている。ステーキにナイフを入れながら静かに会話を嗜む。
蒼紫「父さん、今日のは誰?」
五來「あぁ、今日か。今日はな、御崎玲奈っていう新入社員だ」
蒼紫「そっか。22歳?」
五來「先週23歳になったな」
蒼紫「僕の2個下、か。まぁ父さんにしては良いチョイスだね」
五來「まったく。蒼紫、お前は我儘が過ぎるぞ。23歳といえばまだまだハリのあるお年頃だろう?」
蒼紫「僕はね、父さん。女子高生が好きなんだ。女子高生。わかる? 未成年じゃなきゃ」
五來「女子高生は肉身が少なくてなぁ。父さんは好まんな。やはり30代が一番……」
蒼紫「父さん!」
五來「蒼紫、食事中は静かに」
蒼紫「ああ、そうだったね。でも父さんだってしつこかったじゃないか。30代30代っていつもそうだ。いいかい? 父さんの嗜好は少し特殊なんだ。皆が皆30代を好きだとは思わない方が良い。それが身のためだよ」
五來「お前の言うとおりだよ蒼紫、私は人と嗜好が合わないらしくてな」
蒼紫「自覚してよね」
五來「それにしても蒼紫、なぜ年上の女性は嫌なんだ?」
蒼紫「はぁ父さん」
五來「いや、すまなかった。この話はもうやめよう」
蒼紫「御崎玲奈か」
五來「好みじゃないか?」
蒼紫「やせ型だし、余計な肉が無くていいとは思う。けど御崎玲奈、タバコ吸ってるね」
五來「なに、そうなのか」
蒼紫「気づかなかったの? 父さんも年だね」
五來「ふむ、よく気が付いたな」
蒼紫「唇と舌を舐めればすぐにわかるよ」
五來「その部分は蒼紫のものだろう」
蒼紫「まあね。せっかく選んでくれて申し訳ないけど御崎玲奈はダメだ」
五來「残念だ。……ではせっかくだし、父さんが貰ってもいいか?」
蒼紫「ああいいよ。好きなだけ持って行ってよ」
五來「ふむ。タバコの苦みも意外と良いかもしれんしな」
蒼紫「ごちそうさま」
五來「部屋に戻るのか?」
蒼紫「じぃと将棋を指してくるよ」
五來「勝てそうか?」
蒼紫「全然さ」
五來「私も勝ったことが無いよ」
蒼紫「そうだ、父さん。今度高卒も採用しようよ。女子高生ってわけにはいかないけど、ほぼ女子高生だし、僕は許容範囲内だよ」
五來「高卒採用か、いいかもしれんな」
蒼紫「考えといて」
五來「いや決定だ。高卒採用を始める」
蒼紫「ほんと!?」
五來「あぁ、ほんとだ」
蒼紫「それは素晴らしいよ父さん! これで僕もやっと楽しめる!」
五來「まったく蒼紫の偏食にも困ったものだなはははは」
蒼紫「父さんだって偏食じゃないかはははは」
五來「なぁ蒼紫、女子高生はどうするのが一番美味いんだ? 父さん女子高生は試したことがなくてな」
蒼紫「言うまでもない。生さ!」
五來「生か!」
蒼紫「一度味わえば父さんだって癖になるはずさ。御崎玲奈なんて比べたら生ごみだ」
五來「そうか! さっそく明日の夕食は女子高生にしよう!」
蒼紫「行動が早いね、さすが父さんだ」
五來「会社を成長させるにはスピードが大事だからな」
蒼紫「じゃあさ、僕が狙ってる子がいるんだけど明日連れてきていいかな?」
五來「おお、いいぞ。明日はごちそうになるぞぉ」
蒼紫「言っとくけど唇と舌は僕のものだからね」
五來「わかってるわかってる。私が好きなのは内臓だからな」
蒼紫「あんなグロいもんよく食えるよ」
五來「年を取ればわかるさ、あの良さがな」
蒼紫「そういうもんかね」
五來「そういうもんさ」
蒼紫「御崎玲奈、ゆっくり味わって」
五來「蒼紫」
蒼紫「なに?」
五來「私は食べ終わったら寝るよ」
蒼紫「そう。おやすみ」
五來「おやすみ」
五來はフォークで突き刺した目玉を口へ運び入れた。
おわり
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