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脚本43「真夜中のおやつ-慈悲引き」

《懺悔室って入ってみたいな。
懺悔することないけど》


●登場人物
◯山部
○安住
◯神父


神父「迷える子羊よ、あなたの罪を告白してください」
山部「はい。私は以前、友人を騙しました。そのせいで、彼女は大きな怪我を負ってしまいました。ずっと後悔しています。そして、私は先日、彼女に謝りに行こうと決意し、会いました。そこで、私は……私は彼女を殺してしまいました」
神父「慈悲深き父と子と聖霊の御名によって、あなたの罪を赦します」
山部「ありがとうございます」
神父「罪の意識をお持ちでしたら、自首することをお勧めいたします」
山部「……はい」

 山部は去っていった。

神父「……また、殺人。私はどうしたら」

神父の目には幾人もの被害者の姿が映るようだった。

山部「……秘密ですよ……御慈悲があらんことを……」

 急に戻ってきた山部が言葉だけを残していった。

神父「あまりにも、重い」
安住「懺悔します」

 信者の安住が入室してきた。

神父「迷える子羊よ、あなたの罪を告白してください」
安住「私は、また殺人を犯してしまいました……。先週神父さんに懺悔をした殺人とは別のものです……。私はどうしたらいいのでしょうか……自主、何度もしようと思いましたが、そのたびに殺してしまうのです」
神父「それほど罪の意識をお持ちならば、勇気を持ちましょう」
安住「だって、楽しいのです……」
神父「……」
安住「どうされました?」
神父「慈悲深き父と子と聖霊の御名によって、あなたの罪を赦します」
安住「許してくださるのですか」
神父「迷える子羊よ、あなたは罪を告白しました」
安住「あー気が楽になりました、ありがとうございます」

 安住は去っていった。

神父「……。父よ、私に御慈悲を……ああ」
安住「また来ます」

 安住は神父側の扉に向かって言葉を残した。

神父「迷える子羊よ、私の罪を告白します。私は、全ての犯人を知っています。誰も知らない犯人を知っています。しかし、慈悲深き父は彼らをお赦しになった。私の罪も、お赦しになりますか」

 協会が少し揺れる。震度3といったところか。地震が起きたようだ。

山部「懺悔します」
神父「迷える子羊よ、あなたの罪を告白してください」
山部「私は殺人の現場を目撃してしまいました。しかし、どうすることもできず、今ここにいます。彼らを止めることが出来ない。私はまた殺人を犯しました」
神父「……あなたは罪を告白しました。彼は罪を告白しないのですか。慈悲深き父はあなたの罪を赦します」
山部「ありがとうございます」
安住「もう止められない」
山部「赦してくださるのですね」
安住「だって、楽しいのです……」
神父「あなたが、自首するべきなのです」
安住「懺悔します」
山部「迷える子羊よ、あなたの罪を告白してください」
神父「私は、すべてを知っています。私は、すべてを知っているのです」

 強い地響きで、協会のキリスト像が傾き倒れ掛かった。懺悔室は潰されたが、神父に怪我はない。
 神父が出てきて地響きは止んだ。

神父「御慈悲を……」

 倒れたキリスト像の衝撃で、亀裂の入った床が抜けた。神父は引きずり込まれるように床下へ飲み込まれていった。
 「御慈悲を……」空耳だろうか、その声だけが訪れる信者に聞こえ続けるという。小さな地響きと共に。

おしまい


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