脚本32「真夜中のおやつ-納骨堂」
《あんま好きじゃないんだよね、ここ》
●登場人物
◯間優弥(はざま・ゆうや)
◯世良島(せらじま)
◯間紀子(はざま・のりこ)
間家の祖父が亡くなって四十九日。僕らは自宅に安置しておいた祖父の遺骨を納骨するためお寺に来ていた。納骨式は親族のみで行う。
祖父には友人もいたが、皆身体の調子は思わしくないのだ。無理をして来てもらっても、祖父は申し訳なく思うだけだろうという考えもあって呼んでいない。葬式に来てくれた、それだけで十分だ。
世良島「納骨堂ですか?」
優弥「はい、場所はこっちでいいんでしょうか」
世良島さん。お寺の住職だ。今回読経して頂くにあたって何度かやりとりをしていたから緊張はあまりしていない。
葬式もそうだが、何もかも初めての経験で不安だったから、住職の大らかな雰囲気に安心している。
世良島「お爺さんが亡くなって、もう四十九日ですか。早いですねぇ」
優弥「えぇ、昨日も話していた気がしますよ」
紀子「優弥、どこに行ってたの。納骨堂? こっちも手伝ってよ」
優弥「母さん、料理の準備は美香に頼んでたじゃないか。俺は納骨堂に供え物をしなきゃ」
紀子「もー、早く戻ってきなさいね」
母は、女手一つで僕ら兄妹を育ててくれた。父親はいない。だから僕は母と一緒に喪主というわけだ。妹の美香も色々と手伝ってくれる。
毎日忙しかったけれど、祖父と将棋をうっているときは和やかに時間が過ぎていたことを思い出した。
世良島「納骨堂?」
優弥「え? はい、納骨堂に行きます」
世良島「こっちだよ」
優弥「結構離れてるんですね」
世良島「数が多いものでね、どんどん広くしていかないと」
優弥「あった、間家の仏壇も久しぶりに見た気がするな」
世良島「お盆の時くらいは来てあげてください」
優弥「そうですね」
世良島「じゃあ、ここで。納骨堂ですか?」
優弥「え? はい」
はい。と返事をしたが、違和感を覚えた。世良島さんの言動に。
いや、イントネーションに。
世良島「納骨どうですか?」
優弥「え?」
世良島「納骨どう?」
そうか、この人は最初から納骨堂なんて言ってなかったんだ。納骨どう?って聞いてたんだ。
僕は、はいと答えてしまった。
紀子「優弥ー、いつまでやってるの?」
世良島「納骨どうですか?」
紀子「ええ、案内してくださる?」
完
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