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連作短編小説《転生勇者三部作》1-2「転生勇者は無双する」

連作短編小説《転生勇者三部作》1-1「転生勇者は無双する」の続き

【3】神の言葉

表彰式は鳥足さんの回復を待ってからか。少し時間が余ったな。
俺は控室で休むことにする。一人になりたいし。

控室の長いベンチに腰をかけると、涙が溢れてきた。

「俺は、日本最強の剣士になれただろうか。長かった……十七年、長かった」

涙声でも、声に出したかったんだ。だって、これは嬉し涙じゃない。
優勝したことがうれしいわけじゃない。これは過程に過ぎないから。

悔しいんだ。あの悔しさが消えないんだ。

「すまない、アニス……すまない。すぐに助けに行くからね」

鼻をすすり、涙を拭って

「さぁ約束は守ったよ神様、日本最強の剣士になったよ」

どうだ、神様。約束は果たせた。答えてくれ。

「まさか、ここまで強くなるとはな。もう魔王に負ける心配はないと?」

頭の中に神様が語り掛けてきた。ボリュームを下げてくれ、頭痛がする。

「ああ、この世界で最強になれた。異世界でこの能力を何倍にも跳ね上げれば、俺は、今度こそチート勇者になり魔王を倒す!」

「あれから十七年経っているのにか? あの世界がどうなっているのか、知って後悔はないのか? この世界で今まで通り生きていけば、平和に生きてゆけるのだぞ」

なんだよ、そんなに元の世界に行かせたくないのか? そんなことはどうだっていいんだ。俺は元の世界に帰るんだ。
そう思っていると、つい声を荒げてしまった。

「俺は生まれてから一度もアニスを忘れたことはない! 神様、あんたが記憶を持ったまま転生させたんだろ。責任をとれよ」
「……世界を救う勇者になるか」
「なる!」
「いいだろう。アニスを救うのだ勇者シャイル・サングよ!」

きたーー! あとは死ぬだけだ! 俺は、やっと元の世界に転生できるんだ。

「宵東君、待たせてすまないね」

急なノックにびっくりした。訪ねてきたのは鳥足近侍(とりあしきんじ)だ。すぐに気絶から復活したらしい。

西洋剣術大会の運営委員に聞いて控室に来たんだろう。

「あれ? 一人かい? 今誰かと話してなかった?」

聞かれてたら面倒だな……。とりあえず誤魔化しておく。

「誰もいませんよ。鳥足さんは大丈夫ですか、頭は」
「ひどいなぁ、それじゃあ僕の頭が悪いみたいじゃないかぁ。ははは」
「いえ、そんなつもりじゃ」
「わかってるよ、わかってる」

なんだこの人、試合とキャラが全然違う。もっと渋い人かと思ってた。

「表彰式が始まるよ」

ああ、呼びに来たのか。一緒に会場に向かうことにした。

「ねぇ、宵東君。最後の、魔王ってなんだい?」
「え?」

こいつ気絶してなかったのか? 迂闊に言うんじゃなかった……。でも、言っても信用しないだろう。

「僕の前世は、異世界の勇者でした」

あえてストレートに言ってみたが、案の定、豆鉄砲を食らった鳩のような顔している。そして、大笑いして言ってきた。

「宵東君は面白いことを言うねっ。さっきまでの鬼のような剣士からは想像ができなかったよ。前世が勇者か」

鬼のような、ね。勇者なんだけどな……。鬼みたいって言われるのはキツイな。だいたいこの人だって全然《侍》じゃないし。

「鳥足さんこそ、《侍》って言われてる割には、おちゃらけてますね」
「《侍》なんて試合中の僕しか知らない人達が勝手に付けた名前だしね」
「僕の《剣鬼》ってのも、同じですね」
「でも《剣鬼》ってのは的を得ているよ。あの時の君は恐ろしかった。一撃一撃が命を取りに来てたよね」

モンスターと戦いまくってたから自然と出ちゃうんだよ。殺気。
世界が違えば、殺気の受け取り方がこうも違うのか。
というか、あなただってすごい殺気でしたけど?

「それは鳥足さんもですよ。最後の居合なんて真っ二つにされるかと」
「でもあれはずるいよなぁ、飛び上がるなんてさ。あれこそ異世界の剣技ってやつ?」

案外異世界話は受け入れらているな。まぁ、異世界ではよく使われる身体技術だから本当のことなんだけど。

できる人は多いから魔王に通用するスキルではない。

「ええ、そうです。でも魔王には通用しなかった」
「あはは、出た、魔王! 魔王と戦った勇者か。そりゃ勝てるわけないよな」

んー、やっぱりちょっと異世界話は軽く考えられているな。というかちょっと馬鹿にされてる? 

……変な人って思われてるかもしれないけど、まーいっか。もう関わることもないだろうし。どう思われたって。

「僕はね、今まで負けたことが無かったんだ。だから高校生のときも三年連続優勝したよ。あっはは、自慢みたいだよね」

ああ、自慢だな。負けたことが無いか……。俺はそんなことはないから、どんな気持ちなんだろうな。俺に負けて。

「でもね、宵東君に負けて楽しかった。変だよねぇ、負けたのに楽しいって」
「ですね。頭強く叩きすぎましたかね」
「冗談言うねー、でも、アタリ。あの衝撃は対等な剣士、僕以上の剣士がいることの証明だったから」

負けを知って、目標を見いだせたってところか。少し俺と似ているかもしれない。俺は魔王に負けて、本当に救いたいものを知らしめられたから。

そう剣術の話をしながら会場へ入ると、観客が沸きあがって、すぐに表彰式へと移った。

「表彰状、西洋剣術大会優勝『宵東旭日』貴殿は数ある剣術の中で、己の道を究め、他の追随を許さぬ武術で、勝利を手にしたことをここに讃える」

変わり映えのしない普通の表彰式であったが、恙なく終了した。
このために時間をおいて鳥足さんを待っていたのか。時間の無駄だったな。

「そういえば、鳥足さんはなんで表彰式に拘っていたんですか? 普通の表彰式だったし、何か特別なこともなかったから」

鳥足さんは向かい側の観客席を指さして、

「僕の師匠が来ていてね。本当は優勝したところを見せてあげたかったんだけど。まぁ、負けた相手が君なら師匠も許してくれるさ」

そう笑っていた。

師匠という人は、結構な歳に見える。だから、深くは聞かずに納得することにした。

師匠、か。俺の師匠もどうしてるだろうか。魔王討伐の報告、したかったなぁ。


⇒続きは
連作短編小説《転生勇者三部作》1-3完「転生勇者は無双する」

◆まとめ
 連作短編小説《転生勇者三部作》1-1「転生勇者は無双する」 
 連作短編小説《転生勇者三部作》1-2「転生勇者は無双する」
 連作短編小説《転生勇者三部作》1-3完「転生勇者は無双する」
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