脚本7「ある日‐愛愛愛愛愛愛(アイラブユーったらアイラブユー)」
《正直に言う。恥ずかしいから読まないで。》
●登場人物
◯祭賢人(まつり・けんと)
◯尾踊京市(おどり・きょういち)
◯大和直継(やまと・なおつぐ)
○久留米望月(くるめ・もちづき)
○仲間土筆(なかま・つくし)
祭「恋をするとは、自分が主人公の物語を作り上げること。恋に恋をするとは、自分が作り上げた物語に恋をすること。じゃあ、愛するってなあに?愛と恋……二つは同じようで、まるで違う。恋とは一方的な思いの矢尻、一方、愛とは互いの矢尻が繋がっている。その視点からみると、愛するとは……」
土筆「愛するとは?」
祭「うっお、居たのかよ」
土筆「教室から声が聞こえると思ってさ、いや、何も聞いてねーよ。大丈夫だ」
祭「やめてくれぇぇ……」
土筆「なに。次の舞台のセリフ?」
祭「いや、違うよ」
土筆「ああ、なんか取り憑いてたんだな、お祓いいこか」
祭「ちょ待てよー、割と真剣に考えてたから声に出ちゃってたんだって」
直継「え、なに、二人して……キス?」
祭「は?」
土筆「ちげぇよ! 離せ!」
祭「いたいっ、待ってっ」
土筆「お前が掴んでくるから…ってこのやり取り! ダメだ!」
直継「なぁ、もっちゃん、怪しいよな」
望月「やぁねぇ」
祭「聞くけどさ、皆はどう思う? 一つの例題について考えてたんだ」
直継「ふぅん、どんなん?」
祭「恋をするとは、自分が主人公の物語を作り上げること。恋に恋をするとは、自分が作り上げた物語に恋をすること。じゃあ、愛するってなあに?」
京市「それってあの山柄藤五郎(やまのえとうごろう)が言ってたやつ?」
祭「京市知ってんの?」
京市「劇作家でしょ? 明治の」
直継「へぇ、そんな昔の人の言葉ひっぱりだしてどしたん」
望月「恋を、したんだなっ?」
土筆「まっさか。だってこれは創作について言ってるんでしょ?」
京市「いや、山柄藤五郎ってのは劇作家だから、きっと恋っていう事象を創作っていう身近な事に例えて言ってるのかもしれないよ」
土筆「とすると、その藤五郎ってのは愛するってことを知りたがっていたってことか?」
京市「そうなるね。ひょっとしたら、好きな人は居たけど、その人と結婚してもいいのか悩んでいた、とか」
直継「乙女か」
望月「おっさんじゃん」
直継「乙女座のおっさん」
望月「それはいっぱいいるでしょ」
祭「おっさんにも恋をさせろよ」
京市「んなことだから不倫が絶えないんだ!! ちくしょう!!」
祭「なにかあったの?」
直継「聞いてやるな」
京市「ちくしょーーーーー!!!」
土筆「窓から叫んでやがる」
直継「なんか青春」
望月「ただの馬鹿だろ」
祭「そんなやられたら気になるんだけど……」
京市「ちくしょーーーーーー!!!」
直継「でも、まぁ、恋をするとは自分が主人公の物語を作る、か。たしかに、恋ってのは主観的なものだからな……」
祭「愛するって、なんなんだろうな」
土筆「賢人はどうなん? 賢人は人を好きになるとどうなるんだ?」
祭「……恥ずかしいな」
土筆「自分でした質問なんだからまず聞かせろよなー」
祭「おれは、好きな人はお姫様だと思って過ごす」
土筆「は?」
望月「頭お花畑じゃん」
直継「変態か」
祭「みんなそう言うんだよ。けど、誰がなんと言おうとお姫様なんだ。自分が絶対に守らなければいけない人で、憧れでもある。その人のためならなんだってできる、その人が居るだけでなんでもできる。そんな気持ちになれる人っておれのお姫様って以外に表しようがないんだ」
土筆「へぇ。理由はあるんだな」
直継「で、賢人が王子様なん?」
祭「そうであれば、いいけどな、おれは村人で充分さ。お姫様が王子様にしてくれたら、最高かもなあはは」
土筆「マジな回答がきたな」
望月「いやまさかね」
直継「でも結局はそれって愛じゃなくて、恋の延長だよ。一方的な気持ちの押しつけ、じゃない?」
祭「だよね。直継はどうなんだよ」
直継「そうだな、ペット、みたいな感じかな……」
望月「ペットって、おま……」
土筆「まともなイメージが浮かんでこないんだが」
祭「おまえさっきおれに変態っつたろ」
直継「まってまって、聞いて聞いて。一緒にいて落ち着く人が好きってことだよ。楽しいとか、嬉しいとか、そういうのもあるんだけど、おれが何かをしていても、その子は別のことをしてる。それでもなんとなく、お互いが近くにいることを感じられる。そんな感じ」
土筆「たしかにペットって居るだけで癒やしだよな」
望月「表現考えような?」
祭「京市はどうなん、いつまでも項垂れてないでさ」
京市「んあぁ」
土筆「京市は人を好きになったらどうなる?」
京市「もっと相手に自分を知ってもらいたくなる」
望月「まとも」
祭・直継「いや、まともて」
祭「俺たちが異常みたいななぁ」
直継「失敬だな」
土筆「なんで知ってもらいたくなるんだ?」
京市「周りの人が知ってる自分のことなんてたかが知れてるだろ? 誰だって隠してることはいっぱいあるはずだ。そんな未完成の自分を好きになってもらっても、新しい部分も好きになってもらえるかはわからないでしょ。だったら早めに気づいて早めに嫌いになって欲しい。なんならおれのことを好きになる前に嫌いになって欲しい。から、かな」
土筆「おまえ、ネガティブすぎね?」
直継「好きになってもらうって、怖いもんな」
祭「どうせ嫌われるんなら、最初から好きにならないでくれって思うよな……」
望月「もう誰も好きになりたくない……」
土筆「伝染してる伝染してる。ネガティブ伝染させんなや」
京市「あぁ、すまん……ちっくしょぉぉーーーーー!!!!」
直継「まただよ」
祭「まじで何があった」
土筆「ほっとけ、で、もっちゃんは?」
望月「おれはね、相手のことをもっと知りたくなる」
祭「あ、わかる」
直継「いま何してるのかなーとかも入る?」
望月「入る入る。なんかさ、頭から離れなくなるんだよね。昼ごはん何にしようかなぁとか考えるだけでも、あの子にもこの店教えたいなぁとか、でも何が好きなんだろうとか、どんなことでも知りたくなって、今の自分の考えてることと重ね合わせたくなって」
直継「結構表に出すと重く思われるやつだ」
土筆「でも漏れ出ちゃう、と」
望月「それ」
祭「はぁ、い~なぁ」
望月「てか聞いてばっかでつっくんどうなんよ」
土筆「おれ? もう意見は充分っしょ」
祭「いや、逃さねぇよ」
直継「答えるまでネットに恥ずかし情報流しまくるぞ」
土筆「っはぁ? ちょ待てよっ」
直継「蛇口告白事件、人妻お忍び野球観戦事件、サッカーボールの戦争事件などなど」
土筆「やばいのばっかじゃねぇか!」
望月「言うか? 流すか?」
土筆「言うよ!」
祭「さぁ、どーぞっ!」
土筆「おれはぁ、好きになったら恋をし続けるよ」
直継「なんか深そう」
望月「んなこと、どうやって?」
土筆「簡単だよ。毎日新しいとこを好きになっていけばいいだけだし。今日は前髪が可愛いとか、指こんなに細かったんだとか、目合わせると少し顔赤くしてるんだなとか、どんなことでも好きって気持ちを持って一緒にいれば毎日恋はできる。その子を全てを何もかも好きになるんだ。最期には好きなところが何個あるか、数え切れないって、それくらいおれは恋をし続けるよ」
京市「そんなん幻想だぞ」
祭「結婚したら女は変わるっていうしな」
土筆「変わるなら変わったその子も好きになればいいじゃないか」
望月「夢物語とはこれのこと」
土筆「経験したことがないのに真実はわからないだろう? それに人類が誕生してどれだけ経とうが実証は出来ないんだ。人は生き返らないからな。ずっと、二人だけの秘密で仕舞っておける思いなんだ」
直継「なんかいいな。理想だし、相手もそう思ってくれてたら楽しいだろうな」
祭「まぁ、な。口に出さなくっても良くてさ、互いになんとなく好かれてるなぁってわかり合ってればいいというか」
望月「結局好きで居てほしいんだよ。恋をしたなら、恋をしてほしいんだよ」
祭「そうか!」
直継「どうした?」
祭「あれだよ、愛するってなあに? ってやつの答え。というかおれなりの答え」
望月「出たんだ」
祭「うん、恋をしたなら、恋をしてほしいんだ。互いに、互いの恋に恋をしてほしいんだ。それが愛なんじゃないかな。互いに相手のことを思いあって、相手のことを信じ合う。こと」
土筆「てことは?」
直継「恋をするとは、自分が主人公の物語を作り上げること。恋に恋をするとは、自分が作り上げた物語に恋をすること。じゃあ、愛するってなあに?」
祭「相手が主人公の物語を作り合うこと」
おわり
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