脚本44-1「トットランドのお話-シンデレラは死んでない」
《童話の国は今日もオカシイ》
●登場人物
◯シンデレラ
◯かぼちゃの魔女:メアリーメリー
◯クリケット王子
〇長女姉:エミリー
○次女姉:エマ
○ハレンスエール医師
エマ「シンデレラ! 埃がたまってる。掃除しなさい」
エミリー「あら、ここにも汚れが付いてるわ」
エマ「エミリー姉さん、それはシンデレラよ。あはははは」
シンデレラの二人の姉、エマとエミリーはシンデレラのいない部屋で箒を叩きながら話していた。
エマ「私たちはどうして王子様と結婚させてもらえないのかしら」
エミリー「王子様はシンデレラと結婚するからよ」
エマ「私もシンデレラになりたいわね」
シンデレラ「私になりたいって? お姉さま方」
エマ・エミリー「シンデレラ!」
シンデレラ「お姉さま方、ここが奇麗すぎるわ。しっかり汚しておきなさいね」
エミリー「ごめんなさい!」
シンデレラ「しっかりしてくださるかしら。私の不幸さをちゃんと引き立てていただかないと。脇役のお姉さま方」
テーブルの角を指で拭い、埃が付かないことを確認するシンデレラ。その指で髪をくるくると巻きながら姉たちを見下す。
長女のエミリーは箒を体の前に抱き着かせ、申し訳なさそうな顔。次女のエマはせっせと箒を振り回し、埃を立てる。
エマ「本当にごめんなさい」
エミリー「許してシンデレラ」
シンデレラ「まぁいいわ。お姉さま方、シンデレラになりたいのよね?」
エマ「え、ええそんな話はしていましたけど」
シンデレラ「じゃあ、なっていただこうかな」
エマ「え? どういうことシンデレラ」
シンデレラ「私とシンデレラを入れ替わってほしいの」
エミリー「そんなことバレたら大変よ?」
エマ「そうよ、トットランドの刑務所に放り込まれてしまうわ!」
エミリー「想像するだけで恐ろしい……」
エマ「あー恐ろしいっ」
シンデレラ「お黙りなさい」
エミリー「シンデレラ……」
シンデレラ「それをバレないようにやるのよ」
エミリー「そんなことができるのなら……」
エマ「シンデレラがいいのなら、私は代わってみたいわ」
エミリー「エマ」
エミリーは次女のエマが先に決断したため、自分も代わってみたいと言い出せなかった。そんな二人の姉を見るシンデレラの顔には計略の色が浮かぶ。
シンデレラ「上出来よお姉さま方」
エマ「でもでもどうしてなの? シンデレラ」
エミリー「そうよそうそう王子様と結婚してー、幸せな生活が送れるのよ?」
シンデレラ「王子様、ね。あいつね、とんでもなく不細工なの」
エマ「えええっ」
エミリー「そんなことなかったわよっ」
シンデレラ「化粧が濃いだけ。それにかぼちゃの馬車はとても青臭いわ」
エマ「そうだったのね……でもでもそれでも私はシンデレラになってみたいわ」
エミリー「でもでもそれでも良い生活が送れるじゃない!」
シンデレラ「あれと一緒に居続ける運命にうんざりなの」
二人の姉は、シンデレラのトットランドに対する裏切り行為を非難するわけじゃなく、賛同し協力する方向へと傾いている。
今までシンデレラが思っていた不満を受けてはいたが、それでも憧れのシンデレラになりたいという欲求が勝ったのだ。
シンデレラ「それで、入れ替わる方法だけどね」
エマ「うんうん絶対にバレない方法よね」
エミリー「待って。周りを確認しないと」
エミリーは窓を閉め、カーテンを閉め、ドアのカギがかかってることをしっかりと確認した。
シンデレラ「私が死んだことにするの」
エミリー「えええっそんなそんな」
エマ「そうよシンデレラが死んじゃったら、お話が成り立たないわよ」
テーブルに両手をついてささやかに抗議する二人の姉。シンデレラになりたい思いが本気で抗議しきれない一因だろう。
シンデレラ「お姉さま方は馬鹿でいらっしゃるの? 死んだことにするの。本当に私が死ぬわけじゃないの。だったら苦痛でもシンデレラで居続けるわよ。だから協力してくださればいいの」
エマ「今入れ替わるだけじゃダメなの?」
シンデレラ「ダメなの。それじゃあ急に顔が変わってしまうじゃない。それはいくらなんでもおかしくってよ。ヘンゼルとグレーテルじゃあるまいし」
エマ「え?」
エミリー「あははは。エマ、「お菓子を食べる」と「おかしくって」をシャレたのよ」
エマ「あはははは!」
エマに耳打ちをして愛想笑いを促す。ただシンデレラは特に気合を入れて言ったわけではないらしく、そのまま入れ替わり法の説明を続ける。
シンデレラ「シンデレラの死を偽装して、新しいシンデレラに立て替えるの。公にね」
エマ「なんて大胆な」
エミリー「でもそれくらいしないと三匹の子豚小屋に放り込まれてしまう」
エマ「あそこには拷問部屋もあると聞くわ」
エミリー「あー恐ろしいっ」
シンデレラ「これより“新デレラ作戦”を開始します、お姉さま」
エミリー「イエス! デレラ!」
エマ「デレラ!」
シンデレラ「この物語の終わりは、そう、これよ。“シンデレラは死んでしまいました”」
決意を固め、トットランドへの反逆ともとれる行動に移るシンデレラ三姉妹。
☆
翌日、「新デレラ作戦」当日。そしてお城での舞踏会の日。トットランドに不信感を与えないよう、いつも通りに進行する。
エマ「シンデレラ! シーンデレラー!」
シンデレラ「はい、お姉さま。なんでしょうか」
エミリー「なんでしょうか。ですってーおほほほほ」
二人の姉はシンデレラに厳しい当たりをする。虐げられるシンデレラは、どこか嬉しそうである。作戦当日の興奮が抑えきれないのだ。
エマ「シンデレラ! 埃がたまってる。掃除しなさい」
エミリー「あら、ここにも汚れが付いてるわ」
エマ「エミリー姉さん、それはシンデレラよ。あはははは」
シンデレラ「ごめんなさいお姉さま方。すぐに綺麗にします」
エミリー「ほぉら、暖炉の灰も奇麗にねぇ!」
そう言ってエミリーは暖炉から灰をバラまいた。バサァとシンデレラにかかる灰がボロボロと零れ落ちていく。
エマ「それじゃあ」
エミリー「私たちはお城の舞踏会の準備で忙しいの」
エマ「それをぜーんぶ綺麗にしたら、ドレスのほつれを直しときなさいね」
シンデレラ「わかりましたわ、エマお姉さま」
床にバラまかれた灰を掃除するシンデレラにわざとぶつかりながら姉達は上の階へ上がっていった。
エマ「だ、大丈夫かしらシンデレラ」
エミリー「いつもより強くぶつかってしまったわ」
エマ「いいのよこれで。しっかり周りを騙さなくっちゃ」
脚本44-2完「トットランドのお話-シンデレラは死んでない」へ続く
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