脚本26「右ストレート」
《殴っちゃダメよ》
●登場人物
◯阿藤
◯伊東
101号室の阿藤。102号室の伊東。隣同士の二人は、部屋の前で顔を合わせる。
軽い挨拶ののち、それぞれは自室へ入っていった。
阿藤が電話をかけると、伊東に電話がかかり、話始める。
伊東「はい、もしもし。ひっす、すいません、金は来週には返すんで……い、いや殺さないで嫌だ、いやだ! はい……」
阿藤「あぁ、絶対だぞ。お前来週払えなかったら、もう許さねえからな」
伊東「すいません、すいません、わかりました約束しますから」
阿藤「おう。気ぃつけろよ」
電話を切る阿藤。
伊東「たく、ウゼェな。おれはこれから夜逃げ致しますぅ~。バァカめ!」
プルルルル。と電話が鳴る。
伊東「あ、はい、なんでしょう」
阿藤「仲間に家張らせてっから逃げようとかすんなよ? ぶっころすかんな」
伊東「え、はい」
伊東の返事を聞く間もなく電話は切られた。
伊東「家バレてんのかよ!」
伊東はむしゃくしゃしてベランダに出てタバコを吸う。
阿藤「まぁ、ああ言っておけば逃げねぇだろ。嘘だけど」
一仕事終えた阿藤は、ベランダに出てタバコを吸う。
阿藤「タバコすか」
伊東「はい、悩みが出来まして」
阿藤「あぁ、まぁがんばな」
伊東は吸殻を潰して自室に戻った。そして意思の籠った決意をする。
伊東「強行するか」
ぷるるるる。と阿藤の電話が鳴り、ベランダでタバコを吸っていた阿藤は、タバコを足で踏み消し自室へ戻る。
阿藤「はい」
伊東「金は返さねぇ。逃げ切ってやる!」
阿藤「あっ? てめぇ、ぶっ殺す!」
伊東「やってみろや!」
電話をぶつ切りした伊東は、その勢いでアドレナリンを更に放出。
ブチ切れた阿藤は、脳みそが真っ赤になるほど頭に血が上る。
その二人が、寸分狂わず同時に右握り拳に力を込め、自室の壁に右ストレートを放った。拳は壁を突き抜け、隣室へ飛び出す。
互いの拳は、互いの顔面にめり込んだ。
ゴギィという骨の音が鳴ると共に、壁に倒れ込む両者。
ドロー。
101号室と102号室、両部屋には、壁に右腕がハマったまま倒れる二人の姿が残った。
おわり
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