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tomekantyou1
短編小説14「眼鏡絵」
《美術館ってなんで静かにしなきゃいけないの?》
岡本は美術館で絵画を見ていた。絵画を見る時っていうのは、感傷に浸るなど、自分の世界に入り込む人が多いと思う。だが、岡本はただ見ていた。
言ってしまえば、絵画を見ているが意識は散漫な状態だ。
岡本が見ている絵は、眼鏡がポンと置かれただけの絵だ。
「《眼鏡をかけた人》……人は居ないだろ。あ、置いたってこと?」
そのタイトルの絵と、絵の隣に立っている眼鏡をかけた男。
岡本は、なんとなく似ていると思っていた。
眼鏡と人だ。何がというのはよくわからなかったが、似た雰囲気を感じた。
「眼鏡の絵……このステファン・アバッチオって、何が書きたかったんだろう」
眼鏡だけが描かれた絵を見ていると視線を感じた。
それは、絵の隣にいる眼鏡の男がこっちを向いていた視線。
それを見てしまった。
見てしまったというのは、金縛りにでもあったように動けなくなってしまったから、そう思ったのだ。
そして男は眼鏡を外す。ゆっくりと、岡本を向いたまま。
「ぁぁ……うぁ」
声を漏らすしかない岡本。開いた口から空気を漏らすことが精一杯だ。
仕方がないことかもしれない。
その眼鏡には眼球がくっついていたのだから。
空っぽの眼孔で岡本を見続ける男。その後ろには《眼鏡を外した人》とだけ書かれたタイトルプレートが見えた。
おしまい
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