短編小説13「釣り針のない竿」
《これは何のための釣りなんだ!?》
その日、僕は堤防釣りに来ていた。
釣果は上々。そろそろ切り上げてもよい頃だろうが、思い残していることがある。
釣り針をいじっていると
「あまり大きくないな」
「えっ?」
「もっとデッケェの釣ったれー、おれのようにー。はっははは」
知らんおっちゃんにいきなり言い放たれた。てかマジでデッケェ!どうやって釣ったんだよそれ!
でもまぁ、そういうことだ。数は多いが小さいんだ。
これじゃあスーパーでしか魚を見たことない息子を唸らせられないだろう。
近頃の子供は、魚は切り身で泳いでると思ってるらしい。かくいう僕もまだ二十代、その世代と被ったり被らなかったりな微妙なラインだ。
僕は父親として格好もつけなきゃいけないことだし、針の大きい仕掛けに交換して竿を投げる。
「あんなデッケェのがいるんだからな、いるだろデッケェの」
と、重い引きに当たった!
「ウオォ!」
関係ないが魚を引いて、ウオォつっちゃった。魚ォォみたいな。
「魚ぉっ」
そんな馬鹿みたいな事を考えたからか、仕掛けが千切れてしまった。
「掛からんなぁ」
どうやら横で釣りをしているおっちゃんも釣れないらしくボヤいている。
さっきから何度も針が千切れた竿をあげているが、このおっちゃん何個仕掛け千切ってんだ?
いい加減対策しないとダメっしょ……。
千切れた仕掛けを付け直していると、隣のおじさんに魚がかかったらしい。
「こりゃデカいぞ」
そうは言うが、おっちゃんの竿は全然しなってないぞ。なんなら糸も少し緩んでるじゃないか。
また仕掛け持ってかれたか?
「今日は収穫なしかと思ったぜぇ」
「あのぅ、仕掛け切れてませんか?」
「ん? ああ、いいんだこれで」
「え、でも」
聞く耳を持たず、おっちゃんは釣り糸を巻き上げるが当然何もかかってない。
針が無いんだから当たり前だよ。
それなのにおっちゃんは満足そうに、釣り糸の先端から何かを外す素振りをしている。
何が釣れたのか、すごく気になってしまう。
「あの、何が釣れたんですか?」
「大したもんじゃないよ」
「仕掛けが無くても釣れるものって」
「そんなに知りたいか、まぁ、なんだ。糸と同じ重さだから糸だけで釣れるんだ」
「なにがですか?」
おっちゃんは少し勿体ぶって教えてくれた。
「魂がね」
おわり
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