短編小説38「村を焼く少年」(企画参加/清世さん)
モンスターの呻き声が聞こえる森に、その村は囲まれて存在している。
バチバチと激しく音を上げて燃える村は、真夜中を夕焼けに染めていた。家々は焼け崩れ、少し前の変わらない景色が幻覚だったかのようだ。

少し離れた丘から少年が村を見下ろす。
その表情は無で、何を考えているかは読めなかった。
村はモンスターに襲われたのではない。この少年が焼いたのだ。
自分が育った村だというのに、躊躇なく。
☆
半年ほど前だろうか、村から勇者が選出された。勇者に選ばれた少年は村を上げて送られ、世界平和への期待を一身に背負い旅立つ。
それからもモンスターが減る様子はない。
村を焼いた少年は、その勇者の弟だ。
度々、少年は勇者の行方を探るため、森へ出かけていた。ようやく出会えた商人をしているモンスターに勇気を出して尋ねても、求める返答は得られないどころか殺されそうになる。
『ま、魔人か…? 人…? いや、モンスターだ! 殺せぇ!』
モンスター…?
モンスターに声をかけた少年は、モンスターと呼ばれ襲われる。
少年が自分はモンスターだと知ったのは、その時だった。
少年からすれば人間がモンスターだと教えられていたから。
自分たちは悪くないのに、いきなり襲ってくる人間はモンスターのはずだった。じゃあ、勇者だった兄は…?
当然兄の噂も聞けるはずがない。人間からしたらモンスターの見た目に違いはないのだから、狩ったモンスターを覚えているはずもなかった。
命からがら村まで逃げてきた少年は、村長に尋ねる。自分たちはモンスターなのかと。
世界は人間が主軸で回っている、人間の敵は誰であろうが世界の悪だったのだ。
この村のモンスター達は、そんな決まりを無くしたかった。だから人間をモンスターだと教え子供を育てることにしたらしい。
幸い、村に住むモンスター達は人間に近い見た目の種族だったこともあり、大人たちが喋らなければ簡単に信じ込ませられていた。
そうして、森の中の村に閉じ籠っていた。
それじゃあ、勇者である兄はどうなったのか。少年はショックで力の抜けた体で尋ねる。
村長は、答えない。
少年は鋭い爪で村長の腕を刺し、答えさせた。
「この村を人間から守るためだったのだ、君の兄は知った上で旅立った…」
村長は求める答えを言わない。少年が聞いているのは村長の思いではない。鋭い牙を剥き出しに更に問い詰めた。
「魔王の保護下に入る為には、生贄が必要だったのだ…だから…タスケ」
兄は本当に勇者だった。世界平和の為ではなく。村の平和の為だけの勇者。
特別魔力の高いモンスターは、魔王の餌として使われるらしかった。
少年は勢いよく村長から爪を抜き、家を出る。
歩きながらブツブツと唱える少年は、手から火を出し、通る場所全てを焼き尽くした。寝ている村人は、脱出する余裕もなく焼き尽くされる。
☆
丘からオレンジ色に燃える村を見る魔人の少年は、全ての炎が消えるまで眺め、旅立った。
魔王を倒すために。
勇者でも、悪でも、正義でもない。ただ、目的として。
おわり
こちらは、清世さんの企画「絵から小説」に参加してみました。
画家の清世さんの絵から想像して書くっていう面白い企画ですね。
あと、参加特典で参加者を清世さんがイメージして描いて頂けるそうです。
僕これがすごく気になったので、参加しました(笑)
最後まで読んで頂きありがとうございます。
自分の特技を生かした企画って面白いですね。
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