短編小説22「お料理研究家リュミーのサプライズ」
《驚かせることにポイント振りすぎると
こうなるのかな》
料理研究家の奥平リュミーは、自身の番組でバースデー企画を開催した。この企画はリュミーが普段からお世話になっている番組プロデューサーのために行うそうだ。
なぜなら彼女が有名料理研究家となったのは、この番組が始まってからのことだから。そのお礼を兼ねているのだろう。
「みんなー、ぜったい喋っちゃだめですよー」
甲高い声で注意した。しかし、そんな大きな声で言ってしまっては、スタジオから声が漏れてしまうだろうに。
プロデューサーはまだ来ていないから大丈夫だったようだが、このリュミーが一番喋ってしまいそうだ。
「いい? 番組の最後で私が合図したら持ってくるのよ! 今日は最後の放送なんだから、ぜったいバッチリね!」
今日が最後。そう、番組は終わるのだ。理由は様々だが、最近のリュミーの料理の評判が落ちていたことが大きいだろう。
最初のころは、主婦目線のお手軽節約料理術みたいなレシピが多かったが、近頃何を考えたか芸術的な料理を推し始めたのだ。
『お料理は爆発よー!』は彼女の口癖。
その言葉通りに爆発を模したチョコレートプリンは大不評だった。子供には人気だったのだが、母親からは作ってくれとお願いされて堪らないとクレームも来たほど。
「さー、今日もお料理は爆発よ! お料理は芸術! 芸術は、爆発だー!」
テンションをぶち上げるリュミーにうんざりしているスタッフはテキパキとセットの準備を進めている。
最後の放送は生放送で締めくくる。どんな料理をするかよくわからないリュミーで生放送をするのは危険ではあるが、有終の美を飾らせてやりたいというスタッフ達の思いやりもあってのことだった。
「それでは、始めます」
スタッフの声で場が締まる。
☆
生放送は問題なく進んでいた。放送ギリギリレベルの料理ではあったが、ド派手な誰も家庭で作れるはずもない料理は意外にも反響は良いようで、SNSで盛り上がっていたようだ。
ネタとして。だが。
そして番組の最後。
ついにサプライズのケーキが運ばれてくる。
「はぁーい、じゃあ今日の最後のお料理でーす!」
「わぁ、なんですかあれー!」
リュミーの合図で司会者がわざとらしく驚いた。
「今日はプロデューサーのバースデー! 私の最高のケーキをつくったのー! ささっ、火を消しに来て」
「え! 俺の!?」
プロデューサーは驚きながらテレビ画面の中に入ってくる。演出で裏方が出てくるのはあまり好きじゃない人だったが、出ないといけない雰囲気になってしまっていたから仕方なく出てきたと思う。
「さ、早く消してー」
「ああ、ありがとうな」
だがプロデューサーはなかなか火を消さない。急にテレビを意識し恥ずかしさが出てきたから。
「さぁ、早く消してー!」
リュミーはなぜだか焦りだした。生放送の終了時間が迫っているからだろう。放送終了後に火を消しても意味がない。
「あ、ああ、そうだよな」
プロデューサーが急いで消しに近づいた『ボゴァァンッ!!』
ケーキが大爆発を起こした。セットもカメラも何もかもがめちゃくちゃに飛び散らかる。
リュミーはケーキに大量の爆薬を仕掛けていた。そしてロウソクの火を消すのが間に合わず引火した。
本来なら間一髪でしたー。で締めくくる予定だったリュミーの企画。それはテレビ史上に残る大惨事となって生放送を終えてしまった。
『お料理なんかつまらない。爆発が最高だわ』
これはリュミーが放送前に呟いていたSNSの投稿である。リュミーの本当の目的は爆破させることだったのでは、と考察が繰り広げられることとなっている。
その日以降リュミーは姿を消している。全国で指名手配となっているが、未だに手掛かりはつかめない。
ただ一つ、昨日SNSにこの文が投稿された。
『明日また驚かせてあげるねー!』
おわり
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