脚本39「人造人間パドウ‐パドウの波動‐」
《ハズレな能力って可哀想だよね》
●登場人物
◯掌定波紋(しょうてい・はもん)《パドウ》
◯馬佐良光兵(ばさら・こうへい)所長
○エーテルゾンビ
○掌定音波(しょうてい・おとは)
◯煮凝灯籠(にこごり・とうろう)《ニトロヘッド》
○原原九十(ばるはら・ないと)
○豚①
○豚②
波紋を描いた眩暈のするようなネクタイが風に靡く。爆音が夜に轟いた。
迫り来る爆熱が男が掌をかざすと、勢いを止める。炎に照らされた男の姿は一見会社員のようだが、ジャケットもパンツも波紋柄が敷き詰められていた。
パドウ「ウェイウェイウェーイ、もう限界じゃねーーのぉ? ニトロヘッッッド!」
ニトロ「ブ、ぶるべぇっ!」
パドウ「いやさ、おまえ、もう何言ってるかわっかんねって」
ニトロ「ずぃねぇパドーーー!!」
ニトロヘッドは近くにあった電柱に自身の頭を叩きつけ、爆発を起こした。奴の能力は、《自分の頭をぶつけたものを爆発させる》能力だからだ。
爆熱はさっきと同じように防ぐが、飛んできたコンクリの欠片は身体を逸らせて避ける。
ニトロ「ッ……カ……」
パドウ「おまえマジで死んじまうぞっ! 諦めろ!」
ニトロ「……」
自身の爆風で飛ばされ、落下するニトロヘッド。パドウはその横に着地するが、ニトロヘッドは気絶していた。
パドウ「うへぇ~、生きてんのかコレぇ」
☆
《現象》に意志が発見された近未来。政府はそれを戦争へ利用しようと考え、極秘裏に各分野の学者らが招集された。
それから十年。幾多もの失敗を重ね《現象》の人造化に成功する。それが人類にとっての失敗となるとも知らず。
人造人間《フィノメノン》と名付けられた彼は、すぐに自由意志を獲得した。誰に支配されるでもなく、一人の人間として世間に消えていった。
残された研究所は、数えきれないほどの失敗作を残し閉鎖される。
いや、一人だけ、物語がある。
「馬佐良所長、あの子だけは連れて帰らせて」
「ダメだ! 一体だって出しちゃイカン!」
「実験で成功したら返すって……」
「失敗だよ! アレはどこかに消えてしまったんだからな」
「こ、この……っ私の子を! 返せ!」
「グハァッッなに、なにを……ギャッ」
「所長っ、し、死ね、死ねぇっ」
「しょ、掌定く、ん……」
☆
人造人間《フィノメノン》が脱走し、十年。研究所が閉鎖されても尚、隠れて研究を続けている学者が居た。ハグレ学者が作った未完成の人造人間は、実地訓練と称し犯罪に利用されていた。
それを止めるべく、かつて研究所で失敗作とされるも唯一生き残った《パドウ》が動き出す。
これは人造人間パドウがヒーローになる物語。
☆
さて、話を戻そう。パドウがニトロヘッドを捕まえた後の話だ。
パドウ「おいコラ、目ぇ開けろやニトロヘッド」
パドウは気絶してるニトロヘッドの頬を叩き、起こす。起きるまで叩く。パチと目を空けたニトロヘッドは瞬時にパドウへ頭突きを食らわせる。
『バドォゥン!』
目の前の爆発で身体が飛ばされるパドウ。その爆風に乗って逃げるニトロヘッド。
ニトロ「ばたたばぽーぅ」
おそらく「またなパドウ」と言ったのだろう。
パドウ「に、逃げられたーーーーーー!!」
自宅に戻るとパドウはスーツを脱ぎ、波紋柄マスクを脱いで、そろりと風呂へ向かう。
音波「波紋、帰ったの?」
波紋「お、おう! 母さんまだ起きてたのね」
音波「ニトロヘッドは捕まえたの?」
波紋「そっりゃあ~どうにかしたさ」
音波「まさか逃がしたんじゃないでしょうね」
波紋「風呂行ってくらぁ、明日学校だしなっ」
音波「波紋!」
掌定波紋。彼はパドウという名でヒーロー活動をしている。能力は《皮膚を叩くと全身に波が発生し、触れたものを振動させる》ことができる。
その能力は防御にも使えるが、万能ではない。よって飛んできたコンクリは波動を突き破ってきた。
波紋「いつつ、今日は擦り傷が多いなぁ」
☆
同日。秋葉原。
「おい、なんだよアレ。コスプレか?」
「なんのキャラだ? あんなアニメ知らない豚よ」
「けどすごくね? 金かかってそー」
「気にするでない豚。我々が向かうべきは萌えっ娘にゃんにゃん倶楽部です豚よ」
「ちょっとだけ聞いてくる! 気になって萌豚活動に専念できん」
豚が話しているのは、特殊な格好の多い秋葉原の中でもひと際目立っている全身発光している人のことだ。あまりにも光りすぎて、その辺りだけは朝のようだ。
「すいませぇん、あの、そ、それはなんというアニメのコスプレでござろうか」
発光体は、無視をする。豚は勝手に発光体を触ろうとし
「コレ、電気じゃない、ですよねぇウギャアアアアババババババババッッッッッ」
「何が起こった豚ああああ!!??」
触れた瞬間に感電したように発光する豚。そこに駆け寄る豚。光る豚に触る豚が
「ハバァアアア! 豚あああっ! ぶぶ豚アアアパパパパ」
光る豚二体を引き連れた発光体は秋葉原を歩く。彼らに微かにでも触れれば、豚と同じ末路を辿る。意志もなく、ただ光り、歩くだけのゾンビのような存在に。
人が密集する秋葉原では、すぐに伝染していった。
発光体が蠢くこの街は、封鎖された。
事件はすぐにニュースで伝えられることになる。危険区域に設定され、人の出入りを禁じられた秋葉原。その発光体は《エーテルゾンビ》と名付けられた。
おわり
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