結婚記念日
結婚記念日(1周年)。お付き合いで言えば3年記念日だった。先週のこと。
記念日当日は平日だったから、土日に分散して美味しいものを食べたり、プレゼントをあげたりして過ごした。いつもとそう大差ない過ごし方だったけれど、幸福な時間だった。
恋愛感情は3年しかもたないという。たしかにそうかもしれない。だけど恋愛感情とはまた違った、もっと揺るぎのないもの、絆と言ってしまえばものすごくチープな表現になってしまうけれどそれに近しいものが私たちをつないでいてくれるので、これでいいなと思える。
もちろん大好きであることには変わりない。たまには喧嘩もするし苛立ちのあまりぶん殴りたくなることもあるけれど、私のパンチなんかより猫パンチのほうがずっと痛くて深いと思う。私は夫の肩も揉めないくらい非力だ。
夫婦って面白い。恋愛のように足掛かりのない心もとなさは時とともに薄れ、同時にお互いへの確信が徐々に育っていく。この確信こそが二人の土台を形づくり、この先数十年続くであろう生活を支えるのだ。
日曜日は二人でドライブをした。梅雨の合間のよく晴れた日で、気温は30度近い。山の草木からなのか海からなのか、わっと湧くように漂いだした夏の匂いを一身に浴びながら、道の駅に着く。そこの食堂でたこかつ丼定食を食べた。地元のたこがふんだんに使われたたこかつ丼は予想以上に美味しくて、たこのぷりっとした食感に絡み合う卵の甘みが絶妙だった。
隣の席に、70代くらいの老夫婦がいた。彼らも私たちと同じ定食を頬張っていて、私たちでもそこそこのボリュームなのにすごいな、と感心しながら横目でその様子を見ていた。驚いたのがその後だ。食器を返却しにいったと思われた奥さんが、インスタなんかでよく見るでっかい大盛りのかき氷を二つお盆に乗せて現れたのだ。待って、まだ食べるの!? 入るの!? と思わず凝視してしまう。普段から大食いの夫ですら驚いていた。
固唾を吞んで見守る私たちをよそに、夫婦はテンポよくかき氷を口に運んでいく。私がのそのそと定食を食べ進めている間に(私は遅食だけどよく食べる)、早くもかき氷を食べ終わりそうな勢いだ。小声で何かを話しながらもかき氷を食べる手を止めない二人。その姿を見て、ふいにこの夫婦の歩んできた時間に思いをめぐらせ、じいんとしてしまった。ああ、きっとこの二人は、何十年もこうしてやってきたのだと。
おそらく奥さんが昔から食べることが好きで、旦那さんも事あるごとにそれに付き合ってきたのだろう。夫婦で積み重ねてきた何気なくも分厚い層となった習慣を、歳を重ねてしわしわになっても続けていること。それってものすごく、尊いことなんじゃないかと思うのだ。
他人同士だから、何十年も仲良くいられることのほうがきっと難しい。だけどこのご夫婦は、新米夫婦の私たちの前でその背中を示してくれた。しかもこんなにたくさんの量を食べられるということは、二人揃って健康そのものなのだろう。
夫がどう感じたかは知らないけれど(よう食べるじいさんばあさんじゃなあ、ぐらいにしか思ってないだろう)私はこうなりたい、と思った。しわくちゃになっても一緒に定食を平らげ、デザートに大盛りのかき氷を頬張れる、そんな夫婦に。
私が定食を食べ終えるのとほぼ同時に、ご夫婦も席を立った。二人のかき氷の皿はもちろん空っぽ。けれど二人ともなんてことなさそうな清々しい表情をしていて、あっぱれとしか言いようがなかった。
この先数十年、しんどいこともあれば相手を大っ嫌いになりそうになることだってあるかもしれない。だけど私たちは、一度共に生きると誓い、確信を育んできた仲なのだ。
二人いつまでも健康で、一緒にごはんをたらふく食べられる。そういう夫婦を目指そう。そういう日々を送ろう。
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