ポケットメモ#46 ハリウッド女優がいる家
◾️今日のポケットメモ
ワンピース 金髪 体形
***
久しぶりの帰省。
珍しく弟が帰省するから、私も便乗してみた。
「ただいまぁ」
玄関に大きな靴。
弟が先に帰ってきてた。
会うの久しぶりだなあ。いつ以来?
そんなことを考えながら、リビングのドアを開けて。
…あそこにいるの、誰?
リビングのドアノブに手をかけたまま。
目を見開いて、口をパクパクさせてしまった。
「おかあ、さん?」
「そんなところに突っ立ってないで、入っていらっしゃいよー」
はしゃいだ、甲高い声。
うちのお母さんって、こんなキャラだっけ?
いや。いま確認したいのはそこじゃない!
「お母さん、どうしたの?
その頭!」
…母は。
金髪だった。
「いいでしょ?これ。
白髪染めするのもなんだか飽きてきちゃったから。
金髪はどうかな、と思ったの。
どう?似合う?」
「お母さんの髪、いいだろう?
まるでハリウッド女優みたいだよ」
白髪染めに飽きたからって、なんで金髪?
わけわかんない!
***
一旦、お茶でも飲んで落ち着こう。
ふと見ると、ソファの隅っこにいる弟が座っていた。
普段は庭なんか興味のないやつが、ソファに腰掛けて外を見ている。
まるで現実から目をそうけるかのようだ。
「ちょっと。あれ、どうしちゃったの?」
「俺も少し前に帰ってきたばっかり。
わけわかんない。
あの金髪もすごいけど、お袋の着てるワンピース、見覚えない?」
弟に言われて、改めて母を見る。
あのワンピース、見覚えあるような気がするけど。
…そうだ。アルバム!
本棚からアルバムを持ってくる。
すごい速さでページを捲る。
と。
「あった! ほら、コレ」
そこには、5歳頃の私と弟。
ワンピースを着た若い母が、笑っている。
遊園地に出かけた時の写真だ。
「せっかく髪を金髪にしたから、合う服がないかなあって押し入れを探したの。
お気に入りだったワンピース、見つけちゃったぁ」
嬉しそうに母が笑う。
確かに、似合ってるね。
アルバムの中の母は。
30年ぶりにそのワンピースを着た母は。
体型が別人のように変わっていた。
***
ニコニコと笑い、くるっとポーズして見せる母。
マリリンモンローみたい、と喜ぶ父。
そんな二人を見て、顔を見合わせる私と弟。
ビリビリ!
今。
何か、音が…したよね?
***
私たちはそっとリビングを出た。
階段を上る。
昔使っていた自分の部屋のドアを、パタンと閉めた。
<Fin.>
家族の話。あれこれ。
