ポケットメモ#10 病院の待合室で
◾️今日のポケットメモ
病院の待合室 ご婦人 おしゃれな杖
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病院の待合室。
正面に写っている先生方の名前のとなりは、すべて空白。
診察は始まるまで、まだだいぶ時間がある。
席もまばらだ。
私が腰掛けている椅子。
一つ間を開けて、年配のご婦人が座っている。
ご婦人のすぐそばに、とても綺麗な杖が、背をピンと伸ばしたように立っている。
4点式の杖なので、まるで立っているかのような姿。
なんて、綺麗なんだろう。
艶やかな黒地に金粉を上品に撒き散らしたようなデザイン。
女性物にしては地味な部類になるかもしれない。
でも、なんと言っても、その立ち姿が印象的。
しばらくじっと見ていた私に、ご婦人が気づいてにこりと微笑んだ。
ジロジロ見ていたから、気恥ずかしい。
少しだけ会釈をして、慌ててカバンの中から本を取り出して開いた。
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どのくらい時間が経っただろう。
ふと横を見ると、隣にいたご婦人は若い男性に寄り添われて、診察室に向かってゆっくりと歩みを進めている。
お孫さんが付き添っていたのかな。
なんてスラっとした、姿勢のいいお孫さんなんだろう。
黒い光沢のある生地のパンツ。
黒いセーターには、金色の糸が散りばめられたように編み込まれている。
ぼうっと2人を見ていた。
ご婦人は、お財布だけが入るような小さなカバンしか持っていない。
あの杖、どうしたんだろう?
お孫さんも何も持っていない。
ご婦人が座っていた辺りは、ひっそりとした空間だけが残されている。
もう一度ご婦人の姿を探した。
ちょうど診察室の扉が閉まったところだった。
思い切って、声をかけてみればよかった。
#ポケットメモ
