デカダンスの極致「地獄に堕ちた勇者ども」
「地獄に堕ちた勇者ども」はナチス台頭期のドイツを舞台に
巨大鉄鋼財閥の一族が権力と欲望の中で
崩壊していく姿を描いた作品です。
富も名誉も持ちながら
内部から少しずつ腐っていく一族の姿は
まるで豪華な棺のようで、美しくも恐ろしい映画だと感じます。
特にヘルムート・バーガー演じるマルティンの存在感は圧倒的です。
繊細さ、不気味さ、幼さ、狂気が同時に存在していて
観ている側の精神をじわじわ削ってくるような凄みがあります。
この映画は刺激的な場面でも有名ですが
私はいわゆる「エロティックな意味」で観ているわけではありません。
むしろ惹かれるのは
・時代が狂っていく空気
・権力が人間を壊していく様子
・退廃の美しさ
・滅びへ向かう人間の表情
そういった部分です。
ヴィスコンティ特有の
豪華で耽美なのに冷酷さもある映像美は本当に圧巻で
観ていると「美しさと破滅は隣り合わせなのだ」と感じさせられます。
私は何でも(良いこともそうでもないこともです)考え込む傾向があり
その「過思考」の状況になるとこの映画をはじめ
いくつかの映画を仕事中もモニターにつけっぱなしにしています。
この作品もその「つけっぱなし」の一つです。
(マルティンの加虐行為のところだけは音を消す)
特に印象的なのは、作中で描かれる
「長いナイフの夜」を思わせる粛清の場面です。
享楽と退廃に満ちていた世界が
国家権力による冷酷な暴力へ一気に飲み込まれていくあの空気は
本当に恐ろしい。
この映画は単なる退廃映画ではなく
「腐敗した上流階級や人間の欲望が、全体主義へと結びついていく過程」を描いた作品なのだと思います。
だからこそ、観終わった後に単なる歴史映画では終わらない
重苦しい余韻が残るのでしょう。
※「長いナイフの夜」とは、1934年にナチス・ドイツで実際に起きた大規模粛清事件のことです。
ヒトラーが権力掌握を強めるため、かつての仲間でもあった突撃隊(SA)幹部たちを大量に排除した事件で、ナチス体制がより暴力的・独裁的になっていく転換点とも言われています。
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