博士課程の経済事情
博士課程に進むことを決めたのは,M1の1月頃だった。
学部生の時に合格していた国家公務員試験の権利を行使して春に面接に行くか,そのまま博士課程に進学するかどうか,1ヵ月ぐらい考えて決断した。
小さい頃から研究者への憧れみたいなものはあり,実際研究室の居心地も良かったのでだいぶ進学に惹かれてはいたが,経済事情は考慮せざるを得なかった。
就職と進学を経済面から比較すると,どうしても「給料を貰う機会を捨てて,代わりに授業料を払う」という構図になる。
また,学部,修士で奨学金を借りていた場合は,博士への進学でさらに負債を増やしかねない。
「もう少し研究を続けたいなぁ」と感じている普通の学生にとって,経済面のハードルはものすごく高い。
経験上,これが最近の博士課程への進学率の低下を招く一因であることは間違いない。
自分は最終的には憧れを優先して進学したが,いくつかの幸運もあって博士時代にお金に困ることはなかった。
今回は,自分の博士時代の経済状況を振り返るとともに,問題点について指摘したい。
特別研究員
博士課程の経済状況を語る上で,特別研究員(DC1)は外せない。
noteでも多くの方が解説されているので詳細は省くが,採用されると研究奨励金として月々20万が支給される。採用率は20%程度だったと思う。
博士課程の実質的な支出は授業料で(生活費は何をしてても必要なので),
国立大学の場合,博士課程の授業料は年間で535,800円だ(修士も博士も同じ)。
特別研究員の年間給与240万円から授業料を引くと残りは約186万円。
12ヶ月で割ると月々15万円程度が手元に残ることになり,税金や家賃を払っても,一人暮らしであれば十分生活できる。
問題点は,申請時期がM2の春であること,採用決定時期がその秋であること,採用率が低いことだ。
申請時期が就活の時期ともろに被っていて,なおかつ採用通知も遅いので,「もしDC1に落ちたら就職する」という計画を立てることは難しい。
上述の通り,生活への不安が全く無くなるほど十分な額が貰えるので,裏を返せばDC1に受からなければ進学できないという経済状況の学生にとっては,一か八かのギャンブルになる。
自分は幸運にも採用されたので,親に頼ることもバイトすることもなく,研究だけに集中することができた。
今思い返しても,DC1に合格したことは20代で嬉しかったことのトップ10には入る。
就職と進学を天秤に掛けないような採用決定時期の制度設計になっているのかもしれないが,DCに採用されてもなお就職を選ぶ学生は極めて少数派だと思う。
自分の経験上,DCの採用率の低さは博士課程に進学することを大きく躊躇させるので,せめて採用決定時期をもう少し前倒しできれば良いと思う。
授業料免除・奨学金
大学・大学院では,経済状況の悪い学生に対する授業料免除の制度が必ずある。
もちろん大学にもよるが,一般家庭の学生であれば,博士課程で授業料の半額免除は認められる可能性が高い。
また,大学によっては独自の奨学金制度を設けており,授業料が実質的に無償化される場合もある。
認められる可能性が高かったり,実質無償化されたりするなら,いっそのこと全員を授業料免除にすれば良いのにと思うのは自分だけだろうか。
色々な制度を理解する時間を要したり,面倒な事務作業を強いるのは良くない。
はじめに書いたように博士進学には経済面の心理的ハードルが高いので,それを取り除くようなインパクトのある取り組みをするべきだと思う。
博士への進学率が低い地方大学なら尚更だ。
奨学金返済免除
お金に悩む博士学生の多くは,学部や修士時代にすでに貸与型の奨学金を借りているケースがほとんどだと思う。
自分も同じで,学部では300万円,大学院では200万円程度の奨学金を借りた。
貸与型の奨学金にも優秀な成績や業績によって返済免除の制度があるが,基準は結構厳しい。
平成15年までは,教育又は研究の職に係る返還免除と言うものがあったらしい。
教職や研究職に就いた場合に奨学金の返済義務が無くなる素晴らしいもので,研究職に就くことが多い博士課程への進学とすごく関係している。
博士課程に進学したら修士の奨学金は返済免除,とかすると少し乱暴な気もするが,博士への進学に絡めた何らかの免除制度ができれば良いのなぁと思う。
まとめ
今回は,自分の博士時代の経済状況を振り返り,こうだったらもっと良いのになぁと思うことを書いてみた。
既に色々な補助制度があるのは理解しているが,学生にとって少しでもわかりやすく簡単なものにすべきだ。
これは修士課程も同じだが,お金が無いので。。という理由で進学を候補に入れない学生が少しでも減ってくれたらと思う。
